デグーのかじり木の選び方ガイド|安全な素材や設置方法をわかりやすく解説
デグーを飼い始めると、ケージの中で金属部分やプラスチック製品をガリガリとかじる姿を目にする機会があります。「歯に問題があるのでは」と不安になる方もいるかもしれませんが、これはデグーにとってごく自然な行動です。
デグーの歯は一生伸び続ける「常生歯(じょうせいし)」と呼ばれる構造をしており、硬いものをかじって歯を摩耗させなければ、歯が伸びすぎて噛み合わせが悪くなる「不正咬合(ふせいこうごう)」を引き起こすリスクがあります。歯の健康を保つ基本は、チモシーなどの牧草を中心とした高繊維の食餌を十分に摂ることです。
そのうえで、歯の摩耗を補助し、かじる欲求を満たすアイテムとして活躍するのが「かじり木」です。この記事では、デグーにかじり木を与える理由から、安全な素材の選び方、ケージへの設置方法、交換の目安まで、飼育に必要な知識を一つひとつ解説していきます。
デグーにかじり木が必要な理由

かじり木は単なるおもちゃではなく、デグーの歯と心の健康を支えるケア用品です。歯の管理とストレス発散という2つの側面から、その必要性を見ていきます。
常生歯の仕組みと不正咬合のリスク
デグーの歯は、上下合わせて20本あります。このうち前歯にあたる切歯4本と、奥歯にあたる臼歯16本のすべてが、生涯を通じて伸び続けます。野生のデグーはチリの乾燥地帯に暮らし、硬い草の茎や樹皮、根などを日常的にかじることで歯の長さを自然に調整しています。飼育下でも、チモシーなどの牧草を十分に食べていれば、咀嚼による歯の摩耗はある程度進みます。しかし、牧草の摂取量が不足していたり、個体の噛み合わせや顎の形態に問題があったりすると、摩耗が追いつかないことがあります。歯が伸びすぎると、切歯が内側に湾曲して口の中を傷つけたり、臼歯の噛み合わせがずれて食事がうまくとれなくなったりします。不正咬合が進行すると、よだれが止まらなくなる、体重が急激に落ちるといった症状が現れ、動物病院で歯を削る処置が必要になるケースもあります。
不正咬合は遺伝的な要因や外傷、食餌内容の偏りなど複数の原因が絡み合って起こるため、かじり木だけで完全に予防できるものではありません。牧草を中心とした高繊維の食餌をベースに、かじり木は歯の摩耗を補助する手段として位置づけるのが適切です。
ストレス発散と行動欲求の充足
デグーは知能が高く、好奇心が旺盛な動物です。野生下では1日の多くの時間を食べ物の探索や巣穴の整備に費やしており、「かじる」という行為そのものが本能的な行動欲求に組み込まれています。ケージの中にかじれるものがないと、金網やプラスチック製の回し車、給水ボトルのノズルなどを代わりにかじり始めることがあります。金網を長時間かじると歯が欠けたり、塗装を飲み込んでしまったりする恐れがあるため、安全にかじれる専用の木を用意しておくことで、こうした事故を防げます。
また、かじり木を新しいものに交換した直後は、匂いを嗅いでから慎重にかじり始めるデグーの姿が見られます。こうした「新しい刺激との出会い」も、単調になりがちなケージ生活に変化を与える要素として機能します。
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かじり木に使える木の種類と避けるべき素材

かじり木として販売されている木にはいくつかの種類があり、デグーに安全な樹種を選ぶことが健康を守る第一歩です。基本的には「小動物用」として市販されている製品を選ぶのが安心で、自己判断で庭木や果樹の枝を与えるのは避けた方が無難です。ここでは代表的な安全素材と、与えてはいけない素材を具体的に紹介します。
安全に使える代表的な樹種
小動物用のかじり木として流通しているりんご、梨、桑、柳などの枝が、デグー用として広く使われています。りんごの木はペットショップやオンラインショップで最も手に入りやすく、適度な硬さがあるためデグーの歯の摩耗に適しています。梨の木はりんごよりもやや柔らかく、かじり木を初めて使うデグーや、まだ若い個体にも受け入れられやすい傾向があります。
いずれの樹種でも、パッケージに「小動物用」「無塗装・無薬剤処理」と明記された製品を選ぶことが前提です。「果樹の枝だから安全」と一括りにせず、製品表示を確認する習慣をつけます。自然の枝を採取して与えたいと考える方もいますが、樹種の誤認、農薬や除草剤の付着、排気ガスの影響、寄生虫やカビの混入など、確認すべき項目が多く、初心者にはリスクが高い方法です。
かじり木の形状・サイズの選び方

同じ樹種のかじり木でも、形状やサイズによってデグーの反応は変わります。デグーの体格や好み、ケージのレイアウトに合わせて使い分けることで、かじり木の効果を引き出せます。
スティックタイプ
最もオーソドックスな形状が、長さ10〜15cm程度のスティックタイプです。前足で握って持ちながらかじれるため、デグーが自分のペースで歯を削るのに適しています。太さは直径1〜2cm程度のものが、デグーの小さな手でも持ちやすいサイズです。ケージの床に転がしておくだけで使えるため、設置の手間がかからないのも利点です。ただし、床材の中に埋もれてしまったり、排泄物で汚れたりしやすいため、汚れが目立ってきたら早めに交換します。
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吊り下げタイプ・固定タイプ
ケージの金網にネジやワイヤーで固定するタイプのかじり木は、デグーが立ち上がったり体を伸ばしたりしながらかじるため、運動量の増加にもつながります。木のブロックを紐で連結したハンギングトイのような製品もあり、揺れる動きがデグーの興味を引きやすい傾向があります。
固定タイプを選ぶ際は、ネジやワイヤーの素材にも注意が必要です。亜鉛メッキのネジはデグーがかじって金属粉を摂取すると亜鉛中毒を引き起こす恐れがあるため、ステンレス製の金具を使い、金具部分がなるべく露出しない構造の製品を選びます。かじり癖が強い個体の場合は、金具が木の内部に埋め込まれたタイプを選ぶとより安全です。
紐で吊り下げるタイプの場合は、麻紐やコットン紐など天然素材のものが比較的安全です。ただし、天然素材でもほつれた繊維を飲み込むと腸閉塞の原因になったり、輪状に垂れ下がった部分に足指が絡まったりするリスクがあります。紐のほつれが見られたら早めに撤去し、輪状にならない設計の製品を選びます。ナイロン製の紐はかじって飲み込むと消化できないため、使用を避けます。
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枝分かれタイプ・自然木
Y字型やT字型に枝分かれした自然木は、かじり木としてだけでなく、止まり木やケージ内のアスレチックとしても活用できるアイテムです。デグーは高い場所を好む傾向があるため、枝分かれした部分に足をかけて登ったり、枝の上で休んだりする様子が見られます。
自然木を使う場合は、直径が3cm以上ある太めの枝を選ぶと、体重を支えるのに十分な強度が確保できます。樹皮がついたままの枝は、樹皮をはがすこと自体がデグーにとっての「遊び」になり、かじり木への興味が長続きしやすいという特徴があります。高い位置に設置するときは、落下事故を防ぐために枝をケージにしっかり固定し、下にステージや厚めの床材を配置して段差を小さくする工夫も取り入れます。
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かじり木のケージへの設置方法

かじり木の設置場所に厳密なルールはありませんが、置く位置を工夫することで利用頻度が上がり、汚れや事故のリスクも下げられます。おすすめの位置と避けたい位置を整理します。
設置場所の考え方
デグーは活動時間の多くをケージの中層から上層で過ごす傾向があります。そのため、ステージ(棚板)の近くや、よく登るルートの途中にかじり木を配置すると、自然と目に入り、かじる機会が増えます。一方、巣箱のすぐ隣に置くと、排泄物で汚れやすくなるため、巣箱からは少し離した位置が望ましいです。給水ボトルの近くも、水が飛び散ってかじり木が湿りやすくなるため避けた方がよいでしょう。湿った木はカビが発生しやすく、衛生面でのリスクが高まります。
複数か所への分散設置
ケージのサイズに余裕がある場合は、かじり木を2〜3か所に分けて設置すると、デグーがケージ内を移動するきっかけになり、運動不足の解消にも役立ちます。例えば、1本はケージの下層にスティックタイプを転がし、もう1本は中層のステージ付近に固定タイプを取り付け、上層には吊り下げタイプを設置する、といった配置が考えられます。
場所ごとに形状や樹種を変えると、デグーの好みを観察する手がかりにもなります。あまりかじられていないものは別の素材に交換し、よくかじるものは多めにストックしておくと、日々のケージ管理がスムーズになります。
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かじり木の交換タイミングと衛生管理

かじり木は消耗品です。適切なタイミングで交換し、清潔な状態を保つことで、デグーの健康リスクを減らせます。
交換の目安
スティックタイプの場合、元の太さの半分以下までかじられたら交換の時期です。細くなりすぎた木は割れやすくなり、鋭い破片が口の中を傷つける可能性があります。固定タイプや吊り下げタイプも同様に、木の部分が薄くなったり、金具が露出し始めたりした段階で新しいものに取り替えます。
デグーのかじるペースには個体差があり、1週間で1本を使い切る子もいれば、1か月以上同じかじり木を使い続ける子もいます。飼い始めの頃は毎日かじり木の状態を確認し、自分のデグーの消費ペースを把握しておくと、買い足しのタイミングを見誤りません。
衛生管理のポイント
かじり木は木材であるため、尿や水分を吸収するとカビや雑菌が繁殖しやすくなります。表面が変色していたり、異臭がしたりする場合は、まだ形が残っていても交換します。尿が染み込んだかじり木は洗浄しても内部に汚れが残りやすいため、洗って再利用するよりも新しいものに交換する方が衛生的です。
日常的なケアとしては、週に1回程度、かじり木を取り出して表面の汚れを乾いた布で拭き取り、清潔な室内の風通しのよい場所で数時間〜半日ほど乾燥させるだけでも衛生状態は保てます。屋外に干す場合は、花粉や排気ガス、虫の付着に注意が必要です。水洗いをする場合は洗剤を使わず、流水でこすり洗いしたあと、完全に乾かしてからケージに戻します。生乾きのまま戻すとカビの原因になるため、風通しのよい場所で丸1日以上乾燥させるのが目安です。
デグーがかじり木に興味を示さないときの対処法

かじり木を用意したのにまったくかじらない、というケースは珍しくありません。原因を一つずつ探り、環境や素材を調整することで、多くの場合は改善が見込めます。
素材や硬さが合っていない場合
デグーにも個体ごとの好みがあり、りんごの木には見向きもしないのに、柳の枝は喜んでかじるということが実際に起こります。1種類の木を試しただけで「うちの子はかじり木が嫌い」と判断するのは早計です。りんご、梨、柳、桑など、3〜4種類の素材を順番に試してみると、好みの傾向が見えてきます。
また、同じりんごの木でも、樹皮つきと樹皮なしで反応が異なることがあります。樹皮の香りや食感が気に入って、樹皮をはがすことに夢中になるデグーもいます。
設置場所や環境を見直す
かじり木をケージの隅に置いたまま放置していると、デグーの行動範囲から外れてしまい、存在に気づかないことがあります。デグーがよく過ごすステージの上や、お気に入りの場所のすぐそばに移動させるだけで、かじり始めるケースがあります。
また、牧草の中にかじり木を半分埋めておくと、「探し出す」という行動が加わり、興味を引きやすくなります。これは「フォージング(採食行動)」と呼ばれる野生本来の行動を疑似的に再現する方法で、かじり木への関心を高める効果が期待できます。
歯の異常が疑われる場合
素材や場所を変えてもまったくかじらず、さらに食欲の低下や体重の減少が見られる場合は、すでに不正咬合や歯のトラブルが起きている可能性があります。以下のような兆候が1つでも当てはまる場合は、早めにエキゾチックアニマルの診療に対応した動物病院を受診します。
- 口元を気にする仕草が増えた
- ペレットを食べるのに時間がかかる、または硬いものを避けるようになった
- よだれで顎の毛が濡れている
- 涙目が続いている
- 便が小さくなった、または量が減った
- 食べ物を口に入れても落としてしまう
歯の問題は外見からは判断しにくいことが多く、獣医師による口腔内の検査で初めて発見されるケースも少なくありません。
まとめ
デグーの歯の健康を保つ基本は、チモシーなどの牧草を中心とした高繊維の食餌を十分に摂れる環境を整えることです。かじり木はその補助として、歯の摩耗を助けながらストレス発散にも役立つ飼育アイテムとして位置づけられます。かじり木に興味を示さないときは、素材を変える、場所を移す、牧草に埋めるといった工夫を試し、それでも改善しない場合は歯の異常を疑って獣医師に相談しましょう。
日々のかじり木の状態を観察する習慣が、デグーの小さな体調変化に気づくきっかけにもなります。毎日のケージチェックの中に「かじり木の確認」を組み込んで、デグーとの暮らしをより安心なものにしていきましょう。