北は北海道、南は奄美大島まで、全国からデグーファンが集まる人気ショップ「フィールドガーデン」。その中心にいるのが、デグーの魅力と可能性を誰よりも信じる茂木店長です。「ただのペットショップ」の枠を超え、年に一度の大イベント「DEGUBIKI(デグ引き)」を主催し、なんと500人以上ものデグー愛好家が集う場を創り出しています。
「赤字でもいいから」と始めたイベントは今や伝説級の人気ぶり。そんな“デグー愛”あふれる茂木店長に、デグーの驚きの知能や、親子の絆を大切にした独自の育て方などをたっぷりと語ってもらいました!
全国に散らばっている“デグー好き”を一か所に集めたかった

ーー茂木さんは最初からデグーに注目されていたんですか?
そうなんです。色々あってデグーを取り扱うことになった時からずっと「この生き物にはすごい可能性があるな」と感じて。それでうちでも長年デグーを扱ってきました。でも当時は本当に、ひっそりと売られている存在で、前面に押し出しているお店なんて見たことがなかったんです。
ーー今は全国からお客さんが来られているそうですね。
はい、毎日のように全国からお客さんが来てくださって、本当にありがたいです。 一番北だと北海道、南は沖縄……奄美大島からいらっしゃった方もいましたよ。

ーーイベント「DEGUBIKI(デグ引き)」も話題ですね。
※デグ引きとは…フィールドガーデンにて行われている、デグー好きのデグー好きによるデグーのためのイベント。くじを引き、デグーにまつわるグッズやアイテムが当たるイベントなのですが景品がとても豪華な神イベント。
あれは最初、1回きりのつもりで始めたんです。 「普段の感謝を込めて、赤字でもいいから1回やってみよう」と。 でも、帰り際に「来年も楽しみにしてます!」って言われちゃって……(笑)。
それでも最初の年はある程度の赤字で済んだんですけど、年々規模が大きくなって、最近では結構な額の赤字になることもあります。 正直、売れれば売れるほど赤字になるイベントなんですが(笑)、それでもたくさんの方に来ていただけるので、やめられなくなってるんです。
ーーそこまでして続ける理由は?
デグーって、全国にファンはいるけど、そんなに大きな業界ではないんですよね。 だからこそ、全国に散らばっている“デグー好き”を一か所に集めたかったんです。情報交換の場になったり、輪が広がるきっかけになったりして、デグーの未来にとってプラスになれば嬉しいです。 “デグー好きが一堂に会する場”を作ることが、自分のやりたかったことのひとつなんです。

ーーどれくらいの方が集まるんですか?
ちゃんと数えてないんですが、少なく見積もっても500人は来ていると思います。 実際はもっと多いでしょうね。くじが引けないと分かって帰っちゃう方もいるんですが、できればそこも含めて、もっと情報交換の場にできたらなと。
だから、ただくじを引くだけじゃなく、何かしら「とどまれる理由」も用意していかなきゃいけないなと考えてます。 その赤字が将来に繋がれば、それでいいんです。
「デグーの魅力を知ったら、他の小動物には戻れない」

ーーデグーは賢いといいますが、茂木さんから見てどう感じますか?
ちゃんと教えれば、いろんなことができますし、犬と同じで、しつけも可能です。うさぎやモルモットだとここまでのことは難しいですが、デグーは本当に賢い。
ーーたとえば、どんなことができるんですか?
たとえば“マトリョーシカ”のような入れ子の作業。小さなものから大きなものへ順番に入れていく、あれができるんですよ。 あと小さな引き出し付きのタンスを用意して、餌を特定の段に入れておくと、そこだけ開けるようになったり。ボール投げを覚えることもできます。犬のように持ってきてくれたりするんです。


ーーそんなことまでできるんですね!
これがそれこそ「ハウス!」って声をかければ、ちゃんとお家に戻ってくれますよ。もちろん、飼い主さんがどれだけ向き合って教えるかで変わってくるんですけどね。こうしたデグーの魅力を知ってしまったら、もう他の小動物には戻れないかもしれませんよ。
デグーが親と一緒に過ごす時間の大切さ
ーーデグーの育て方や、売り方についてもこだわりがあるとそうですね。
そうですね。例えばペットショップでデグーを販売しているお店でよくあるのが、まだ離乳してないのに1ヶ月未満で親から離されてしまう子。 そういう子って、ちゃんと“甘噛み”ができないことが多いんですよ。

ーー親と一緒に過ごす時間も大切ということですか?
やっぱり、親からある程度の“教育”を受けて育った子じゃないと、ちゃんと社会性が育たないんです。本来すごく人馴れするはずのデグーでも、そういう時期をすっ飛ばしてしまうと、本気で噛んでくるような子になってしまうこともあります。 だから、親と一緒にいる時間は本当に大切なのだと感じています。
ーー全国のブリーダーさんにも届いてほしい考え方ですね。
もちろん、僕の考えを押し付けるつもりはないですし、うちのお店の方針であるだけです。小さい頃の 「このサイズで売ったら売れるだろうな」と思うことは正直ありますよ。でも、その後にその子がちゃんと生きていけるかどうかが大事なんです。しかも、必ずしも“いい人”にもらわれるとも限りませんから。
「アイペット損保」という保険会社があるんですが、そこが出しているデグー保険ができて、もう6年目になります。その代理店をうちが初めてやらせてもらったんですけど、おかげさまで現在、年間保険獲得ランキングで日本一を5連覇中なんです。今年も1位を取れたら6連覇になります。


ーーすごい実績ですね。
これだけ多くの方が保険に入ってくれるようになった、というのは本当に大きな変化です。保険に入る=「病院に連れて行きますよ」という意思表示だと思うんです。もちろん、経済的に余裕がある方で「30万円ならすぐ払えるよ」という人もいますから、保険が絶対ではありません。
ーー入院を伴う病気になってしまうと、結構な金額がかかりますよね。
そもそも昔は小動物が病気になったら“買い替える”という時代だったんです。今は、ちゃんと病院に連れて行く人が増えたし、特にデグーは人に懐くから、みんな“我が子”のように接してくれる。だから、保険加入者が増えているのは、本当に喜ばしいことです。
たとえばハムスターで保険に入る人は少ないんですけど、入る人は本当にその子のことを大事にしてくれる人。だから、売る側としても「この子は幸せになれるな」って安心して送り出せます。

茂木さんが365日お店に立ち続ける理由とは?
ーー365日お店に立ち続けているそうですね。
ええ。労働基準法には引っかかっちゃうかもしれませんけど(笑)、自分は経営者ですし、飲食店の店主とかでも「10年休んでません」っていう人いますよね。うちもまさにそんな感じで、何もない限り基本365日出勤しています。
今日は午後5時からでしたが、朝は家にいる動物たちの世話をしていて、昼間は仕入れなどで飛び回っています。それから店に来て、夜はまた自宅で動物たちの夜の世話があるので、休む暇はほとんどありません。

ーー町田のこのお店が中心になった理由は?
以前は多店舗展開していて、最大で5店舗ありました。遠いところだと群馬にもあって、カインズ以外にもイオンモールの中に出店していたこともありました。でも、東日本大震災で店舗が被災してしまって、ここ一店舗から再スタートすることになったんです。
そこで改めて思ったのは、「自分が納得できるお店」をつくるには、やっぱり一店舗しか持てないということ。たとえばデグーが100匹いたとして、5店舗に分けたら1店舗あたり20匹。でも100匹がいる店って、それだけで特別ですよね。20匹じゃ普通のお店と変わらない。それでは“特別な店”じゃなくなっちゃうんですよ。
それに、北海道から沖縄までお客さんが来てくれるなら、店舗を増やさなくてもいいなと気づいたんです。1店舗で真剣に向き合って、しっかり目を行き届かせていくことのほうが大事だなって。

ーー動物への向き合い方の熱量に驚かされます。
うちの店では、動物が滅多に死なないんです。でも、アルバイトを中心に適当に運営しているようなお店だと、どうしても死んでしまうことがあるんです。動物って、人間がちゃんと見てないと命に関わることがあるんです。たとえば鳥のように“食い溜め”ができない生き物は、1日エサを入れ忘れただけで死ぬことだってある。もしスタッフがちょっとぼーっとして忘れてしまったら、それでもう命が終わってしまう。
でも、誰かがチェックしていれば、その子の命は助かるかもしれない。だからこそ、自分が常に現場にいて見守ることが、いちばん大事だと思っているんです。
そんな茂木さんから見て、デグーのさらなる魅力について詳しく聞きました。そしてフィールドガーデンで人気の「デグ飯」についての話も!詳しくは5月24日発売『Minimaマガジン』“珍”な仲間たち特集号にてご覧ください。
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