ハリネズミを飼い始めると、「砂浴びはさせたほうがいいの?」という疑問にぶつかる方は多いはずです。結論としては、砂浴びはすべてのハリネズミに必須のケアではありません。ただし、砂浴びを好む個体にとっては、体についた汚れや余分な皮脂を落とす補助的なケアとして役立つことがあります。
一方で、砂の種類や頻度を間違えると皮膚トラブルの原因にもなるため、正しい知識を持って取り入れる必要があります。砂浴びに興味を示さない個体には無理に行わず、別の方法で清潔を保つことも十分に可能です。この記事では、砂浴びの目的や具体的なやり方、砂の選び方、頻度の目安、嫌がる場合の対処法まで、順を追って解説していきます。
ハリネズミが砂浴びをする理由

砂浴びには、皮膚と針の清潔を補助的に保つという目的があります。ハリネズミの背中にはおよそ5,000〜7,000本の針が生えており、その根元には皮脂や汚れがたまりやすい構造になっています。ケージ内の床材のかけらやフードの食べかす、排泄物の微粒子などが針の間に入り込むと、皮膚の炎症やダニの繁殖を招くことがあります。
日本で飼育されるハリネズミの多くはヨツユビハリネズミというアフリカ原産の種です。乾燥地帯に適応した種であることから、乾いた素材の上で体表の汚れを落とすような行動が見られることがあります。ただし、砂浴びがこの種の典型的な習性として広く確認されているわけではなく、個体差や飼育環境による違いも大きい点は押さえておく必要があります。
また、ハリネズミは水に濡れることにストレスを感じやすい動物です。お風呂に入れると体を丸めて動かなくなったり、激しく暴れたりする個体も少なくありません。頻繁な入浴は皮膚の乾燥も招きます。そのため、基本的な衛生管理はケージの清掃と床材の交換を中心に行い、体が汚れたときに足湯や部分洗いで対応するのが基本の考え方です。
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ハリネズミの砂浴びに使う砂の選び方

砂浴び用の砂は、粒子が細かく角のないもので、粉塵が舞いにくいものを選ぶのが基本です。ハリネズミの皮膚は見た目の印象よりも薄くデリケートなので、粒子が粗い砂や角のある砂を使うと皮膚を傷つけてしまいます。
おすすめの砂の種類
ハリネズミの砂浴びに適しているのは、天然ゼオライト系や珪砂(シリカ)系の製品です。これらの砂は吸湿性が高く、皮脂を効率よく吸着してくれる特性を持っています。購入時には袋を軽く振ってみて、粉塵が多く舞い上がるものは避けると、呼吸器や目への刺激を減らせます。
一方で、ハムスター用のトイレ砂や固まるタイプの猫砂は使用を避けてください。固まるタイプの砂はハリネズミの目や鼻、口に付着した場合に粘膜を刺激する恐れがあります。また、香料が添加された砂もハリネズミの嗅覚には刺激が強すぎるため不向きです。パッケージに「無香料」「天然素材100%」と表記されているものを選ぶと安心です。
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砂の粒子サイズの目安
粒子のサイズは、パウダー状に細かすぎず、かといって粗すぎないものが適しています。パウダー状の砂は空気中に粉塵として舞い上がりやすく、ハリネズミが吸い込んで呼吸器や目を刺激するリスクがあります。逆に粒が粗すぎると汚れの吸着力が落ち、皮膚を傷つける恐れもあります。購入前にパッケージの成分表示や粒度の記載を確認するほか、少量を手に取って息を吹きかけてみて粉塵の舞い具合をチェックすると、砂選びで失敗しにくくなります。
砂浴びの具体的なやり方と手順

砂浴びの手順はシンプルで、適切な容器に砂を入れてハリネズミを中に入れるだけです。ただし、容器のサイズや砂の量、観察の仕方にはいくつかのポイントがあります。
容器の選び方
容器はハリネズミの体がすっぽり入り、なおかつ体を回転させられる程度の広さがあるものを用意します。目安としては、直径25〜30cm程度、深さ10cm前後のプラスチック製の容器やガラス製のボウルが使いやすいです。ただし体の大きさには個体差があるため、飼っているハリネズミが窮屈そうにしていないか、実際に入れて確認してみてください。
容器の縁が高すぎるとハリネズミが自力で出入りできず、低すぎると砂が周囲に飛び散ります。縁の高さは8〜12cm程度を目安に、ハリネズミが出入りしやすいものを選びます。容器の一部が低くなったデザインのものを選ぶか、小さなスロープを取り付けてあげると、ハリネズミが自分のタイミングで出入りできます。
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砂の量と入れ方
容器の底に砂を2〜3cmの厚さで均一に敷き詰めます。砂が薄すぎるとハリネズミが体をこすりつけたときに容器の底に直接触れてしまい、砂浴びの効果が半減します。逆に厚すぎると砂の消費量が増えるだけでなく、ハリネズミが砂に潜り込んで鼻や目に砂が入りやすくなります。2〜3cmという厚さは、ハリネズミが背中を砂にこすりつけるのにちょうどよい深さの目安です。
砂浴びの時間と見守り方
初めて砂浴びをさせる場合は、数分程度の短い時間から始めて様子を観察します。慣れてきた個体であれば10〜15分程度を目安にしますが、時間はあくまで参考値です。ハリネズミを容器に入れたら、最初は警戒して丸まっていることもありますが、しばらくすると砂の感触を確かめるように歩き始め、やがて体を横に倒してゴロゴロと転がったり、前足で砂を背中にかけたりする動作が見られます。この姿がハリネズミの砂浴びの典型的な様子です。興味を示さずに出たがる場合は無理に続けず、早めに切り上げます。
砂浴び中は飼い主の目が届く場所で行いましょう。容器の中で排泄してしまうこともあるため、排泄物が見えたらすぐに取り除くか、砂浴びを中断して砂を交換します。汚れた砂で体をこすりつけてしまっては逆効果だからです。また、砂を誤食する個体もいるため、口元の動きにも注意を払います。
砂を食べる行動が見られた場合は砂浴びを中止し、繰り返すようであればエキゾチックアニマル対応の動物病院で相談してください。異物摂取による消化管トラブルや、栄養面の問題が隠れている可能性もあります。
砂浴びの適切な頻度と砂の交換タイミング

砂浴びを好む個体の場合、頻度の目安は週1〜数回程度です。ただし、砂浴び自体が不要な個体もいるため、「必ず週に何回やらなければならない」というものではありません。やりすぎると皮膚に必要な油分まで奪ってしまい、乾燥やフケの原因になります。まずは週1回から始めて皮膚の状態を観察し、問題がなければ個体の反応に応じて回数を調整するのが安全な進め方です。
季節によって頻度を調整するのも効果的です。夏場は皮脂の分泌が増えるため回数をやや増やし、冬場は皮膚が乾燥しやすいため回数を減らすといった調整が理にかなっています。ハリネズミの皮膚の状態を日頃から観察し、フケが多いと感じたら頻度を下げ、針の間に汚れが目立つようなら頻度を上げるという柔軟な対応が求められます。
砂の交換については、1回使用するごとに全量を新しい砂に入れ替えるのが衛生面では理想的です。コスト面が気になる場合は、使用後にふるいにかけて大きなゴミや排泄物を取り除き、2〜3回の使用で全量交換するという方法もあります。ただし、砂の吸湿力は使用を重ねるごとに落ちていくため、見た目がきれいでも定期的な全量交換は欠かせません。
砂浴びを嫌がるハリネズミへの対処法
すべてのハリネズミが最初から砂浴びを好むわけではありません。初めて砂を見る個体は警戒して容器に近づかなかったり、中に入れても丸まったまま動かなかったりすることがあります。こうした場合に無理やり砂の中で転がそうとすると、砂浴びそのものに恐怖心を持ってしまう可能性があるため、段階を踏んで慣らしていくことが必要です。
慣らし方のステップ
まずはケージの中に砂を入れた容器を置いておくだけの状態から始めます。ハリネズミは夜行性なので、夜間の活動時間に自分から容器に近づいて匂いを嗅いだり、足を踏み入れたりする行動が見られることがあります。数日間は無理に入れようとせず、容器の存在に慣れさせることを優先します。
次のステップとして、ハリネズミが普段好んで食べるおやつ(乾燥ミルワームなど)を砂の上に数粒置いてみます。おやつを食べるために容器に入る経験を繰り返すうちに、「この容器は安全な場所だ」という認識が生まれやすくなります。容器の中で過ごす時間が徐々に長くなってきたら、自然と砂の感触に興味を示して体をこすりつける動作が出てくることが多いです。
それでも嫌がる場合
2〜3週間かけて慣らしても砂浴びをしない個体もいます。個体差として砂浴びを好まないハリネズミは一定数存在するため、無理強いは禁物です。そうした個体には、ぬるま湯(35〜37度程度)での足湯や、濡らして固く絞ったガーゼで体を拭くといった方法で清潔を保つことができます。針の間に汚れが詰まっている場合は、柔らかい歯ブラシで力を入れずに短時間だけ汚れをかき出す方法もありますが、皮膚を傷つけるリスクがあるため慎重に行ってください。赤みや出血が見られた場合はすぐに中止し、動物病院で診てもらうようにします。
また、砂の種類を変えると反応が変わることもあります。粒子の大きさや質感の異なる砂を2〜3種類試してみると、特定の砂にだけ興味を示すケースが報告されています。ゼオライト系の砂では反応しなかったのに、珪砂(シリカ)系の砂に変えたら喜んで転がり始めたという例もあるため、1種類で諦めずに別の砂を試す価値はあります。
砂浴び中・砂浴び後に気をつけたいこと

砂浴びは基本的に安全なケア方法ですが、いくつかの注意点を知っておくとトラブルを未然に防げます。
目や耳への砂の侵入
ハリネズミが勢いよく砂を浴びると、細かい粒子が目や耳の中に入ることがあります。砂浴び後にハリネズミが頻繁に目をこする動作をしていたり、耳を気にして後ろ足で掻いていたりする場合は、砂が入っている可能性があります。目の周りに砂が付着しているときは、ぬるま湯で湿らせた綿棒やガーゼで優しく拭き取ります。耳の中に砂が入った疑いがある場合は、自己判断で綿棒を耳の奥に入れず、動物病院で診てもらうのが安全です。
皮膚の乾燥サイン
砂浴びの後に皮膚が白っぽくカサカサしていたり、フケの量が増えていたりする場合は、砂浴びの頻度が多すぎる可能性があります。ハリネズミの皮膚には適度な油分が必要で、砂浴びによって油分が過剰に除去されると乾燥が進みます。こうしたサインが見られたら、まず砂浴びの間隔を空けて様子を観察します。砂の種類を見直すことで改善する場合もあります。
頻度や砂を見直しても乾燥・フケが改善しない場合や、赤み・脱毛・かゆみ・かさぶた・異臭が見られる場合は、ダニや真菌などの皮膚疾患が隠れている可能性があります。保湿剤やオイルの使用を自己判断で行うと、症状を悪化させたり、ハリネズミが舐めて体調を崩したりするリスクがあるため、エキゾチックアニマル対応の獣医師に相談してから対応を決めてください。
砂浴び後の掃除
砂浴びが終わったら、ハリネズミの体に残った砂を軽く払い落としてからケージに戻しましょう。針の間に砂が残っていると、ケージ内の寝床やフリースに砂が散らばり、寝ているときに鼻や目に入るリスクが高まります。柔らかい毛のブラシで背中を数回なでるようにすると、針の間の砂が落ちやすくなります。容器に残った砂はフンや尿で汚れていないか確認し、使い回す場合はふるいにかけて異物を取り除いてから保管しましょう。
まとめ
ハリネズミの砂浴びは、針や皮膚の清潔を補助的に保つためのケア方法です。すべての個体に必須というわけではなく、砂浴びを好む個体に対して取り入れるものとして捉えてください。基本の衛生管理はケージの清掃と床材の交換が中心であり、砂浴びはそれらを補う位置づけです。
ハリネズミ一匹一匹に個性があるように、砂浴びの好みや適切な頻度にも個体差があります。日々の観察を通じて、飼っているハリネズミに合ったペースを見つけていくことが、健康で快適な暮らしにつながります。