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うさぎは野生でどこにいる?日本に生息する4種類の野うさぎとペットとの違いを解説

うさぎは野生でどこにいる?日本に生息する4種類の野うさぎとペットとの違いを解説

日本には、私たちがペットショップで目にするうさぎとはまったく異なる、野生のうさぎたちが暮らしています。本州の山林を駆け抜けるニホンノウサギ、北海道の雪原で真っ白に姿を変えるエゾユキウサギ、高山の岩場でひっそりと暮らすエゾナキウサギ、そして奄美大島でしか見られない「生きた化石」アマミノクロウサギ。それぞれが日本の風土に適応しながら、たくましく生き抜いています。

この記事では、日本に生息する野生のうさぎ4種類について、その生態や特徴、ペットうさぎとの根本的な違い、そして万が一野うさぎを見かけた際に私たちが気をつけるべきことを詳しくお伝えしていきます。

ペットのうさぎと野生のうさぎは「そもそも別の生き物」

ノウサギ属とアナウサギ属は進化の道筋が異なる

ペットとして飼われているネザーランドドワーフやホーランドロップなどのうさぎは、アナウサギ(穴うさぎ)を品種改良したものです。一方、日本の野山に暮らしているのはノウサギ属という、まったく別の系統に属する動物たち。同じ「うさぎ」という名前で呼ばれていても、英語では前者を「Rabbit(ラビット)」、後者を「Hare(ヘア)」と明確に区別しています。

ウサギ目ウサギ科という分類までは同じですが、そこからアナウサギ属とノウサギ属に枝分かれしており、両者の間には交配もできないほどの遺伝的な隔たりがあります。見た目こそ似ていますが、生態や習性、体のつくりまで大きく異なるのです。

生活スタイルの違い

アナウサギは名前のとおり、地面に複雑な巣穴を掘って集団で生活する習性を持っています。巣穴の中には寝室や子育て用の部屋、逃げ道まで設けられており、迷路のような構造になっていることも珍しくありません。ペットのうさぎがケージの床をホリホリするのは、この本能が残っているからです。

対してノウサギは、巣穴を持たず単独で行動します。広大な野山を縄張りとして生活し、繁殖期以外は他の個体とほとんど接触しません。敵に襲われたときも、巣穴に逃げ込むのではなく、その俊敏な脚力を活かして一気に走って逃げます。

体つきの違い

こうした生活スタイルの違いは、体のつくりにも表れています。穴を掘って暮らすアナウサギは前足がしっかり発達しており、丸みを帯びたコンパクトな体型をしています。いわゆる「ぬいぐるみのような」かわいらしいフォルムは、アナウサギならではのもの。

一方のノウサギは、走って逃げるために後ろ足が長く発達しており、全体的にスリムで筋肉質な体つきをしています。耳も大きく、野性的で精悍な印象を与えます。

赤ちゃんの育ち方も違う

繁殖形態にも大きな違いがあります。ペットうさぎの赤ちゃんは生まれたとき目が閉じており、毛もほとんど生えていない状態で、しばらくは母うさぎの世話なしには生きられません。目が開くのは生後10日頃です。

ところがノウサギの赤ちゃんは、生まれてすぐに目が開いており、体には毛が生えそろっています。生後1週間で大人と同じものを食べ始めるほど成長が早いのです。これは、巣穴のない野外で生まれるノウサギが、一刻も早く自力で動けるようにならなければ生き延びられないことに関係しています。

日本に生息する野生のうさぎ4種類

ニホンノウサギ|本州・四国・九州に広く生息

ニホンノウサギは、本州・四国・九州とその周辺の島々に暮らす日本固有種です。日本で最も広く分布している野生のうさぎで、体長は45〜54センチメートル、体重は1.3〜2.5キログラムほど。全身の毛は褐色で、お腹の部分は白くなっています。耳の先端には黒い毛が生えているのが特徴です。

地域によっていくつかの亜種に分けられることもあり、東北地方の個体群は「トウホクノウサギ」、九州や雪の少ない地域の個体群は「キュウシュウノウサギ」と呼ばれます。また、新潟県の佐渡島には「サドノウサギ」、島根県の隠岐島には「オキノウサギ」が生息しており、サドノウサギは準絶滅危惧種に指定されています。

雪の多い地域に暮らすトウホクノウサギやサドノウサギは、冬になると全身の毛が白く変わるという特徴を持っています。これは雪景色の中で天敵から身を隠すための適応で、積雪のない地域のノウサギには見られない現象です。

ニホンノウサギは主に夜行性で、草や木の芽、樹皮などを食べて暮らしています。敵に襲われそうになると、時速40キロメートル以上のスピードで逃走します。雪の上を走るときは、前足を左右交互についたあとに後ろ足で力強く地面を蹴ってジャンプするため、独特の足跡が残ります。

エゾユキウサギ|北海道全域に生息する日本最大の野生うさぎ

エゾユキウサギは、北海道の平野部から亜高山帯まで広い範囲に生息するうさぎです。体長は50〜60センチメートル、体重は1.6〜3.95キログラムにもなり、日本の野生うさぎの中で最大の種です。

以前は「エゾノウサギ」と呼ばれていましたが、研究の結果、本州以南のニホンノウサギの仲間ではなく、ユーラシア大陸北部に広く分布するユキウサギの亜種であることが判明し、現在の名称に変更されました。学名の「Lepus timidus」はラテン語で「臆病なうさぎ」という意味で、その名のとおり非常に警戒心が強く、日中は木陰に身を潜めていることがほとんどです。

エゾユキウサギの最大の特徴は、季節によって毛の色が大きく変わることです。夏は褐色から灰褐色をしていますが、冬になると全身が真っ白に変化し、雪の中ではまったく見分けがつかなくなります。ただし、耳の先端だけは一年を通して黒色のままです。

特筆すべきはその驚異的な走力で、本気で走ると時速80キロメートルに達するともいわれ、日本の哺乳類の中で最速とされています。足の裏には毛が密生しており、雪の上でも滑らず、まるでかんじきを履いているかのように走ることができます。

エゾナキウサギ|北海道の高山に暮らす「氷河期の生き残り」

エゾナキウサギは、北海道の大雪山系、日高山脈、夕張山地などの高山地帯にのみ生息する、ちょっと変わったうさぎです。体重は60〜150グラム、体長は10〜20センチメートルと、手のひらに乗るほどの小ささで、一見するとネズミのように見えます。耳も2センチメートルほどしかなく、いわゆる「うさぎらしい」長い耳はありません。

エゾナキウサギはナキウサギ科に属しており、ノウサギとは異なる系統のうさぎです。ユーラシア大陸北部に広く分布するキタナキウサギの亜種で、約1万年以上前の氷河期にシベリアから北海道へ渡ってきたと考えられています。氷河期が終わって気温が上昇すると、暑さに弱いエゾナキウサギは涼しい高山地帯へと移り住み、そのまま現在に至るまで細々と生き延びてきました。そのため「氷河期の生き残り」とも呼ばれています。

生息地は「ガレ場」と呼ばれる、大きな岩が積み重なった場所です。岩の下に広がる洞窟のような空間を巣として利用し、夏でも冷たい風が吹き出す「風穴」の近くで暮らしています。「ピッ!」「キチー!」という独特の高い鳴き声を発することから「鳴きうさぎ」の名がつきました。

現在は準絶滅危惧種に指定されており、気候変動による気温上昇で生息域がさらに狭められる可能性が心配されています。

アマミノクロウサギ|奄美大島と徳之島だけに生息する「生きた化石」

アマミノクロウサギは、鹿児島県の奄美大島と徳之島という2つの島にのみ生息する、世界でも類を見ない希少なうさぎです。1属1種の日本固有種で、約300万年〜500万年前からほとんど姿を変えずに生き続けてきたことから「生きた化石」とも呼ばれています。

体長は41〜51センチメートル、体重は1.3〜2.7キログラム。その名のとおり全身が黒褐色の毛で覆われており、お腹は少し赤みがかっています。一般的なうさぎのイメージとは異なり、耳は4センチメートルほどと短く、足も短めです。その代わり、巣穴を掘るための爪は1.5センチメートルもあり、非常によく発達しています。

アマミノクロウサギは主にシイやカシの常緑広葉樹林に生息し、夜行性で単独行動をします。樹洞や岩穴、大木の根元に巣穴を掘って暮らし、シイの実やワラビの若芽、草などを食べています。

子育ての方法がとても独特で、繁殖用の巣穴は生活用とは別に掘られます。母うさぎは赤ちゃんを産むと、ハブなどの天敵から守るために巣穴の入口を土やコケで塞いでしまい、空気穴だけを残して完全に隠してしまいます。そして1〜2日おきに巣穴を訪れて授乳し、終わるとまた塞いで立ち去る、ということを繰り返すのです。

1963年に国の特別天然記念物に指定され、環境省のレッドリストでは絶滅危惧IB類に分類されています。かつてはハブ駆除のために導入されたマングースによる捕食で個体数が激減しましたが、近年はマングース駆除事業の成果もあり、回復傾向にあるとされています。2021年時点の推定では、奄美大島に約1万〜3万4千頭、徳之島に約1,500〜5,000頭が生息していると考えられています。

野生のうさぎを見かけたときの注意点

触らない・連れ帰らないが鉄則

登山やハイキングの途中で野生のうさぎを見かけると、そのかわいらしさについ近づきたくなるかもしれません。しかし、野生のうさぎに出会ったときは「触らない」「連れ帰らない」が鉄則です。

まず、野生動物を許可なく捕獲・飼育することは鳥獣保護管理法によって禁じられています。違反すると罰則の対象になります。たとえ怪我をしているように見えても、勝手に保護するのではなく、まずは各都道府県や政令指定都市の鳥獣保護担当課に連絡して指示を仰ぐのが適切な対応です。

また、野うさぎの子どもが一羽でいるのを見かけても、「親とはぐれた」と考えて保護しようとするのは早計です。ノウサギは本能的に親子がずっと一緒にいるわけではありません。肉食動物に狙われやすいうさぎは、固まって行動しているとかえって捕食されるリスクが高まるため、母うさぎは意図的に子どもから離れて行動しています。たまたま親うさぎがいなかっただけで、必ず戻ってきますので、そっとしておいてあげてください。

野兎病(やとびょう)の感染リスク

野生のうさぎに触ることを避けるべきもう一つの理由が、野兎病という感染症のリスクです。野兎病は、ノウサギやマダニの間で感染する細菌によって引き起こされる急性の発熱性疾患で、人間にも感染することがあります。

野兎病の原因菌は感染力がかなり強く、感染すると発熱、悪寒、吐き気、感染部位の化膿などの症状が現れます。主に北半球の北緯30度以北で発生しており、日本国内でも散発的に報告されています。

もし野生のうさぎに触れてしまった後に体調が悪くなった場合は、速やかに医療機関を受診してください。

野生動物には餌を与えない

野生のうさぎを見かけたとき、「お腹を空かせているかもしれない」と餌を与えたくなる気持ちもわかります。しかし、野生動物への餌付けは厳禁です。

人間が与える食べ物は、野生動物の本来の食性とは異なることがほとんどです。特に仔うさぎは炭水化物を分解する消化機能が未発達で、人工的な餌を与えると腸内細菌のバランスを崩し、下痢などの消化器症状で命を落とすこともあります。また、餌付けによって人間への警戒心が薄れると、交通事故に遭いやすくなるなどの弊害も生じます。

野生のうさぎは、野生の中で生きるための術を本能として持っています。彼らの生態系を守るためにも、遠くから静かに見守ることが最善の行動です。

まとめ

日本に生息する野生のうさぎは、ニホンノウサギ、エゾユキウサギ、エゾナキウサギ、アマミノクロウサギの4種類。それぞれが日本の多様な自然環境に適応しながら、独自の進化を遂げてきました。ペットのうさぎとは分類上も異なる「別の生き物」であり、生活スタイルや体のつくり、子育ての方法まで大きな違いがあります。

野生のうさぎに出会えることは滅多にありませんが、もし見かけることがあれば、触ったり餌を与えたりせず、静かに遠くから観察するにとどめてください。野兎病などの感染リスクもあるため、自分自身を守るためにも、うさぎを守るためにも、適切な距離を保つことが大切です。

気候変動や生息地の減少によって、エゾナキウサギやアマミノクロウサギのように数を減らしている種もいます。野生のうさぎたちがこれからも日本の自然の中で暮らし続けられるよう、私たち一人ひとりが自然環境への意識を持って行動していきたいものです。

記事の執筆者

Minima編集部

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なお編集部のペットはクレステッドモルモット。実体験に基づいた、確かな情報をお伝えしていきます。

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