モルモットが突然その場で弾むように跳ね上がる動作を「ポップコーンジャンプ」と呼びます。フライパンの上ではじけるポップコーンのように、体をひねりながらピョンと飛び跳ねるその姿は、モルモットが喜びや興奮を感じているサインです。初めて目にすると「発作では?」「どこか痛いの?」と驚く飼い主も多いのですが、基本的には健康でごきげんな状態を示す行動なので安心してください。
この記事では、ポップコーンジャンプが起きる理由、見られやすいシチュエーション、ジャンプが起きやすい環境のつくり方、そして病的なけいれんとの見分け方までを順を追って解説します。
ポップコーンジャンプとはどんな動き?

ポップコーンジャンプは、モルモットが四肢で地面を蹴って垂直方向に跳ね上がる行動の通称です。英語圏では「popcorning」と呼ばれ、モルモット飼育者の間で広く知られています。跳躍の高さは個体や状況によって差がありますが、目安として数cm〜十数cm程度飛び上がり、空中で体を左右にひねったり、頭を振ったりする動作をともないます。
この動きが「ポップコーン」にたとえられるのは、加熱されたトウモロコシの粒がフライパンの中で不規則に弾ける様子に似ているからです。1回だけピョンと跳ぶ場合もあれば、2〜3回連続してポンポンと弾むように繰り返す場合もあります。着地のあとにそのまま走り出すこともあり、ケージの中を猛ダッシュしてからもう一度ジャンプする、という一連の流れが見られることも珍しくありません。
ポップコーンジャンプはモルモット特有の行動として語られがちですが、実はウサギにも似た動きがあり、そちらは「ビンキー(binky)」と呼ばれます。ただし、ウサギのビンキーが走りながら空中で体をひねるのに対し、モルモットのポップコーンジャンプはその場で垂直に弾む傾向があるのが特徴です。体が小さく足が短いモルモットがコロンとした体型のまま跳ねる姿は、ウサギのビンキーとはまた違った愛嬌があります。
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モルモットがポップコーンジャンプをする理由

ポップコーンジャンプの根本にあるのは、喜びや興奮といったポジティブな感情の爆発です。モルモットは感情表現が豊かな動物で、鳴き声や体の動き、毛の逆立ちなど複数の手段で気持ちを外に出します。ポップコーンジャンプは、その中でも「うれしくてたまらない」「テンションが上がった」というときに現れる代表的なボディランゲージです。
嬉しさ・ワクワク感の表現
もっとも多い原因は、好物のフードや新鮮な牧草が目の前に出てきた瞬間の喜びです。冷蔵庫を開ける音やビニール袋のガサガサという音を聞いただけで、「ごはんが来る」と学習したモルモットがケージの中でポップコーンジャンプを始めることがあります。
また、ケージから出して部屋んぽ(室内での自由散歩)をさせたときにもジャンプが起きやすくなります。広い空間に出た解放感と、普段と違う刺激に対する好奇心が重なって興奮状態になるためです。ケージ内で過ごす時間が長かった日ほど、部屋んぽ開始直後のジャンプ回数が増える傾向があります。
若さとエネルギーの発散
ポップコーンジャンプは生後数週間の幼体(ベビー)から若いモルモットに多く見られます。生後2〜3か月の子モルモットは体力が有り余っているため、特別な理由がなくても突然跳ね始めることがあります。人間の子どもが意味もなく走り回るのと似た感覚で、体を動かすこと自体が楽しいという状態です。
成長するにつれてポップコーンジャンプの頻度は減っていく傾向がありますが、2〜3歳を超えた成体でもごはんの時間や部屋んぽの直後にジャンプする個体は少なくありません。年齢を重ねてもジャンプが見られるのは、その子が日常的に快適な環境で過ごしているサインの1つといえます。ただし、ジャンプをしない個体が不快な環境にいるとは限らないため、鳴き声や食欲、飼い主への反応など他の行動もあわせて判断してください。シニア期(5歳以降)に入ると関節への負担もあり、跳躍の高さや回数は自然と落ち着いていきます。
仲間とのコミュニケーション
モルモットは群れで暮らす社会性の高い動物です。同居しているモルモットの1匹がポップコーンジャンプを始めると、つられてもう1匹も跳ね始めるという光景がしばしば見られます。これは「社会的促進」と呼ばれる現象で、仲間の興奮が伝染している状態です。2匹以上で飼育していると、ごはんの準備中にケージの中で連鎖的にジャンプが起こることがあります。
ポップコーンジャンプが見られやすい場面

ポップコーンジャンプは時間帯を問わず起こり得ますが、飼育下では特定のシチュエーションで発生しやすい傾向があります。なお、モルモットは薄明薄暮性寄りの活動リズムを持ち、朝夕に活発になりやすい動物です。ここでは飼い主が日常的に遭遇しやすい代表的な場面を紹介します。
フードや野菜を与えるタイミング
朝と夕方のペレット補充や、新鮮なチモシー(牧草)を山盛りに入れ替えた直後はジャンプが起きやすくなります。モルモットは嗅覚が鋭く、牧草の青い香りやペレットの穀物臭を即座に感知します。普段あまり与えないイタリアンライグラスやオーツヘイなど香りの強い牧草を入れたときは、食べる前にまずポップコーンジャンプで喜びを表現する子もいます。
野菜のおやつもジャンプのきっかけになり、野菜をケージに入れた瞬間、匂いに反応してジャンプが始まることがあります。逆に、見慣れたペレットだけを補充した場合はジャンプまでには至らず、静かに食べ始めるケースも多いです。食べ物の「特別感」がジャンプのきっかけになっているといえます。
部屋んぽの開始直後
ケージの扉を開けて広い空間に出した瞬間は、ポップコーンジャンプが最も見られやすいタイミングの1つです。野生のテンジクネズミ類は草むらや岩陰など隠れ場所のある草地で暮らしており、周囲を探索しながら移動する習性を持っています。ケージという限られた空間から解放されると、たまっていたエネルギーを一気に放出するかのように跳ね、走り、また跳ねるという行動を繰り返します。
部屋んぽの時間を毎日決まった時刻に設定している場合、モルモットはその時間帯が近づくとソワソワし始め、ケージの入り口付近に移動して待機するようになります。扉が開いた瞬間のジャンプは、待ちに待った時間がやってきた喜びの表れです。
ケージの掃除直後
床材を全交換してケージ内をきれいに整えた直後も、ジャンプが起きやすいタイミングの1つです。清潔な床材の感触や、汚れた匂いがリセットされた空間に対する快適さが刺激となり、ケージに戻した途端にポップコーンジャンプを披露する子がいます。ウッドチップやペーパーベディングなど、ふかふかの新しい床材の上を走り回りながら跳ねる姿は、見ていて思わず笑顔になる光景です。
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ポップコーンジャンプが起きやすい環境づくり

ポップコーンジャンプは飼い主が無理にやらせるものではありませんが、モルモットが安心して暮らせる環境を整えることで自然と頻度が増える傾向があります。ここでは、ジャンプが見られやすくなる飼育環境のポイントを解説します。
十分な広さのケージを用意する
モルモット1匹あたりのケージサイズは、底面積で最低60cm×120cm程度が目安とされています。広ければ広いほど走り回れるスペースが確保でき、ジャンプの頻度も上がりやすくなります。ペットショップで販売されているウサギ用ケージ(幅60〜80cm程度)ではやや手狭になりがちです。2匹飼育の場合は幅120cm以上、できれば150cm程度を確保できると、追いかけっこをしながらポップコーンジャンプを連発する姿が見られるようになります。
ケージの広さを確保するのが難しい場合は、毎日30分〜1時間程度の部屋んぽ時間を設けることで運動量を補いやすくなります。部屋んぽスペースにはモルモットが隠れられるトンネルや小屋を1〜2個置いておくと、隠れ家から飛び出す勢いでジャンプが誘発されることがあります。
部屋んぽの際は安全面への配慮も欠かせません。電源コードをかじることによる感電、小さなものの誤飲、家具のすき間への逃げ込み、高い場所からの落下などが代表的な事故リスクです。コード類はカバーで保護し、モルモットが入り込みそうなすき間はあらかじめ塞いでおいてください。フローリングは足が滑りやすいため、部屋んぽエリアにはタオルやジョイントマットを敷くと安全です。犬や猫など他のペットがいる場合は、部屋んぽ中に接触しないよう部屋を分けるか、時間帯をずらす工夫が必要です。
食事のバリエーションを持たせる
主食のチモシーに加えて、週に2〜3回、異なる種類の牧草や旬の野菜を取り入れると、食事の時間がモルモットにとって「特別なイベント」になります。
ただし、モルモットの主食はあくまでチモシーなどの牧草です。野菜や果物はビタミンC補給と嗜好性アップのための補助食であり、与えすぎると下痢や肥満の原因になります。新しい野菜を試すときはごく少量から始め、翌日の便の状態を確認しながら量を調整してください。急に食事内容を大きく変えると消化不良を起こすことがあるため、1種類ずつ試すのが安全です。
野菜の量は、体格や便の状態を見ながら1日に葉野菜を片手にのる程度(目安として50〜80g前後)に調整するのが基本です。小松菜などカルシウムを多く含む野菜は尿路結石のリスクを高める場合があるため、毎日大量に与えるのは避け、他の葉野菜とローテーションで取り入れてください。果物は糖分が多いため、与える場合はごく少量にとどめます。
安心できる隠れ場所を設置する
モルモットは臆病な草食動物であり、身を隠せる場所がないとストレスで行動全体が萎縮します。ケージ内に木製のハウスやトンネルを最低1つ設置し、「いつでも逃げ込める場所がある」という安心感を与えることが、活発な行動を引き出す土台になります。隠れ家でリラックスした後にハウスから飛び出してポップコーンジャンプをする、という流れは飼育者の間でもよく報告されている行動パターンです。
ポップコーンジャンプと病的なけいれんの見分け方

ポップコーンジャンプを初めて見た飼い主が心配するのは、「これは喜んでいるのか、それとも発作やけいれんではないのか」という点です。結論から言えば、両者にはいくつかの明確な違いがあります。
ポップコーンジャンプの特徴
健康なポップコーンジャンプでは、ジャンプの前後でモルモットの意識がはっきりしているのが最大のポイントです。跳ねた直後にエサを食べ始めたり、走り回ったり、飼い主の手に寄ってきたりと、通常の行動にスムーズに移行します。ジャンプ中に「プイプイ」「キュイキュイ」といった鳴き声を出すこともあり、これは興奮や喜びを示す発声と考えられています。ただし、鳴き声の有無や頻度には個体差があります。
また、ポップコーンジャンプは特定のきっかけ(フードの提供、部屋んぽの開始など)に対する反応として起こるのが一般的です。何の前触れもなく、静かに寝ていた状態からいきなり激しく跳ねるケースは少なく、多くの場合は直前に何らかの「うれしい刺激」が存在します。
病的なけいれんとの違い
一方、てんかん発作やミネラルバランスの異常によるけいれんでは、モルモットの目の焦点が合わず、体が硬直したまま倒れることがあります。ジャンプのように四肢で着地するのではなく、横倒しになってバタバタと手足を動かす場合は発作の可能性が高いです。発作中は呼びかけや触れても反応が鈍く、発作後にぐったりと動かなくなる時間(発作後もうろう状態)が見られることもあります。
ビタミンCの慢性的な不足は壊血病を引き起こし、関節の痛みや跛行(足を引きずる動き)、歯ぐきからの出血、被毛の悪化、食欲低下といった症状が現れます。重度の場合は全身状態の悪化にともなって神経症状が出る可能性もゼロではありません。モルモットは体内でビタミンCを合成できない動物で、1日あたり体重1kgにつき10〜30mg程度のビタミンCを食事から摂取する必要があります。妊娠中・授乳中・病中病後はさらに必要量が増えるため、不足が疑われる場合は獣医師に相談してください。ペレット(モルモット専用のビタミンC強化タイプ)と新鮮な野菜を組み合わせることで、不足を防ぎやすくなります。
判断に迷ったときは、スマートフォンで動画を撮影しておき、エキゾチックアニマルに対応できる動物病院で獣医師に見せるのが確実な方法です。動画があれば、ジャンプの様子・持続時間・前後の行動を正確に伝えられるため、診断の精度が上がります。繰り返す異常行動、転倒、意識の低下、食欲不振、呼吸の異常、血尿、痛がる様子などが見られる場合は、早急に受診してください。
ポップコーンジャンプが見られないときに考えたいこと

「うちのモルモットはポップコーンジャンプをしない」という声も少なくありません。ジャンプをしないからといって問題だとは限らないのですが、いくつかの要因が行動を抑制している可能性はあります。
性格や年齢の個体差
モルモットにも個性があります。おっとりした性格の個体は、嬉しいときでもジャンプではなく「プイプイ」という鳴き声で感情を表すことがあります。
また、先述のとおり年齢が上がるにつれてジャンプは減少するのが自然な変化です。4〜5歳を超えたモルモットがジャンプしなくなったとしても、食欲があり、鳴き声を出し、飼い主に近寄ってくるようであれば心配はいりません。
ストレスや体調不良のサイン
以前はジャンプしていたのに急にしなくなった場合は、環境の変化や体調不良が影響している可能性があります。引っ越し、ケージの配置換え、同居モルモットとの関係悪化、室温の急変などがストレス要因として考えられます。
体調面では、不正咬合(歯の噛み合わせ異常)や尿路結石などの痛みを抱えていると、行動全体が消極的になりジャンプも見られなくなります。食欲の低下、体重の減少、毛並みの悪化、うずくまって動かないといった兆候がある場合は、早めに動物病院を受診してください。
まとめ
モルモットのポップコーンジャンプは、喜びや興奮を全身で表現する健康的な行動です。フードの提供時、部屋んぽの開始時、ケージ掃除の直後など、モルモットにとって「うれしい瞬間」に発生しやすく、特に若い個体で頻繁に見られます。
ジャンプが起きやすい環境をつくるには、十分な広さのケージ、食事のバリエーション、安心できる隠れ場所の3つがポイントになります。一方で、ジャンプと病的なけいれんは見た目が似ている場合があるため、意識の有無や前後の行動をよく観察し、判断がつかないときは動画を撮影して獣医師に相談してください。
ポップコーンジャンプは、モルモットが「今、楽しい」と飼い主に伝えてくれる貴重なサインです。日々の飼育の中でその瞬間に出会えたら、モルモットとの暮らしがより一層豊かなものになるはずです。