ペットとして親しまれているモルモットですが、「野生のモルモットっているの?」「もともとはどこに住んでいたの?」と気になったことはありませんか。丸いフォルムと穏やかな性格が魅力のモルモットには、実は意外と知られていない野生での姿や長い歴史があります。
この記事では、モルモットの野生での生態から原産地、家畜化された経緯、そして野生の習性を活かした飼育のヒントまで詳しくお伝えします。

ペットとして親しまれているモルモットですが、「野生のモルモットっているの?」「もともとはどこに住んでいたの?」と気になったことはありませんか。丸いフォルムと穏やかな性格が魅力のモルモットには、実は意外と知られていない野生での姿や長い歴史があります。
この記事では、モルモットの野生での生態から原産地、家畜化された経緯、そして野生の習性を活かした飼育のヒントまで詳しくお伝えします。


結論からお伝えすると、私たちがペットとして飼っているモルモット(学名:Cavia porcellus)は家畜化された種であり、自然分布としての野生個体群は基本的に存在しません。つまり、もともと自然界のどこかで野生のペットモルモットが暮らしているわけではないのです。
一方で、モルモットの祖先にあたる野生種は現在も南米に生息しています。テンジクネズミ属(Cavia属)に分類される動物たちがそれにあたり、ブラジルモルモット(Cavia aperea)などが知られています。こうした野生種は、私たちが知っているモルモットとは見た目も習性も少し異なりますが、遺伝的には近縁な関係にあります。
家畜化されたモルモットは、少なくとも数千年前から人間とともに暮らしてきたと考えられており、その長い歴史の中で野生で生き抜く能力を失っていきました。そのため、飼育されているモルモットを自然に放しても、残念ながら野生での生存は難しいと言わざるを得ません。

モルモットの原産地は南米のアンデス山脈周辺地域です。現在のペルー、ボリビア、エクアドル、コロンビアといった国々にまたがる高地が、モルモットの祖先たちが暮らしていた場所になります。
アンデス地方は標高2000〜3800メートル級の山岳地帯を含み、昼夜の寒暖差が激しく、乾燥した気候が特徴です。このような厳しい環境の中で、モルモットの祖先たちはたくましく生き延びてきました。
現地では「クイ(Cuy)」という名前で呼ばれており、この呼び名は今でもペルーやエクアドルなどで広く使われています。ちなみに「クイ」という名前の由来には諸説あり、モルモットが発する「キューキュー」という鳴き声からきているという説や、ケチュア語に由来するという説などがあります。
野生のテンジクネズミたちは、草原や岩場、低木が点在する場所を好んで暮らしています。単独で行動することはほとんどなく、小グループを作って生活するのが基本的なスタイルです。
日中は岩の隙間や他の動物が掘った巣穴、茂みの中などに身を隠して過ごすことが多く、薄明薄暮に活動が増える傾向が報告されています。これは天敵から身を守るための行動パターンで、猛禽類やキツネ、ヘビなどの捕食者が活発に動く時間帯を避けているのです。
食事は完全な草食性で、野草やイネ科の植物、木の葉、根などを食べて暮らしています。野生では食べられるものを常に探し歩く必要があるため、一日のうちかなりの時間を採食活動に費やします。また、自分でビタミンCを体内で合成できないという特徴は野生種も同様で、食餌から必要なビタミンCを摂取しています。
群れの中には緩やかな序列があり、社会構造は環境によって変わりますが、一部では優位なオスが複数のメスと暮らすハーレム型の構造が見られることもあります。野生種は常に捕食される危険と隣り合わせのため、基本的には警戒心が強く、用心深い動物です。

モルモットと人間の関わりは、少なくとも数千年前(約5000〜7000年前とされることが多い)にまでさかのぼると考えられています。南米アンデス地方の先住民たちが、野生のテンジクネズミを捕まえて飼い始めたのが家畜化の始まりでした。
当初の目的は、現代の感覚からすると少し驚くかもしれませんが、食用でした。アンデスの高地は農作物の栽培が難しく、大型の家畜を育てる環境にも恵まれていなかったため、小型で繁殖力が高く、わずかな草で育つモルモットは貴重なタンパク源となったのです。
インカ帝国の時代には、モルモットは一般家庭で広く飼育されるようになりました。家の中で放し飼いにされ、台所の隅や暖炉の近くで暮らしていたという記録が残っています。特別な祭事や儀式の際のごちそうとして、また病気の治療儀式にも用いられるなど、モルモットはアンデスの人々の生活と文化に深く根付いていきました。
現代でもペルーやエクアドル、ボリビアなどでは「クイ料理」として食べられています。ペルーでは年間およそ6500万匹を消費するという推計もあり、その数字からも現地でいかにポピュラーな食材であるかがわかります。日本ではペットのイメージが強いモルモットですが、原産地では今も食文化の一部として大切にされているのです。
モルモットがヨーロッパに渡ったのは、16世紀のスペイン人による南米征服がきっかけでした。征服者たちはこの珍しい小動物を本国に持ち帰り、貴族や富裕層の間でエキゾチックなペットとして人気を集めるようになります。
「ギニアピッグ(Guinea Pig)」という英語名の由来には諸説あります。当時ヨーロッパに輸入される際にギニア(アフリカ)経由で運ばれたからという説、あるいは「ギアナ(南米の地名)」が訛ったという説などが挙げられています。いずれにしても、その愛くるしい姿はヨーロッパの人々の心をつかみ、次第に一般家庭でも飼われるようになっていきました。
18世紀から19世紀にかけては、品種改良が盛んに行われるようになりました。イギリスを中心に、さまざまな毛色や毛質のモルモットが作り出され、現在私たちが知っているイングリッシュ(ショートヘア)、アビシニアン、シェルティ、ペルビアンといった品種の原型が生まれたのもこの時期です。
また、モルモットは医学研究においても大きな役割を果たすようになりました。人間と同じくビタミンCを体内で作れないという特性から、壊血病やビタミンC研究の実験動物として広く使われ、「実験台になる」という意味で「ギニアピッグ」という表現が英語で使われるようになったのも、この歴史に由来しています。
日本にモルモットが伝わったのは江戸時代の1843年とされており、オランダ船によって長崎に持ち込まれたという記録があります。「モルモット」という日本語名は、当時一緒に輸入されたマーモット(リス科の動物)と混同されたことから定着したと考えられています。

長い家畜化の歴史の中で、ペットのモルモットは野生の祖先とはずいぶん異なる姿に変化してきました。
まず体の大きさについてですが、飼育されているモルモットは野生種よりも一回り大きい傾向があります。野生のテンジクネズミの体重は通常300〜700グラム程度ですが、ペットのモルモットは700〜1200グラム、中には1500グラムを超える個体もいます。これは、人間が大きく育つ個体を選んで繁殖させてきた結果と、安定した食事環境によるものです。
毛色や毛質の多様性も、家畜化による大きな変化です。野生種は基本的に灰褐色や茶色の地味な毛色をしており、これは天敵から身を隠すための保護色として機能しています。一方、ペットのモルモットには白、黒、茶、クリーム、オレンジなど実にさまざまな毛色があり、単色のものから複数の色が混じったものまでバリエーション豊かです。
毛の長さや質感についても、野生種は基本的に短くて粗い毛並みですが、ペットのモルモットには長毛種(ペルビアン、シェルティなど)や巻き毛種(テクセル)、さらには毛がほとんどないスキニーギニアピッグまで存在します。これらはすべて人為的な品種改良の結果生まれたものです。
性格面でも、野生種とペットのモルモットには違いが見られます。
野生のテンジクネズミは当然ながら警戒心が強く、臆病です。天敵から身を守るために常に周囲を警戒し、少しでも危険を感じると素早く逃げ出したり、じっと動かずにやり過ごそうとしたりします。人間に対しても基本的には警戒心を持ち、簡単には懐きません。
一方、ペットのモルモットは何世代にもわたって人間のそばで暮らしてきたため、人に対する警戒心がかなり薄れています。個体差はありますが、多くのモルモットは飼い主に懐き、名前を呼ぶと近づいてきたり、撫でられることを喜んだりするようになります。ご飯の時間になると「プイプイ」と鳴いて催促する姿は、野生種では見られない行動でしょう。
また、飼育環境下ではモルモットの活動パターンも変化しています。野生種は主に薄明薄暮性ですが、ペットのモルモットは飼い主の生活リズムにある程度合わせるようになります。昼間に活動し、夜はしっかり眠るという生活を送る子も少なくありません。
ただし、野生の本能が完全に消えたわけではありません。突然の大きな音に驚いて固まったり、上から何かが近づくと怖がったりする反応は、空からの天敵(猛禽類)を警戒する野生の習性の名残と言えるでしょう。

野生のモルモットが群れで生活する動物であることは、飼育においても参考になるポイントです。
モルモットは基本的に寂しがりやで、仲間と一緒にいることで安心感を得る動物です。単独で飼育することも不可能ではありませんが、できれば2匹以上での飼育がモルモットの精神的な健康には望ましいとされています。特に飼い主が日中仕事などで家を空けることが多い場合、仲間がいることでモルモットの孤独感やストレスを軽減できます。
複数飼育をする場合、相性の良い組み合わせを考えることが大切です。メス同士は比較的うまくいくことが多いですが、オス同士は縄張り争いをすることがあります。去勢していないオスとメスを一緒にすると繁殖してしまうため、性別の組み合わせには注意が必要です。
一匹で飼育する場合は、飼い主がたっぷりとコミュニケーションの時間を取ることが大切になります。毎日話しかけたり、ケージから出して一緒に遊んだりする時間を設けることで、モルモットの社会的な欲求を満たしてあげましょう。
野生のテンジクネズミが岩陰や巣穴に身を隠して過ごすように、ペットのモルモットにも安心できる隠れ家が必要です。
ケージの中には必ず、モルモットがすっぽり入れるサイズのハウスやトンネルを用意してあげましょう。段ボールで作った簡易的なものでも、市販の木製ハウスでも構いません。モルモットが「ここにいれば安全」と感じられる場所があることで、ストレスが軽減され、精神的に安定した生活を送れるようになります。
隠れ家が必要な理由は、モルモットが本来「捕食される側」の動物だからです。野生では常に天敵に狙われる立場だったため、身を隠せる場所がないと不安を感じるという習性が今も残っています。特に飼い始めの頃や、環境が変わったとき、来客があったときなどは、隠れ家に逃げ込んで様子をうかがうことが多いでしょう。
また、モルモットを驚かせないような接し方も大切です。上から急に手を伸ばすと、猛禽類に襲われるときの恐怖を思い出して怯えてしまうことがあります。モルモットの目線の高さから、ゆっくりと近づくことを心がけると、より安心してもらえます。
モルモットは私たちにとって身近なペットですが、その歴史をたどると南米アンデスの厳しい高地で暮らしていた野生の祖先にたどり着きます。少なくとも数千年前に家畜化されて以来、人間とともに歩んできた長い歴史の中で、見た目も性格も大きく変化してきました。
野生のテンジクネズミは今も南米に生息していますが、ペットのモルモットはもはや野生では生きていくのが難しいほど家畜化が進んでいます。それでも、群れで暮らす習性や隠れ家を好む性質など、野生時代の名残は今も彼らの中に息づいています。
モルモットのルーツを知ることは、彼らをより深く理解することにつながります。遠いアンデスの地から私たちのもとへやってきた小さな命を、その歴史と習性を踏まえながら大切に育てていきたいものですね。


