犬でも猫でもない、「小さな家族」と暮らす日々。近年、ハリネズミやフクロモモンガ、爬虫類などのエキゾチックアニマルを飼育する人が増えています。しかし、彼らを診療できる動物病院は限られており、いざという時に頼れる場所を見つけられないという課題があります。
小動物メディアMinimaは、この課題に向き合うため、エキゾチックアニマルに特化した動物病院の情報共有サービス「ミニケア」を立ち上げます。
サービス開始に先立ち、特別連載「エキゾのはなし。」をスタート。飼い主、事業者、そして獣医師の方々に登場いただき、エキゾチックアニマルとの暮らしや、ケアの現状と課題について様々な視点から語っていただきます。
第13回のゲストは、神奈川県横浜市にある「横浜エキゾチック動物病院」の関根院長。2023年7月に開業し、横浜でほぼ唯一のエキゾチックアニマル専門病院として、地域の小さな命を支え続けています。獣医師を志した原点から、専門病院ならではの強み、そして今後の展望についてお話を伺いました。

エキゾチック専門獣医として道を選んだ理由
——開業されて約2年半とのことですが、もともとエキゾチック専門でキャリアを築こうと思われていたのですか?
そうですね。獣医師になる時から「ウサギや鳥、爬虫類などのエキゾチックアニマルは絶対に診られるようになりたい」と思っていました。それも踏まえて大学に入ったのですが、実際には大学でエキゾチックアニマルについてはほとんど学ばないです。
卒業後は田園調布動物病院で約5年間勤務しました。最初は犬猫もエキゾチックも両方診たいと思っていましたが、エキゾチックアニマルだけでも無限の可能性があり、動物種が多岐にわたるので、幅が広い分野だと気づきました。ただ、需要はあるのに供給が少ない。特に横浜にはエキゾチックアニマル全般を診察する専門病院がなかったので、自分の出身地である横浜でエキゾチックアニマル専門の動物病院を開業したいなと思ったのがきっかけです。
——横浜近辺で他にエキゾチックアニマルを診られる病院はあるんでしょうか?
「診られます」という病院はあるのですが、犬猫と一緒にモルモットやウサギ、ハムスターくらいまでで、爬虫類や鳥になると、爪切りや簡単な健康診断はできても、手術となると当院をご紹介いただくことが多いです。
うちは横浜で開業していますが、患者さんは神奈川県内にとどまりません。東京や静岡はもちろん、遠いところだと山梨や岐阜、長野から来られた方もいます。セカンドオピニオンを求めて来られる方が多いですね。近くの病院ではこれ以上の治療はできないと言われて、専門病院を探してうちを見つけてくださるケースです。
エキゾチックアニマルの専門病院だからできること

——一般の動物病院で「エキゾチックも診ます」というところと、専門病院の違いは何でしょうか?
まず、うちには犬猫が全く来ないので、ワンちゃんの声がしないです。ウサギさんのような子たちは、ワンちゃんの声がするだけでものすごく緊張してしまう子もいらっしゃいます。キャリーを開けた瞬間にバッと飛び出し、事故にもつながりかねません。犬猫が来ない環境は、多くの小動物にとってストレスが少ないです。
技術面でいうと、うちでは小さな動物でも血液検査ができます。例えば30グラムほどのヒョウモントカゲモドキでも血液検査をして、詳しい診断につなげられる。他の病院だとできない検査も、専門的な設備と知識があるからこそ可能になります。
——フクロウの診察もよく行われているそうですね。
はい。鎌倉にある「かわいい生きものミュージアム」は多くのフクロウがいるため、健診などで利用いただいています。フクロウは調子が悪くても顔に出にくいです。昨日まで飛び回って元気だったのに、今朝から急にぐったりしている、ということがあります。見てわかる状態になったときには、かなり進行していることが多いです。
これはエキゾチックアニマル全般に言えることで、不調に気づきにくかったり、体調が悪いのを隠そうとします。気づいたときには体重がすごく減っていた、ということも珍しくありません。
——鳥の診察はリスクが高いとも聞きます。
そうですね。状態の悪い鳥は保定しただけでだけでも、さらに状態を悪化させてしまうことがあります。そのため、まず保定ができる状態なのか、検査に耐えうる状態なのかを判断して、難しい状態であれば、酸素を嗅がせたりして、可能性がある病気を考え、できることから始める。状態が上がってきてから、検査をするかどうか判断します。
検査をすれば何かわかることもありますが、検査の途中で体力が持たなくて亡くなってしまう可能性もあります。そのため、血液検査やレントゲン検査などができる状態なのかどうかを慎重に見極めないといけません。犬猫のように、まず検査して診断という流れが取れない場合もありますので、そこが難しいところですね。
常に学び続ける姿勢が必要

——エキゾチックアニマルを診られる獣医師には、経験が求められるのでしょうか。
そうですね。できる検査が限られている種類の子たちもいるので、負担が少なく、最小限の必要な検査で診断や治療をしていく必要があるので、そこは感覚と経験によるところが大きいです。
それと、それぞれの動物がどこで生息していて、何を食べていて、温度や湿度などのどのような環境で過ごしているかを知らないと診察ができません。爬虫類といっても、種類は様々で食性や住んでいる環境も一緒ではなく、知らないと診察はできませんし、セキセイインコとフクロウは全く違う鳥なのに「鳥」と一括りにしてしまうと適切な治療ができない。その動物を知ることが大前提になります。
——教科書がないというお話も伺いました。
はい。エキゾチック動物は大学で学ばない分野ですし、「こうやります」「これが正しい」という定まったものがなかなかありません。学会に行って、多く診ている先生のお話を聞いたり、セミナーを聞いたりして学んでいきます。日本には医学書がない動物も多いので、海外の本を買って読んだり、最新の論文を調べたりしないといけません。
エキゾチックアニマルをやる人には、フロンティア精神というか、常に学び続ける姿勢がないとやっていけないと思います。好きなものを追求していく気持ちがないと難しい。探求心がないとやっていけないですね。
飼い主さんへのメッセージ
——初めてエキゾチックアニマルを飼う方に、心がけてほしいことはありますか?
可愛いだけで買うのではなく、しっかりその動物のことを知ってからお迎えしたほうがいいと思います。その動物がどういう動物で、寿命がどのくらいあって、何を食べるのか。しっかりと知ってから、責任を持ってお迎えしてほしいと思います。
衝動買いしてしまうと、実は飼うのがすごく難しい動物だったとか、思っていたのと違ったということになりかねない。小さな動物ですけど、一つの命ですから。


——飼育環境による病気も多いのでしょうか。
多いですね。特に爬虫類や鳥は、あげてはいけないものをあげてしまったり、温度管理が適切でなかったりすることがあります。そのため、診療では、まず「どういう環境で飼われていますか」「どういう食事をあげていますか」と聞きます。薬ではなく、環境の改善だけで治るものもあります。わからないことがあれば、病気になる前に病院に来て、飼い方を相談していただくのがいいと思います。
「救える命を増やしたい」
——手術はどのくらいの頻度で行われているんですか?
ほぼ毎日ですね。今日もさっきカメの手術が終わったところです。昨日はブタの手術がありました。手術がない週はないですね。
——需要がかなりあるということですね。
はい。今は予約がかなり詰まっていて、場合によってはお断りしてしまうこともあります。自分一人で診られるものには限界があります。人が増えれば、断らずに救える命も増えると思います。
だから、うちに新しく入る獣医師にもエキゾチックを専門的に学んでもらって、もっと受け入れを増やしていきたい。病院を大きくすることも考えています。

——今後の展望をお聞かせください。
自分自身も、学会や論文を通じて発信していくことです。自分が経験した珍しい病気、原因不明の病気、治らないといわれている病気、そういったものを研究していき、発信していくことが大事だと考えています。そして新しく入る先生にも学んでもらって、同じように診られる獣医師を増やしていくこと。教育と発信が大事だと思っています。
最近は、エキゾチック専門でやりたいという学生さんの実習希望も増えています。前までは全然いなかったと思いますが、今はすごく増えています。興味を持つ人が増えているのだと思います。
エキゾチックアニマルはまだまだわからないことが多い分野です。でも、獣医師が増えて、症例が増えれば、治る病気も増えていく。わからないことが減っていく。そういう未来を目指して、一つひとつ、できることから進めていきたいですね。
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