ミーアキャットは動物園やSNSで見かける愛らしい姿から「飼ってみたい」と感じる方が増えています。しかし、実際に迎え入れた後に「こんなはずではなかった」と後悔するケースが報告されています。ミーアキャットはペットとしての歴史が浅く、犬や猫と比べると飼育情報が十分に行き渡っていない分野が残っている動物です。
見た目のかわいさだけで判断すると、飼い主にとってもミーアキャットにとっても不幸な結果につながりかねません。この記事では、ミーアキャットを飼って後悔しやすい具体的な理由と、飼育前に確認しておくべきポイントを詳しく解説します。
ミーアキャットってどんな動物?

後悔の原因を理解するためには、まずミーアキャットの生態を正しく知る必要があります。ミーアキャット(学名:Suricata suricatta)は食肉目マングース科に分類される小型の哺乳類で、南アフリカやボツワナなどの乾燥した草原・砂漠地帯に生息しています。体長は約25〜35cm、体重は600〜1000g程度で、見た目の印象よりも小柄な動物です。
野生下では数十頭の群れで暮らし、仲間と協力して天敵を見張ったり、巣穴を掘ったりする社会性の高い生き物です。立ち上がって周囲を見渡す姿が有名ですが、あれは天敵の接近を警戒する行動であり、常に緊張感のある環境で生きてきた動物であもあります。飼育下での寿命はおおむね12〜15年程度が目安です。
食性は雑食で、野生下では昆虫・クモ・サソリ・小型のトカゲ・植物の根や果実などを食べています。飼育下では昆虫(コオロギ、ミルワームなど)や生肉、野菜、果物を組み合わせた食餌を用意する必要があり、栄養バランスの管理には獣医師や飼育書の指示を参考にすることが求められます。猫用フードだけを与えるといった簡易的な食餌では栄養が偏るため、食性への理解は飼育の前提条件です。
ミーアキャットの鳴き声は何種類?意味や特徴、ペットとして飼う際の注意点を解説
ミーアキャットはなぜ立つ?かわいい立ち姿に隠された2つの理由と驚きの生態
ミーアキャットを飼って後悔しやすい7つの理由

ミーアキャットの飼育で後悔するポイントは、情報不足のまま飼い始めることに起因するものがほとんどです。ここでは、飼い主が直面しやすい7つの現実を具体的に紹介します。
1. 臭いが想像以上に強い
ミーアキャットはマングース科の動物であり、臭腺から分泌されるマーキング臭が出やすい特徴を持っています。この臭いは野生下で縄張りを示すために使われるもので、飼育下でも完全に無臭にすることは難しいとされています。
清掃の頻度や通気の工夫、去勢・避妊手術の有無によって体感は変わりますが、部屋に臭いが染みつくと感じる飼い主の声は少なくありません。犬や猫とは質の異なる獣臭で、来客時に指摘されることもあります。臭いに敏感な方や集合住宅にお住まいの方は、飼育前にペットショップや飼育経験者のもとで実際の臭いを確認する機会を設けることをおすすめします。
2. 噛み癖が直りにくい
ミーアキャットは好奇心が旺盛で、物を噛んで確かめる習性があります。幼い頃は甘噛み程度でも、成長するにつれて顎の力が強くなり、出血を伴うほどの噛みつきをすることがあります。
犬のようにしつけで噛み癖を矯正することは難しく、噛まれるリスクがある動物であることを理解した上で飼育に臨む姿勢が求められます。ただし、噛みつき事故を減らすための工夫は可能です。手を急に近づけない、触る前に声をかけて存在を知らせる、ケージのレイアウトを見直して不意の接触を減らすといった環境管理やハンドリングの工夫を取り入れることで、咬傷のリスクを軽減できます。
3. 診てくれる動物病院が限られる
ミーアキャットを診察できる動物病院は、一般的な犬猫対応の病院に比べて圧倒的に少ないのが現状です。エキゾチックアニマルの診療に対応した病院が近隣にあるかどうかは、飼育を始める前に必ず確認しておく必要があります。体調を崩してから病院を探し始めると、移動に長時間かかったり、予約が数週間先になったりすることがあります。緊急時に対応できる病院がないという状況は、飼い主にとって大きな不安材料です。
加えて、ミーアキャットを含むエキゾチックアニマルは体調の変化を外見に表しにくく、症状が進行してから異変に気づくケースがあります。日頃から体重・食欲・排泄物の状態を記録しておき、少しでも異変を感じたら早めに受診する習慣をつけることが、病気の早期発見につながります。年に1〜2回の定期健診を受けることも検討してください。
「14か所に電話しました。」ミーアキャット&スカンクの飼い主が直面した病院探しのカベ【エキゾのはなし。#3】
4. 医療費が高額になりやすい
診察できる病院が少ないことに加え、ミーアキャットの医療費は高額になりがちです。犬や猫のようにペット保険の選択肢が豊富ではなく、加入できる保険が限られる、または対象外となることが多いのが現状です。そのため、治療費の大部分を自己負担でまかなうケースが多くなります。手術が必要な病気やケガの場合、1回の治療で数万円から十数万円かかることもあります。日常的な健康診断の費用も犬猫より割高な傾向があり、長期的な医療費の見通しを立てておかないと、経済的な負担が重くのしかかります。なお、保険商品の内容や対象動物は時期によって変わるため、飼育を検討する段階で最新の情報を確認することをおすすめします。
5. 飼育環境の整備に手間とコストがかかる
ミーアキャットは乾燥した地域出身の動物であるため、日本の気候に合わせた温度・湿度の管理が欠かせません。一般的な目安として、室温は25〜28度程度が適温とされることが多いですが、適切な温度は個体・湿度・季節によって変わります。
ケージ内にヒーターで暖かい場所を作りつつ、涼しい場所にも移動できるように温度勾配を設けることで、ミーアキャット自身が快適な場所を選べる環境を整えるのが理想です。高温多湿の環境は熱中症や体調不良のリスクがあるため、温度だけでなく湿度管理や換気にも気を配る必要があります。具体的な温度設定については、飼育書やエキゾチックアニマルに詳しい獣医師の推奨に従ってください。
6. 懐くかどうかは個体差が大きい
SNSなどで飼い主に甘えるミーアキャットの動画を見て「自分にも懐いてくれるはず」と期待する方は多いですが、人に懐く度合いには個体差が大きく、必ずしも期待通りにはなりません。幼い頃から人の手で育てられた個体は比較的人に慣れやすい傾向がありますが、成長とともに警戒心が強くなるケースもあります。
群れで暮らす動物であるため、飼い主を群れの仲間と認識すれば親密な関係を築けることもありますが、逆に飼い主を警戒対象と見なすと、威嚇や攻撃が続くこともあります。「懐かなかった場合でも最後まで責任を持てるか」を事前に自問しておく必要があります。
7. 寿命が長く、飼育の責任が続く
先述の通り、ミーアキャットの飼育下での寿命は12〜15年程度が目安です。これはハムスターやウサギと比べてかなり長く、10年以上にわたって毎日の世話・温度管理・医療費の負担が続くことを意味します。飼い始めた時点では問題なくても、転勤・結婚・出産・介護といったライフイベントによって飼育環境が変わる可能性は十分にあります。
ミーアキャットを引き取ってくれる里親を見つけることも容易ではなく、途中で飼えなくなった場合の選択肢が極めて限られる点は、飼育前に理解しておくべき現実です。
後悔しないために飼育前に確認すべきこと

ミーアキャットの飼育で後悔を防ぐには、迎え入れる前の準備と情報収集が鍵を握ります。衝動的に購入するのではなく、以下のポイントを一つひとつ確認してから判断することが後悔の回避につながります。
エキゾチックアニマル対応の動物病院を探しておく
飼育を始める前に、自宅から通える範囲にミーアキャットを診察できる動物病院があるかどうかを調べておく必要があります。電話やメールで「ミーアキャットの診察は可能か」と直接確認するのが確実です。できれば、通常の診療だけでなく緊急時の対応が可能かどうかも聞いておくと安心です。病院が見つからない場合は、飼育自体を見送る判断も選択肢に入れるべきです。
飼育にかかる費用を具体的に計算する
ミーアキャットの購入費用は個体の月齢・性別・販売元によって幅がありますが、おおむね20万〜50万円程度の価格帯で取引されることが多く、希少な個体ではさらに高額になることもあります。それに加えて、ケージ・床材・ヒーター・エサ代(昆虫や生肉を含むため一般的なペットフードより割高になりやすい)・光熱費・医療費といったランニングコストが毎月発生します。年間の飼育費用を概算し、10年以上にわたって負担し続けられるかどうかを冷静に判断する必要があります。「買えるかどうか」ではなく「飼い続けられるかどうか」という視点で考えることが、後悔を防ぐ第一歩です。
法規制と入手経路の適法性を確認する
ミーアキャットは2024年12月時点では環境省の特定動物リストには含まれておらず、飼育に国の許可は不要です。ただし、自治体によっては条例で飼育に関する届出や制限が設けられている場合があるため、お住まいの地域のルールを事前に確認してください。
また、購入する際は販売元が第一種動物取扱業の登録を受けているかどうかを必ず確認する必要があります。登録番号の表示がない業者や、個体の出自が不明な取引には注意が必要です。適法に繁殖・輸入された個体であることを確認した上で購入することが、違法取引に加担しないための基本的な対応です。
家族全員の同意を得る
ミーアキャットは臭い・鳴き声・噛み癖など、同居する家族にも影響を及ぼす要素が多い動物です。飼い主本人だけでなく、一緒に暮らす全員がミーアキャットとの生活を受け入れられるかを確認しておく必要があります。特に臭いに関しては、実際に飼育している方のもとを訪れたり、ペットショップで直接確認したりして、家族全員が許容できるかどうかを判断するのが望ましいです。
賃貸物件の場合はペット飼育の可否を確認する
賃貸住宅にお住まいの場合、ペット可の物件であってもミーアキャットの飼育が認められるとは限りません。契約書の記載内容を確認し、管理会社や大家さんに直接相談することが必要です。臭いや鳴き声が原因で近隣トラブルに発展するケースもあるため、飼育が許可されている場合でも周囲への配慮は欠かせません。
ミーアキャットの生態を書籍や専門家から学ぶ
SNSの動画や短い紹介記事だけでは、ミーアキャットの飼育に必要な知識は得られません。エキゾチックアニマルの飼育に関する書籍を読んだり、実際に飼育経験のある方から話を聞いたりすることで、飼育の現実をより正確に把握できます。動物園のミーアキャット担当の飼育員が公開している情報なども参考になります。知識が増えるほど、自分に飼育が可能かどうかの判断精度が上がります。
それでもミーアキャットを飼いたいと思ったら

ここまで後悔しやすいポイントを中心に解説してきましたが、ミーアキャットの飼育がすべてネガティブなわけではありません。十分な知識と準備を持って迎え入れた場合、ミーアキャットは飼い主と深い信頼関係を築けることがある動物です。群れの仲間として認めてもらえると、飼い主のそばに寄り添って眠ったり、帰宅時に駆け寄ってきたりする姿を見せてくれることがあります。
飼育の難易度が高い動物であることは間違いありませんが、その分だけ日々の世話を通じて得られる喜びも大きいと感じる飼い主は存在します。後悔するかどうかの分かれ目は、「かわいいから飼う」ではなく「大変さを理解した上で、それでも一緒に暮らしたいと思えるか」という点にあります。
もし迷いがあるなら、まずはミーアキャットと触れ合える施設を訪れてみたり、飼育経験者のコミュニティで情報を集めたりすることから始めてみるのも一つの方法です。時間をかけて検討すること自体が、後悔を防ぐための有効な手段です。
まとめ
ミーアキャットを飼って後悔する原因の多くは、飼育前の情報不足と準備不足にあります。臭い・噛み癖・医療費・飼育環境・懐きやすさの個体差・寿命の長さなど、飼い始めてから気づく現実は少なくありません。
後悔を避けるためには、ミーアキャットの生態と飼育の現実を正しく理解し、経済面・住環境・家族の同意・動物病院の有無・法規制の確認といった条件を一つひとつ確認しましょう。