ハムスターの小さな耳には、感情の変化や体調の異変が現れることがあります。ピンと立てたり、ペタンと寝かせたり、片方だけ傾けたり。その動きの一つひとつに、ハムスターなりの理由があります。また、耳にかさぶたや腫れが見られた場合は、皮膚炎や外耳炎といった病気が隠れている可能性も考えられます。
この記事では、ハムスターの耳の基本的な構造から、動きで読み取れる感情の傾向、注意すべき病気の症状、そして日常のケアまでを順を追って解説します。

ハムスターの小さな耳には、感情の変化や体調の異変が現れることがあります。ピンと立てたり、ペタンと寝かせたり、片方だけ傾けたり。その動きの一つひとつに、ハムスターなりの理由があります。また、耳にかさぶたや腫れが見られた場合は、皮膚炎や外耳炎といった病気が隠れている可能性も考えられます。
この記事では、ハムスターの耳の基本的な構造から、動きで読み取れる感情の傾向、注意すべき病気の症状、そして日常のケアまでを順を追って解説します。


ハムスターの耳は人間の耳と基本構造こそ似ていますが、聴覚の性能には大きな差があります。ハムスターは人間より高い周波数帯まで聞くことができ、20kHzを超える高周波(超音波)も感知できるとされています。上限は種や個体、研究によって差がありますが、この鋭い聴覚は野生下で天敵の接近を察知するために発達したと考えられています。
外耳にあたる耳介(じかい)は薄い皮膚で覆われ、内部には細かな血管が網目状に走っています。この血管は体温調節にも関与していると考えられており、暑い環境では血管が拡張して熱を逃がし、寒い環境では収縮して体温の低下を防ぐ働きをします。ハムスターの耳が薄くて光に透けて見えるのは、皮膚が薄く被毛が少ないためです。
耳の形や大きさは種類(種)によって傾向が異なります。ゴールデンハムスター(シリアンハムスター)は丸みを帯びたやや大きめの耳を持ち、ジャンガリアンハムスターやキャンベルハムスターは体に対して小ぶりで三角形に近い耳をしています。ロボロフスキーハムスターは頭の上にちょこんと乗るような小さな耳が特徴的です。飼っている種類の「通常の耳の状態」を把握しておくと、異変に気づきやすくなります。
また、ハムスターは左右の耳を独立して動かすことができます。片方の耳だけを音源の方向に向けるといった器用な動きが可能で、これは音の発生源を正確に特定するための能力です。ケージの外から聞こえる足音やドアの開閉音に対して、片耳だけがピクッと動く姿を見たことがある方も多いかもしれません。


ハムスターは犬のように尻尾を振ったり、猫のように喉を鳴らしたりはしませんが、耳の動きに感情の傾向が現れることがあります。日々の観察を続けると、耳の角度や動き方にいくつかのパターンが見えてきます。ただし、耳の動きだけで気持ちを断定するのは難しいため、体全体の姿勢や行動と合わせて判断する意識を持ってください。
両耳をまっすぐ上に立てている状態は、周囲の音に集中している「警戒モード」の傾向があります。新しい環境に置かれた直後や、聞き慣れない音がしたときによく見られます。体はやや前傾姿勢になり、ヒゲも前方に広がっていることが多く、全身で情報を集めている様子がうかがえます。
お迎え直後のハムスターがこの状態を頻繁に見せるのは、まだ環境に慣れていないためです。数日から1週間ほど静かな環境で過ごさせると、徐々に耳の力が抜けてリラックスした状態が増えていく傾向があります。
耳をペタンと後方に倒している状態には、2つの意味が考えられます。1つはリラックスしている場合で、毛づくろいの最中や眠りに入る直前に見られます。体全体が脱力していて、目が細くなっていれば安心している可能性が高いです。
もう1つは恐怖や不快感を覚えている場合です。体を低くして丸まっている、歯をカチカチ鳴らしている、あるいは「ジジッ」「キッ」といった鳴き声を出しているときは、ストレスを感じている状態と考えられます。耳が寝ているときは、体全体の姿勢や鳴き声と合わせて総合的に読み取ることが求められます。
片方の耳だけがピクピクと動いている場合は、特定の方向から聞こえる音を探っている状態です。半分眠りながらも周囲を警戒しているときに多く見られ、ハムスターが本来夜行性の動物であることを思い出させてくれます。飼い主が近づく足音に片耳だけ反応し、もう片方は寝たまま——そんな姿は、飼い主の存在にある程度慣れてきたサインの一つといえます。
耳が細かくプルプルと震えている場合、寒さ・緊張・興奮など複数の要因が考えられます。ハムスターの飼育適温は20度から25度前後が目安です(種類や個体差があります)。室温が18度を下回るような環境で、体を丸めてじっとしている、動きが鈍くなっているといった様子が重なる場合は、ケージの置き場所や室温を見直してください。
室温に問題がなく、耳の震えが一時的であれば、興奮や緊張による反応の可能性があります。震えが長時間続く、ふらつく、食欲が落ちているといった変化がある場合は、早めにエキゾチックアニマル対応の動物病院を受診してください。

ハムスターの耳に普段と異なる見た目の変化が現れた場合は、病気のサインである可能性があります。早い段階で気づいて動物病院を受診することが、症状の悪化を防ぐ鍵になります。
特に以下のような症状が見られた場合は、早急にエキゾチックアニマル対応の動物病院を受診してください。
これらは中耳炎や神経症状など、緊急性の高い病気が隠れている可能性があります。
耳のトラブルとして代表的なのが外耳炎です。細菌やカビ(真菌)の感染によって耳の入り口から鼓膜までの外耳道に炎症が起こる病気で、以下のような症状が見られます。
原因としては、ケージ内の衛生状態の悪化が大きく関わっています。床材の交換を怠ると細菌が繁殖しやすくなり、湿度が高い環境ではカビも発生しやすくなります。
治療は動物病院での耳洗浄と、抗生物質や抗真菌薬の投与が基本です。治療期間は原因や重症度によって異なるため、獣医師の指示に従って通院・投薬を続けてください。放置すると中耳炎に進行する恐れがあるため、気になる症状があれば早めの受診をおすすめします。
耳やその周辺にダニが寄生することで、激しいかゆみを伴う皮膚炎が起こることがあります。ハムスターが後ろ足で耳を掻きむしったり、ケージの壁や床材に耳をこすりつけたりする行動が目立ちます。耳の内側に黒っぽいカサカサした汚れがたまることもあります。
ハムスターの耳に症状が出るダニには疥癬(ヒゼンダニ)などが含まれますが、原因の特定には動物病院での検査が必要です。放置すると掻き傷から二次的な細菌感染を引き起こすことがあります。
多頭飼いの場合は他の個体にも感染が広がるリスクがあるため、症状が見られた個体は速やかに隔離してください。治療には駆虫薬の投与が行われ、同時にケージや用品の消毒も必要になります。
ハムスターは腫瘍ができやすい動物で、耳にも良性・悪性の腫瘍が発生することがあります。耳介の表面や付け根にしこり、イボ状の膨らみが見られた場合は腫瘍の可能性があります。1歳半を超えた高齢のハムスターで発生頻度が上がる傾向にあり、小さなうちは無症状でも、大きくなると出血や壊死を起こすことがあります。
腫瘍の良悪性は見た目だけでは判断できないため、しこりに気づいた時点で動物病院を受診してください。切除手術が可能な場合もありますが、ハムスターの体の小ささや麻酔のリスクを考慮し、獣医師と相談して治療方針を決めることになります。
耳の周囲やふちにかさぶたができたり、毛が抜けて地肌が見えたりしている場合は、皮膚のトラブルが起きている可能性があります。原因としては疥癬、真菌感染、細菌感染、アレルギー、外傷など幅広く、見た目だけでは特定できないため、動物病院での検査が必要です。
床材に使われている針葉樹チップ(スギ、ヒノキ、マツなど)の芳香成分が皮膚への刺激となり、トラブルを引き起こすケースも報告されています。床材を広葉樹チップや紙製の床材に変更することで症状が改善する場合がありますが、自己判断で原因を特定するのは難しいため、皮膚の状態が悪化する前に獣医師の診察を受けることをおすすめします。

ハムスターの耳のトラブルは、日々の環境管理と観察によって予防できる部分が少なくありません。特別な道具や技術は必要なく、毎日の世話の中に「耳を見る」習慣を組み込むだけで十分です。
外耳炎やダニの予防には、ケージ内の衛生管理が直結します。基本的なケアの流れは以下のとおりです。
交換頻度はケージのサイズ、飼育頭数、床材の種類、トイレの習慣によって変わります。「汚れや臭いが気になったら交換する」を基本の判断基準にしてください。洗った後は完全に乾燥させてから床材を敷きます。湿気が残った状態で使用すると、カビの温床になります。
ハムスターに適した環境は、室温20度から25度前後、湿度40%から60%程度が目安です(種類や個体差があります)。26度以上が続く場合は暑さ対策を検討してください。
日本の夏場は湿度が70%を超える日も珍しくなく、高湿度環境では耳の中に雑菌が繁殖しやすくなります。エアコンや除湿機を活用して、ケージ周辺の温湿度を安定させてください。冬場は逆に乾燥しすぎると皮膚のバリア機能が低下するため、加湿器で湿度を40%以上に保つことが望ましいです。
ハムスターの耳を健康に保つうえで効果的なのは、日々の観察です。エサを与えるタイミングやケージの掃除のときに、耳の色、形、左右対称かどうかを目視で確認する習慣をつけてください。健康な耳はうっすらピンク色で、表面に傷やかさぶたがなく、左右の大きさや形がほぼ同じです。
確認したいポイントは以下の3つです。
耳のふちが欠けている場合、外傷(同居個体との喧嘩など)のこともあれば、皮膚病が原因のこともあります。出血や腫れが見られる、耳を掻く行動が続くといった場合は受診してください。
異変に気づいたら、まず写真を撮っておくと、動物病院で獣医師に症状を伝える際に役立ちます。日付とともに記録しておけば、症状の進行具合も把握しやすくなります。
犬や猫では定期的な耳掃除が推奨されることがありますが、健康なハムスターの耳掃除は飼い主が行う必要はありません。ハムスターは自分で毛づくろいをする際に耳の手入れも行っており、人間が綿棒などで耳の中を触ると、かえって外耳道を傷つけてしまうリスクがあります。耳垢が目立つ、においがするといった場合は、自分で処置しようとせず動物病院で適切な処置を受けてください。

ここでは、ハムスターの耳についてもう少し深く知るための情報をお伝えします。飼育に直接関わる知識から、観察がより楽しくなるトリビアまで、知っておくとハムスターへの理解が深まります。
同じ種類のハムスターを複数飼育している場合、耳の色素パターンが個体識別の手がかりになることがあります。ジャンガリアンハムスターのノーマルカラーでは、耳のふちに沿った黒い色素の濃さや範囲が個体ごとに微妙に異なります。模様だけでは見分けにくい個体同士でも、耳をよく観察すると違いが見つかることがあります。
ハムスターが深い眠りに入ると、耳は完全に倒れて頭に張り付いたような状態になります。これは筋肉がリラックスしているためで、いわば耳の「省エネモード」です。一方、浅い眠りのときは耳が半立ちの状態を保っており、周囲の音に反応できる態勢を維持しています。巣箱の中で丸くなって眠っているハムスターの耳が完全に寝ていたら、安心して熟睡している状態の目安になります。
ハムスターの聴覚が人間よりはるかに鋭いことを踏まえると、ケージの設置場所には配慮が必要です。テレビやスピーカーの近く、ドアの開閉音が響く場所、洗濯機など家電の振動が伝わる場所は避けてください。人間にとっては気にならない程度の音でも、ハムスターにとっては大きなストレス源になり得ます。特に超音波を発するネズミ除けの装置は、ハムスターにも影響を与えるため、同じ部屋での使用は控えてください。
ハムスターの耳は、感情の傾向や健康状態の変化が現れやすい部位です。ピンと立った耳は警戒を、ペタンと倒れた耳はリラックスや恐怖を示す傾向がありますが、耳の動きだけで判断するのではなく、体全体の姿勢や鳴き声と合わせて観察することが求められます。
病気の面では、外耳炎、ダニによる皮膚炎、腫瘍、アレルギーなどが耳に症状を現すことがあります。耳を掻く頻度が増えた、頭を傾けている、かさぶたや腫れがある、耳から臭いがするといった変化は受診のサインです。特に斜頸やふらつきが見られる場合は、早急にエキゾチックアニマル対応の動物病院を受診してください。
日々のケージ清掃と温湿度管理、そしてエサやりのついでに耳を目視で確認する習慣が、トラブルの早期発見につながります。今日のエサやりの時間から、少しだけ耳に注目してみてください。今まで気づかなかった小さな変化が見えてくるかもしれません。



