ハムスターにほうれん草を与えてよいかどうか、結論から言えば「少量であれば与えられるが、積極的に選ぶ必要はない野菜」です。ほうれん草にはシュウ酸というハムスターの体に負担をかける成分が含まれており、与えるなら茹でこぼしでシュウ酸を減らし、少量かつ低頻度にとどめるのが前提になります。
この記事では、ほうれん草に含まれる栄養素やリスク、与える場合の下処理方法まで、飼育の現場で役立つ情報をまとめました。

ハムスターにほうれん草を与えてよいかどうか、結論から言えば「少量であれば与えられるが、積極的に選ぶ必要はない野菜」です。ほうれん草にはシュウ酸というハムスターの体に負担をかける成分が含まれており、与えるなら茹でこぼしでシュウ酸を減らし、少量かつ低頻度にとどめるのが前提になります。
この記事では、ほうれん草に含まれる栄養素やリスク、与える場合の下処理方法まで、飼育の現場で役立つ情報をまとめました。


ほうれん草はビタミンやミネラルが豊富な緑黄色野菜で、ハムスターにとって有益な栄養素も含まれています。ただし、その栄養を活かすには注意が必要で、メリットとリスクの両面を理解しておく必要があります。
日本食品標準成分表2020年版(八訂)によると、生のほうれん草100gあたりには、β-カロテンが約4200μg、ビタミンCが約35mg、鉄分が約2.0mg含まれています。β-カロテンは体内でビタミンAに変換され、皮膚や粘膜の健康維持に関わります。ビタミンCは抗酸化作用を持ち、鉄分は血液をつくるうえで欠かせない栄養素です。なお、茹でると水溶性のビタミンCなどは減少するため、調理後の数値は生の状態とは異なります。
人間にとっては「栄養の優等生」と呼ばれるほうれん草ですが、ハムスターの体はヒトとは異なるため、そのまま同じ感覚で与えるわけにはいきません。
ハムスターは体重が30〜50g程度(ジャンガリアンハムスターの場合。個体差があります)と小さく、1日に必要な栄養素の量もごくわずかです。主食であるペレットには必要なビタミンやミネラルがバランスよく配合されているため、ほうれん草から特定の栄養素を補給しなければならない場面はほとんどありません。
野菜はあくまで副食であり、水分補給や食事の楽しみを広げる役割として位置づけるのが適切です。ほうれん草の栄養価が高いからといって、それだけを理由に積極的に選ぶ根拠にはなりにくいのが実情です。


ハムスターにほうれん草を与えるうえで最も気をつけたいのが、シュウ酸という成分です。シュウ酸はカルシウムと結びついてシュウ酸カルシウムとなり、尿路結石の原因になる可能性があります。
シュウ酸は植物が自らを守るためにつくり出す有機酸の一種で、ほうれん草には生100gあたりおおむね数百〜1000mg程度含まれるとされ、野菜のなかでも突出して多い部類に入ります(含有量は品種や栽培条件、測定方法によって幅があります)。人間がほうれん草を食べたときに感じる独特のえぐみやギシギシとした歯触りは、このシュウ酸によるものです。人間であれば体内で処理できる量でも、体重がわずか数十グラムしかないハムスターにとっては、体への影響が相対的に大きくなります。
シュウ酸がカルシウムと結合してできるシュウ酸カルシウムは、腎臓や膀胱に蓄積すると結石となり、排尿時の痛みや血尿、尿路の閉塞を引き起こすことがあります。ハムスターは体が小さいぶん、結石ができたときの影響が深刻になりやすく、外科的な処置が難しいケースもあります。尿路結石は初期症状がわかりにくく、飼い主が気づいたときにはすでに進行していることも珍しくありません。ほうれん草を日常的に与え続けることは、このリスクを不必要に高める行為といえます。
ほうれん草には硝酸塩も比較的多く含まれています。硝酸塩は体内で亜硝酸塩に変換されると、血液中のヘモグロビンと結合して酸素を運ぶ機能を低下させることが知られています。ハムスターが微量を摂取した程度で直ちに問題になる可能性は低いものの、シュウ酸と合わせて考えると、硝酸塩の多い野菜は与えすぎないよう意識しておくと安心です。

ほうれん草はリスクがあるとはいえ、「絶対に与えてはいけない」食材ではありません。下処理と適切な量・頻度を守れば、おやつとして少量与えることは可能です。
ほうれん草のシュウ酸は水溶性のため、茹でることで減らせます。具体的には、沸騰したお湯で1〜2分ほど茹でたあと、流水で十分にさらすという手順です。この「茹でこぼし」によってシュウ酸の量を減少させることができます。ただし、減少率は茹で時間や湯量、さらし時間によって変わるため、「茹でれば安全」と過信せず、与える量自体を少なくすることが基本の考え方です。
与えるなら加熱してシュウ酸を減らすのがより安全で、生のまま与えるよりもリスクを下げられます。茹でたあとは水気を軽く絞り、ハムスターが食べやすい大きさに刻みます。
1回に与える量は、刻んで小さじ1/2〜1程度を目安に、ハムスターの体格に応じて調整します。ゴールデンハムスターのように体の大きな種でもやや多め程度にとどめ、ジャンガリアンなどの小型種はさらに少量から始めます。初めて与えるときは、目安量よりも少ない量からスタートし、体調に変化がないか確認してから量を調整するのが安全です。頻度は週に1回以下が無難で、毎日の野菜ローテーションにほうれん草を組み込む必要はありません。
与えたあとは、食べ残しがケージ内に放置されないよう、30分〜1時間を目安に回収します。ハムスターは頬袋に食べ物を溜め込む習性があるため、巣箱のなかに野菜を持ち帰っていないかも確認すると安心です。傷んだ野菜は細菌の繁殖源になり、下痢の原因になります。
人間用に味付けしたほうれん草のおひたしやソテーは、塩分や油分がハムスターの体に負担をかけるため与えてはいけません。バターや醤油で調理したものはもちろん、冷凍ほうれん草であっても塩が添加されている製品があるため、成分表示を確認する必要があります。ハムスターに与える分は、味付けなしで茹でたものを別に取り分けるのが基本です。
ハムスターにほうれん草を与えること自体は禁止ではありませんが、シュウ酸の含有量が多いため、日常的に与える野菜としては適していません。与える場合は、茹でこぼしでシュウ酸を減らし、刻んで小さじ1/2〜1程度の少量を週1回以下の頻度にとどめます。
ハムスターの食事の基本はペレットであり、野菜はあくまで副食です。新しい食材を試すときは少量から始め、体調の変化がないか観察する習慣をつけることで、日々の食事がハムスターの健康を支える土台になります。冷蔵庫のほうれん草を前にして迷ったときは、この記事の内容を思い出していただければ幸いです。



