うさぎの骨は、実は私たちが思っている以上にデリケートです。「抱っこしたら暴れて骨が折れてしまった」「ケージの中で知らないうちに骨折していた」——こうした話は、うさぎを飼っている方の間では決して珍しくありません。うさぎの骨が折れやすい背景には、野生で天敵から逃げるために進化してきた体の構造が深く関わっています。
この記事では、うさぎの骨の特徴から骨折の原因・症状・治療法、そして日々の生活の中でできる予防策まで、飼い主さんが知っておきたいことをまとめてお伝えします。

うさぎの骨は、実は私たちが思っている以上にデリケートです。「抱っこしたら暴れて骨が折れてしまった」「ケージの中で知らないうちに骨折していた」——こうした話は、うさぎを飼っている方の間では決して珍しくありません。うさぎの骨が折れやすい背景には、野生で天敵から逃げるために進化してきた体の構造が深く関わっています。
この記事では、うさぎの骨の特徴から骨折の原因・症状・治療法、そして日々の生活の中でできる予防策まで、飼い主さんが知っておきたいことをまとめてお伝えします。


うさぎと暮らしていると、ふわふわの毛に包まれたやわらかい体に癒される方が多いでしょう。しかし、その見た目のかわいらしさとは裏腹に、うさぎの骨格には知っておくべき大きな特徴があります。結論からお伝えすると、うさぎの骨は体重のわずか7〜8%ほどしかありません。猫が12〜13%、犬が約14%、人間が約15%前後であることを考えると、うさぎの骨がいかに軽いかが分かります。
この数字は、実は空を飛ぶ鳥とほぼ同じ水準です。鳥が空中を移動するために骨を軽くしているのは直感的に理解できますが、地上で暮らすうさぎがなぜここまで骨を軽くする必要があったのでしょうか。
その答えは、うさぎが「捕食される側」の動物であるという点にあります。野生のうさぎは、キツネや猛禽類といった天敵に見つかったとき、素早く走って逃げることが唯一の生存手段でした。骨を極限まで軽くすることで瞬発力を高め、一瞬のうちに数メートルを跳躍できる体を手に入れたのです。全身の骨が徹底して軽量化されていることが、うさぎの体づくりの大きな特徴といえます。
骨が軽い一方で、うさぎは後肢に体重の多くがかかる体の構造をしており、後ろ足の筋肉はとくによく発達しています。地面を蹴って瞬時に加速するパワーを生み出す強靭な後肢を持っていますが、ここに深刻な矛盾があります。強力な筋肉の力に、骨が耐えきれないことがあるのです。
実際、うさぎが自分自身のキック力で脊椎を骨折してしまうケースは珍しくありません。とくに第7腰椎の付近は負荷がかかりやすく、動物病院でのレントゲン撮影や採血の際にも、獣医師は常に骨折リスクに気を配らなければなりません。強い脚力を持ちながら、それを支える骨が脆いという、ある意味で「進化のジレンマ」を抱えた動物がうさぎなのです。

うさぎの骨の脆さを理解するためには、骨格の構造をもう少し詳しく知っておくと役立ちます。
うさぎの脊椎は、背中から腰にかけて多くの椎骨が連なっており、個体によって数にバラつきがあります。人間の背骨がS字カーブを描いているのに対して、うさぎの背骨はC字型に湾曲しています。このC字カーブは走行時にバネのような役割を果たしますが、逆にまっすぐ引き伸ばすような力には弱いのが特徴です。不適切な保定や、驚いたうさぎが強く蹴る・ひねるといった動きが加わると、脊椎骨折(とくに腰椎付近)につながることがあります。
うさぎの前足は穴を掘るのに適した構造になっていて、前後に素早く動くことができます。前足の指は5本、後ろ足の指は4本あり、犬や猫とは異なり肉球がありません。足裏はやや厚めの毛で覆われているだけなので、硬い床の上で長時間過ごすとソアホック(足裏の皮膚炎)を起こすリスクもあります。
前腕の骨も特徴的で、尺骨は大きく湾曲して扁平になっており、橈骨も同様に扁平化しています。このため骨折した際に、犬や猫で使われる髄内ピンの挿入が難しいことがあり、治療の選択肢が限られてしまう場合があります。

うさぎの骨が脆いことは分かりましたが、実際にどのような場面で骨折が起きやすいのかを把握しておくことが、予防につながります。
うさぎの骨折で最も多いパターンのひとつが、抱っこ中に嫌がって暴れたときの落下です。うさぎは高いところから飛び降りるのが得意ではなく、落ち方次第ではごく低い高さからでも骨折につながる可能性があります。座った状態から落ちても危険性はゼロではないため、抱っこ中にうさぎが嫌がるそぶりを見せたら、いったんやめて様子を見ることが大切です。
ケージの中は安全そうに見えますが、意外な事故が潜んでいます。物音に驚いて飛び跳ねた際にケージの壁に衝突したり、すのこの隙間に足を引っかけてしまったりするケースです。とくに夜間は飼い主さんが気づきにくく、朝になって「なんだか動きがおかしい」と感じて初めて骨折が判明するというパターンも少なくありません。
ケージ内にロフト(二階建て構造)を設置している場合は、そこから降りた際に足を引っかけて骨折する事故も報告されています。若いうちは問題なくても、年齢を重ねてから事故が起きることもあるため、うさぎの年齢や体力に合わせてケージのレイアウトを見直す視点が欠かせません。
うさぎを部屋に出して自由に遊ばせる「へやんぽ」は、運動不足の解消やストレス発散に欠かせない時間です。しかし、このときにも骨折リスクは存在します。うさぎは音もなく飼い主さんの足元に近づいてくることがあり、うっかり踏んでしまったり、ドアに挟んでしまったりする事故が実際に起きています。
また、フローリングのような滑りやすい床では、うさぎの足裏がグリップを効かせられずに転倒し、骨を傷めてしまうこともあります。
爪切りやブラッシングの際にうさぎが嫌がって暴れると、その勢いで骨が折れてしまうことがあります。とくに仰向けにして背骨に負担がかかった状態で暴れると、脊椎骨折のリスクが高まります。お手入れ中にうさぎが激しく抵抗するようであれば、無理をせずにいったん中断し、落ち着いてから再開するか、うさぎ専門店や動物病院でプロにお願いするのも選択肢のひとつです。

うさぎは被捕食動物としての本能から、痛みを隠す傾向があります。そのため、骨折しても飼い主さんがすぐに気づけないケースがあり、発見が遅れてしまうことも珍しくありません。
足の骨を骨折すると、その足をかばって浮かせていたり、いつもとは明らかに違う歩き方をしたりします。特定の足を地面につけようとしない場合は、骨折の可能性を疑うべきでしょう。また、痛みがひどいときはじっとして動かなくなり、食欲も落ちてしまいます。
ただし、指先などの小さな骨折では外見上の変化が分かりにくいこともあります。「なんとなく動きが少ない」「いつもより元気がない」といった微妙な変化も、見逃さないように日頃からよく観察しておくことが大切です。
脊椎(背骨)の骨折は、四肢の骨折よりもはるかに深刻な結果をもたらすことがあります。脊椎の中を通る脊髄が損傷すると、後ろ足の麻痺が起き、排尿や排便のコントロールができなくなる場合があります。後ろ足を引きずっている、下半身がだらんとしている、おしっこを漏らしているといった症状が見られたら、一刻も早く動物病院を受診してください。
「骨折かもしれないけど、様子を見よう」という判断は避けたほうが安全です。骨折は自宅で判断できるものではなく、レントゲン検査やCT検査によって初めて正確な診断が可能になります。普段と違う動きや様子に気づいたら、まずかかりつけの動物病院に連絡することが、うさぎの体を守る最善の行動です。

うさぎの骨折は、日常のちょっとした工夫で防げるケースが多くあります。骨折してしまってからでは遅いので、普段の生活環境を見直してみましょう。
抱っこをする際は、必ず座った状態で行いましょう。高い位置から落下すると骨折のリスクが跳ね上がります。うさぎが嫌がって暴れ始めたら、無理に抱き続けるのではなく、いったん体を安全に下ろしてあげてください。下ろすときは必ず後ろ足を床につけてから手を離すのが基本です。
ケージ内にロフトやステップなどの高さのある構造物を設置している場合は、うさぎの年齢や運動能力に合っているか定期的に確認しましょう。すのこの隙間に足が挟まらないか、柵と柵の間にリスクはないかもチェックポイントです。床面はうさぎの足裏に負担が少なく、なおかつ滑りにくい素材を選ぶことが理想です。
部屋で自由に遊ばせるときは、できるだけうさぎから目を離さないようにしましょう。とくにドアの開閉時や椅子から立ち上がるときは、足元にうさぎがいないか確認してください。フローリングの滑り止めとして、カーペットやジョイントマットを敷いておくのも効果的です。コード類やせまい隙間など、うさぎが挟まりそうな場所にも事前に対策を施しておきましょう。
爪が伸びたままだとカーペットや布に引っかかりやすくなり、パニックを起こして骨折するリスクが高まります。月に1回程度の頻度で爪切りを行い、爪を適切な長さに保つことが予防につながります。自宅での爪切りが難しい場合は、動物病院やうさぎ専門店にお願いしてもかまいません。
ケージの中だけで過ごしていると筋力が低下し、かえって骨折しやすくなります。1日に1時間程度はケージの外に出して、安全な空間で体を動かす時間を確保してあげましょう。適度な運動は骨への適切な刺激にもなり、骨の健康維持に役立ちます。

骨の健康を考えると「カルシウムをたくさん摂れば丈夫になるのでは?」と思う方もいるかもしれません。しかし、うさぎの場合はそう単純ではありません。うさぎには他の哺乳類とは大きく異なるカルシウム代謝の仕組みがあるため、むしろカルシウムの摂りすぎに注意が必要です。
多くの哺乳類は、余分なカルシウムを腸で吸収せずに便として排泄します。ところがうさぎは、食べたカルシウムのほとんどを腸管から吸収し、余った分を腎臓を通じて尿として排泄するという特殊な代謝経路を持っています。カルシウムの尿中排泄率は、多くの哺乳類が2%以下なのに対し、うさぎでは45〜60%にもなります。
うさぎのおしっこが白く濁っていたり、トイレにざらざらした砂状の汚れがこびりついたりするのは、このカルシウム代謝の特徴が原因です。
カルシウムの摂取量が多すぎると、尿中のカルシウム濃度がさらに上がり、高カルシウム尿症や尿路結石を引き起こすリスクが高まります。膀胱内にカルシウムが泥のように溜まってしまったり、結石が尿道を塞いで排尿困難になったりすると、命に関わる事態にも発展しかねません。
とくに注意したいのが、成長期を過ぎたうさぎにアルファルファ牧草を主食として与え続けることです。アルファルファはチモシーに比べてカルシウム含有量が2〜3倍と高く、大人のうさぎが長期間食べ続けると過剰摂取につながりやすくなります。
では、うさぎの骨を丈夫に保つためにはどうすれば良いのでしょうか。答えは「適量のカルシウムを含むバランスの良い食事」にあります。
成うさぎの主食は、一番刈りのチモシー牧草を中心にして、ペレットは適量にとどめましょう。野菜は水分補給にもなる有効な食材ですが、小松菜やチンゲン菜などカルシウムの多い野菜ばかりに偏らないよう、種類をローテーションするのがおすすめです。
また、水分を十分に摂取することもカルシウムの排出をスムーズにするために欠かせません。給水ボトルの水をあまり飲まない子であれば、お皿タイプの給水器に変えてみたり、葉物野菜で水分を補助したりと、飲水量を増やす工夫を取り入れてみてください。

うさぎも年齢を重ねるにつれて、若いころとは体の状態が変化していきます。骨に関しても例外ではなく、高齢になるほど骨折のリスクは高まり、回復にも時間がかかるようになります。
若いうさぎの骨にはバネのような柔軟性があり、多少の衝撃なら「しなる」ことで完全骨折を避けられることがあります。しかし、年齢とともにこの柔軟性は失われ、ちょっとした衝撃でもポキッと折れてしまいやすくなります。高齢うさぎは運動量も減るため筋力が低下し、転倒や着地の失敗が起こりやすくなるという悪循環にも陥りやすいのです。
シニア期に入ったうさぎには、段差を最小限にした「バリアフリー」な環境を整えてあげましょう。ケージ内のロフトは撤去するか、スロープをつけて負担を軽減する方法もあります。トイレの縁が高すぎてまたぎづらそうにしていないかも、日常的に確認してあげてください。
また、高齢になると自分でのグルーミングが行き届かなくなることがあります。毛並みが乱れていたり、お尻まわりが汚れやすくなったりした場合は、飼い主さんが優しくお手入れをサポートしてあげることも大切な骨折予防の一環です。汚れが気になってうさぎが無理な姿勢をとり、それが骨折につながるケースもあるためです。
うさぎの骨は体重のわずか7〜8%と、哺乳類の中でも際立って軽く、折れやすい構造を持っています。これは天敵から素早く逃げるために進化した結果ですが、家庭で暮らすうさぎにとっては骨折リスクという形で影響を及ぼします。
骨折を防ぐためには、抱っこの仕方やケージ内の安全対策、へやんぽ中の見守り、定期的な爪切りといった日常のケアが欠かせません。また、うさぎ独特のカルシウム代謝を理解した上で、チモシー主体のバランスの良い食事と十分な水分摂取を心がけることも、骨と体全体の健康を守る基盤になります。
うさぎは痛みを隠す傾向がある動物なので、日頃からよく観察して、歩き方や動き、食欲に少しでも違和感があれば早めに動物病院を受診することを心がけてください。飼い主さんの「いつもとちょっと違うかも」という気づきが、大切なうさぎの体を守る第一歩になります。



