うさぎの目から涙があふれていたら、それは体の不調を訴えるサインかもしれません。うさぎの場合、人間のように感情で涙があふれるというよりも、涙が目から見えるときは目や鼻涙管(びるいかん)の異常が関係していることがほとんどです。うさぎの涙はつねに分泌されていて、目の表面を潤して外部の刺激から守ったり、栄養分を届けたりする役割を担っています。通常であれば涙は鼻涙管を通って鼻へと流れていくため、目からあふれることはないのです。
つまり、うさぎの目から涙が見えている時点で、どこかにトラブルが起きている可能性が高いということ。放置してしまうと皮膚炎や脱毛など二次的なトラブルにつながることもあるため、原因を正しく理解して早めに対処することが大切です。この記事では、うさぎが涙を流す原因として考えられる病気、それぞれの症状や治療法、そして自宅でできるケアの方法まで幅広く紹介していきます。
うさぎの涙のしくみを知っておこう

うさぎの涙について理解を深めるために、まずは涙がどのように作られ、どのように排出されているのかを押さえておきましょう。
涙はどこで作られて、どこへ流れるのか
うさぎの涙は、目の上あたりにある涙腺で24時間休むことなく作られています。分泌された涙は目の表面を覆うように広がり、乾燥やほこりなどの刺激から目を保護したあと、まぶたにある小さな穴(涙点)から吸い込まれます。そこから涙小管、涙嚢(るいのう)、鼻涙管という経路をたどり、最終的に鼻腔へと流れていきます。
この一連の流れがスムーズに機能していれば、涙が目からあふれることは基本的にありません。しかし、この経路のどこかで詰まりや炎症が起きると、行き場を失った涙が目の外にあふれてしまうのです。
うさぎの涙が固まりやすい理由
ひとつ知っておきたいのは、うさぎの涙(涙液膜)には脂質の層が含まれており、分泌の状態や量によっては目の周りが汚れやすくなるという点です。うさぎはまばたきの回数が少ない動物でもあるため、あふれ出た涙が目の周りに長くとどまりやすい傾向があります。
涙が乾くと目の周りで白くカピカピに固まってしまうことがあり、被毛がゴワゴワになったり、固まった涙の下で皮膚が炎症を起こしたりすることもあります。こうしたトラブルを防ぐためにも、日頃からの観察とこまめなケアが求められます。
うさぎが涙を流す原因として考えられる5つの病気

うさぎの涙が止まらなくなる背景には、いくつかの病気が潜んでいることがあります。ここでは代表的な5つの疾患について、それぞれの特徴や症状を詳しく見ていきましょう。
①鼻涙管閉塞(びるいかんへいそく)
うさぎが涙を流す原因として代表的なのが、この鼻涙管閉塞です。鼻涙管とは、目と鼻をつないでいる細い管のこと。この管が何らかの原因でふさがったり狭くなったりすると、涙が鼻へと流れなくなり、目からあふれてしまいます。
鼻涙管閉塞を引き起こす原因として特に多いのが、不正咬合(ふせいこうごう)による歯のトラブルです。うさぎの歯は一生伸び続ける「常生歯」で、上下の歯がきちんと噛み合うことで自然に削れて適切な長さが保たれています。しかし、噛み合わせが悪くなると歯が正しく削れず、特に上の奥歯の歯根が伸びて鼻涙管を物理的に圧迫してしまうことがあるのです。鼻涙管と上顎の臼歯は解剖学的にとても近い位置にあるため、歯の問題が涙のトラブルに直結しやすいという、うさぎならではの特徴があります。
そのほかにも、パスツレラ菌やブドウ球菌などの細菌感染によって鼻涙管の内部が炎症を起こし、膿や分泌物が詰まってしまうケースもあります。また、生まれつき鼻涙管が細いうさぎもいて、そうした子はゴミや分泌物が詰まりやすい傾向があります。
鼻涙管閉塞の主な症状としては、常に涙が目からあふれ出る「流涙」の状態が続くことが挙げられます。目頭のあたりが湿って汚れやすくなり、涙やけと呼ばれる状態になることも少なくありません。涙があふれるだけの段階では痛みが分かりにくいこともありますが、角膜の傷や感染症が併発していると、目を細めたりこすったりといった痛みや不快感を示す仕草が見られることもあります。
②涙嚢炎(るいのうえん)
涙嚢とは、涙を一時的にためておく袋状の組織で、目頭のやや鼻寄りに位置しています。この涙嚢に細菌が入り込んで炎症を起こす病気が涙嚢炎です。鼻涙管閉塞が進行して涙嚢に涙が過剰にたまることで、二次的に細菌感染を起こして発症するケースが多く見られます。
涙嚢炎になると、目頭のあたりがボコッと腫れて膨らむのが特徴的な症状です。白色や黄色っぽい、膿のようにドロッとした目やにが目頭に付着し、炎症が強い場合には痛みをともなうこともあります。涙嚢炎は治療が長期にわたることが多く、鼻涙管閉塞の治療と並行して進めていく必要があります。
③結膜炎
結膜とは、まぶたの内側から眼球の表面をつないでいる薄い膜のこと。この結膜に炎症が起きた状態が結膜炎で、うさぎでも比較的よく見られる目の病気です。
結膜炎の症状は、白目の充血、涙の増加、目やになどです。目やにの出方はさまざまで、白色や黄色のドロッとしたものもあれば、透明でサラサラしたものもあります。かゆみや違和感を覚えたうさぎが前足で目をこすることも多く、前足がゴワゴワに汚れていたら結膜炎のサインかもしれません。
結膜炎の原因としては、細菌やウイルスの感染、ほこりなどの異物、アレルギー反応などが考えられます。また、不正咬合による鼻涙管の圧迫がきっかけとなって涙があふれ、その刺激で目をこすることで結膜炎を引き起こすケースもあります。さらに、斜頸(しゃけい)のあるうさぎでは、傾いている側の目を床にぶつけてしまうことが原因になることもあります。
④角膜炎・角膜潰瘍(かくまくかいよう)
角膜は目の表面を覆っている透明な膜で、外界からの光を通す窓のような役割を果たしています。この角膜が傷ついたり炎症を起こしたりした状態が角膜炎で、さらに悪化して角膜の組織が深くえぐれてしまった状態が角膜潰瘍です。
うさぎの目は顔から少し出っ張っているため、ケージ内の突起物や牧草の先端などで角膜を傷つけやすい構造になっています。牧草に顔をうずめて食べるうさぎでは、牧草の先が目に刺さってしまうこともあり、また、爪が伸びた状態で毛づくろいをした際に自分で目を引っかいてしまうこともあります。
角膜が傷つくと、涙の量が増えるほか、まぶしそうに目を細めたり、頻繁にまばたきをしたりする仕草が見られます。黄色や緑色の目やにが出ている場合は感染症を併発している可能性が高いので、早めの受診が望ましいでしょう。角膜潰瘍まで進行すると、目の表面が白く濁ったり(角膜混濁)、最悪の場合は角膜に穴が開いて失明につながる角膜穿孔(かくまくせんこう)を起こす危険性もあります。
⑤眼窩膿瘍(がんかのうよう)
目の後ろ側にあるくぼんだ空間(眼窩)に膿がたまってしまう状態を眼窩膿瘍といいます。歯のトラブルが原因となることが多く、歯根の感染が眼窩に波及することで発症します。
眼窩膿瘍になると、たまった膿によって眼球が前方に押し出されるように突出してきます。流涙や目やにが見られるほか、まばたきがしにくくなることでドライアイを引き起こすこともあります。症状が進行すると食欲が低下し、元気がなくなっていくことも。膿を外に排出しない限り改善が見込めないため、獣医師による適切な処置が必要です。
うさぎの骨はなぜ折れやすい?骨格の仕組みから骨折予防・対処法まで解説
涙の色や状態から読み取れること

うさぎの涙や目やにの見た目は、原因を推測する手がかりになります。涙の特徴をよく観察しておくと、動物病院を受診した際にも獣医師に伝えやすくなります。
透明でサラサラした涙
涙が無色透明でサラサラしている場合は、鼻涙管閉塞の初期段階であることが多いです。細菌感染を併発していない段階で、涙がただあふれ出ている状態と考えられます。ただし透明な涙であっても、長期間放置すると涙やけや皮膚炎に発展するため、早めの対応が求められます。
ベタベタして白く固まる涙
うさぎの涙は脂質を含んでいるため、乾燥するとベタベタした質感になり、さらに固まると白くカピカピの状態になります。この状態が目の周りに蓄積していくと、被毛がゴワゴワになって見た目も悪くなりますし、固まった涙を無理に剥がそうとすると毛が抜けたり皮膚を傷つけたりする原因にもなります。
黄色〜緑色のドロッとした目やに
目やにが黄色や緑色で粘り気がある場合は、細菌感染を起こしている可能性が高いサインです。涙嚢炎や感染性の結膜炎、角膜の感染症などが疑われます。このような状態が見られたら、できるだけ早く動物病院を受診してください。悪臭をともなう場合は、涙嚢炎がかなり進行していることも考えられます。
自宅でできる涙のケア方法

動物病院での治療と併せて、自宅でのこまめなケアも大切な役割を果たします。涙が流れている状態を放置すると皮膚トラブルにつながるため、日頃から丁寧にケアしてあげましょう。
涙の拭き取り方
涙のケアには、清潔なコットンやガーゼと、うさぎ用の涙ケアローションまたはぬるま湯を使用します。うさぎの涙は乾くとベタついて固まりやすいため、乾いた状態でいきなり拭き取ろうとしてもきれいに落ちません。まずは涙が流れたあたりをローションやぬるま湯でしっかり湿らせて、固まった涙をやわらかくほぐしてから、やさしく拭き取るのがコツです。
特に注意したいのは、固まった涙を無理に剥がさないことです。こびりついた涙を力任せに引っ張ると毛ごと抜けてしまい、皮膚が傷ついて細菌感染を起こす原因になりかねません。目の周りの皮膚は薄くてデリケートなので、とにかく「やさしく、ゆっくり」を心がけてください。
もしうさぎが涙を拭かれるのを極端に嫌がる場合は、無理強いしないことも大切です。強いストレスはうさぎの体調を悪化させる要因にもなるため、嫌がるときは少し時間をおいて再チャレンジするなど、うさぎのペースに合わせた対応を心がけましょう。
拭き取り後の皮膚ケア
涙を拭き取ったあとは、目の周りの被毛と皮膚をできるだけ乾いた状態に保つことが大切です。湿ったままにしておくと、皮膚がふやけてジュクジュクとした湿性皮膚炎を引き起こしやすくなります。拭き取り後は乾いたコットンやティッシュで軽く水分を取り、自然に乾燥させてあげましょう。
目の周りの毛が長くて涙で汚れやすい場合は、獣医師に相談のうえで目の周りの被毛を少し短くカットしてもらうのもひとつの方法です。
なお、涙や目やにが気になるからといって、人間用の目薬や市販の抗菌薬を自己判断で使うのは避けてください。うさぎの目の状態に合わない薬を使ってしまうと、角膜潰瘍が悪化したり、治癒が遅れたりすることがあります。目の症状に気づいたら、まず動物病院で原因を確認してもらったうえで、処方された薬を使うのが基本です。
うさぎの目はどこまで見える?視野・視力から目の病気のサインまで解説
涙のトラブルを予防するために日頃からできること

うさぎの涙のトラブルを完全に防ぐことは難しいものの、日々の飼育の中でリスクを減らすための工夫はいくつかあります。
牧草をしっかり食べさせる
うさぎの涙のトラブルの多くが歯の問題と関連していることを考えると、歯の健康を保つことが涙の予防にも直結します。うさぎの歯は上下が噛み合うことで自然に削られるため、硬くて繊維質の多いチモシーなどの牧草を主食としてたっぷり与えることが歯の健康管理の基本です。
牧草をしっかり噛んで食べることで歯が適切に摩耗し、不正咬合のリスクを下げることができます。ペレットやおやつに偏った食生活は歯のすり減りが不十分になりやすいため、食事の大部分を牧草が占めるように意識しましょう。うさぎの年齢や体格、健康状態によって適切なバランスは異なるため、かかりつけの獣医師に相談しながら調整するのが安心です。
飼育環境を清潔に保つ
ケージ内にほこりやゴミがたまっていると、目に異物が入って炎症を起こすきっかけになります。トイレや床材はこまめに交換し、ケージ全体を定期的に清掃して清潔な環境を維持することを心がけましょう。
また、牧草を食べる際に目に刺さることがあるため、牧草入れの位置や形状にも気を配りたいところです。うさぎが顔を深くうずめなくても食べられるような工夫があると安心です。
ケージ内の安全を確認する
角膜を傷つける原因になりそうな鋭利な突起物や金属部分がケージ内にないか、定期的にチェックしましょう。ケージの金網の接合部分や、給水ボトルの取り付け部分なども意外と見落としがちなポイントです。
爪を適切な長さに保つ
爪が伸びすぎた状態で毛づくろいをすると、自分の目を引っかいてしまう危険があります。定期的な爪切りを習慣にして、角膜を傷つけるリスクを減らしましょう。
定期的な健康チェックを受ける
涙のトラブルは初期段階では症状が軽微で、飼い主さんが気づかないほど少量の涙しか出ていないこともあります。定期的に動物病院で健康診断を受けることで、目のトラブルや歯の異常を早期に発見できる可能性が高まります。特にうさぎの診療に慣れた獣医師のもとで、口腔内のチェックを含めた総合的な健診を受けるのがおすすめです。
まとめ
うさぎが涙を流しているとき、その背景には鼻涙管閉塞や結膜炎、角膜炎、涙嚢炎、眼窩膿瘍といったさまざまな病気が潜んでいる可能性があります。なかでも代表的な原因である鼻涙管閉塞では、不正咬合など歯のトラブルが関わっていることも珍しくありません。
うさぎの涙は乾くと固まりやすく、放置すると目の周りで皮膚炎や脱毛を引き起こす原因になります。涙に気づいたら、まずは動物病院で原因を特定してもらい、自宅ではやさしく涙を拭き取って皮膚を清潔に保つケアを続けましょう。
日頃の予防としては、牧草中心の食生活で歯の健康を維持すること、ケージ内を清潔で安全な状態に保つこと、そして定期的な健康診断で早期発見につなげることが効果的です。うさぎのつぶらな瞳を守るために、ちょっとした変化にも気を配りながら、健やかな毎日をサポートしてあげてください。