SNSのタイムラインで、直立したまま「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」と野太い声で叫ぶ動物の動画を見たことはないでしょうか。あの動物こそがマーモットです。「叫ぶビーバー」と呼ばれることもありますが、実はビーバーではなく、リス科に分類されるまったく別の動物。見た目のかわいさと絶叫のギャップが多くの人の心をつかみ、2015年の流行以降、いまだにネットミームとして世界中で親しまれています。
ただ、あの有名な動画の叫び声は人間の声を後からかぶせたもので、実際のマーモットの鳴き声とは異なります。では、本当のマーモットはどんな声で鳴くのか。そもそもなぜ叫ぶように鳴くのか。この記事では、ミーム動画の元ネタから、マーモットの鳴き声に込められた意味、生態、日本で会える場所まで、気になるポイントをまるごとお伝えしていきます。
「叫ぶマーモット」ミームの元ネタと広まった経緯

元ネタは2015年に投稿された1本の動画
叫ぶマーモットのミームが生まれたのは、2015年7月のこと。海外のLone Goat Soap Co.(@lonegoatsoap)というアカウントが、Instagramにマーモットが「ピーッ」と鳴く短い映像を投稿したのがすべての始まりです。わずか数秒の動画でしたが、大自然の中で直立して叫ぶ姿のインパクトは絶大でした。
その約1か月後、別の投稿者がこの映像に男性の野太い絶叫をアフレコしたバージョンをYouTubeにアップロード。もとのかわいらしい「ピー」という声が「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」という迫力のある叫び声に差し替えられたこの動画は、海外で「Screaming Marmot」として瞬く間に拡散されました。
日本では「絶叫するビーバー」として定着
日本に入ってきた際、この動物はビーバーと誤解されたまま広まってしまいました。そのため、日本のインターネット上では「絶叫するビーバー」という名称で長年親しまれています。ニコニコ動画やX(旧Twitter)でも数多くの派生動画やコラ素材が作られ、2024年に流行した猫ミーム・犬ミームにも使用されるなど、10年近く経った現在でも現役で活躍しているミームです。
日清焼そばU.F.O.のテレビCMに登場したり、大阪ガスのCMでマーモットくんとして起用されたりと、企業の広告にも採用されるほどの知名度を誇ります。日本では尊さがあふれたときや、言葉にできない感情の高まりを表現する場面で使われることが多く、もはやネット文化の定番素材として根付いています。
マーモットが叫ぶ本当の理由

あの絶叫は「仲間を守るための警戒音」
ミーム動画では人間の声が当てられていますが、実際のマーモットも甲高い声で鳴きます。その声は「ピーッ」「キィーッ」というホイッスルのような鋭い音で、初めて聞く人は驚くほど大きく響きます。
この鳴き声の正体は、天敵の接近を仲間に知らせるための警戒音です。マーモットは群れで暮らす社会性の高い動物で、キツネやオオカミ、ワシなどの捕食者を発見すると、見張り役の個体が高い声を上げて周囲に危険を知らせます。その声を聞いた仲間のマーモットたちは、一斉に巣穴へ駆け込んで身を守るのです。
つまり、叫ぶマーモットの姿は命がけで仲間を守っている瞬間ということになります。かわいくておもしろい印象の裏に、こうした自然界の切実な営みが隠れているというギャップこそが、マーモットの魅力をさらに深いものにしています。
鳴き声は天敵の種類で変わる
さらに興味深いのが、マーモットは天敵の種類によって鳴き方のパターンを使い分けるという点です。空から襲ってくるワシと、地上から近づくキツネとでは、仲間がとるべき行動が異なります。マーモットはその違いを鳴き声で伝えることができるとされており、単なる「危ない!」という信号ではなく、より具体的な情報を含んだコミュニケーションを行っているのです。
また、警戒音以外にも、仲間同士のあいさつや威嚇、求愛の場面でそれぞれ異なる音を出すことがわかっています。お互いの鼻をくっつけ合うあいさつ行動も特徴的で、群れの中での絆を確認する手段として日常的に行われています。
そもそもマーモットとはどんな動物?

リス科の中では最大級の大きさ
マーモットは、げっ歯目リス科マーモット属に分類される動物です。リスの仲間というと小さな動物を思い浮かべるかもしれませんが、マーモットはリス科の中でも最大級のサイズを誇ります。体長は40〜70cmほど、体重は3〜7kgほどで、ずんぐりとした丸い体型に短い足、小さな耳が特徴的です。
毛色は種類や生息地によってさまざまで、茶褐色、灰色、黒っぽいものまであります。二本足で直立する姿がプレーリードッグに似ていますが、プレーリードッグもリス科の仲間であり、分類学的にはかなり近い関係にあたります。
名前の由来は「山のネズミ」
マーモットという名前の語源は、フランス語の「marmotte」にさかのぼります。さらにたどると、ラテン語の「mures montani(山のネズミ)」に由来するとされており、その名のとおり山岳地帯に暮らす動物です。
ちなみに、日本では長い間「モルモット」と混同されてきた歴史があります。オランダから日本にテンジクネズミ(モルモット)が持ち込まれた際、商人がマーモットの名前で紹介してしまい、それが訛って「モルモット」として定着したといわれています。マーモットとモルモットは名前こそ似ていますが、まったく別の動物です。
以下の記事でマーモットの生態について詳しく解説しているので、ぜひ読んでみてください。
マーモットってどんな動物?生態・種類・日本で会える場所まで紹介
まとめ
SNSで一度は目にしたことがあるであろう「叫ぶマーモット」。あの衝撃的な絶叫動画の元ネタは、2015年に海外で投稿されたキバラマーモットの映像に人間の声をかぶせたものでした。実際のマーモットの鳴き声は「ピーッ」「キィーッ」というホイッスルに似た甲高い音で、その目的は天敵から仲間を守るための警戒信号です。
マーモットはリス科に属する大型のげっ歯類で、アルプスやヒマラヤなどの山岳地帯に群れで暮らしています。半年以上におよぶ冬眠、天敵の種類によって変わる鳴き声のパターン、仲間と助け合って生き抜く高い社会性など、知れば知るほど奥深い動物です。
おもしろくてかわいいミームの裏側には、厳しい自然の中で懸命に生きるマーモットたちのリアルな姿がありました。ミーム動画をきっかけにマーモットに興味を持った方は、ぜひ動物園やカフェで本物のマーモットに会いに行ってみてください。画面越しとはまったく違う、生きているマーモットの温かさや愛嬌を感じられるはずです。