ハムスターを飼育していると、ショッキングな場面に遭遇することがあります。それが共食いという現象です。かわいらしい姿からは想像しにくいかもしれませんが、特定の条件下では実際に起こりうる行動なのです。この記事では、なぜハムスターが共食いをしてしまうのか、そしてどうすれば防げるのかを詳しく解説していきます。

ハムスターの共食いはなぜ起こる?原因と予防法を詳しく解説
ハムスターの共食いが起こる主な原因

ストレスによる異常行動
ハムスターが共食いに至る最も大きな要因は過度なストレスです。狭いケージでの飼育、頻繁な環境の変化、騒音や振動など、様々な要因がハムスターにストレスを与えます。
野生のハムスターは単独で生活する動物です。そのため、狭い空間に複数匹を入れると、縄張り意識から激しい争いが起こりやすくなります。特にゴールデンハムスターは縄張り意識が強く、同じケージで複数飼育すると高確率でトラブルが発生します。
また、飼育環境の温度や湿度が適切でない場合も、ハムスターには大きな負担となります。適温は20〜26度程度で、これを大きく外れると体調を崩しやすくなり、攻撃的な行動につながることがあります。
栄養不足が引き起こす問題
タンパク質不足は共食いの直接的な原因となることがあります。ハムスターは雑食性の動物で、穀物だけでなく昆虫なども食べる生き物です。市販のペレットだけでは栄養が偏ることがあり、特に繁殖期や成長期には通常よりも多くのタンパク質を必要とします。
母ハムスターが出産後に子どもを食べてしまうケースでは、産後の体力回復のためにタンパク質を求める本能的な行動が関係していることがあります。妊娠中から授乳期にかけては、通常の1.5倍程度のタンパク質が必要とされています。
ミルワームやゆで卵の白身など、良質なタンパク源を適度に与えることで、栄養不足による共食いのリスクを減らすことができます。ただし、与えすぎは肥満の原因となるため、週に2〜3回程度が適量です。

母ハムスターが子どもを食べてしまう理由

出産直後の本能的な行動
出産したばかりの母ハムスターが子どもを食べてしまうという悲しい出来事は、実は自然界でも見られる行動です。これにはいくつかの理由があります。
まず、生まれた子どもに先天的な異常がある場合、母ハムスターは本能的にそれを察知し、健康な子どもだけを育てようとする選択をすることがあります。これは限られた栄養を効率的に使うための、野生動物としての生存戦略といえます。
また、初産の母ハムスターは育児経験がないため、パニックになって子どもを傷つけてしまうことがあります。人間が頻繁に覗き込んだり、巣箱を動かしたりすると、母ハムスターは危険を感じて子どもを巣から移動させようとします。その際に誤って噛みすぎてしまい、結果的に食べてしまうケースもあるのです。
人間の介入による影響
飼い主の行動が、知らず知らずのうちに母ハムスターにプレッシャーを与えていることがあります。特に出産後2週間は、母子にとって最もデリケートな時期です。
この期間中に子ハムスターを素手で触ると、人間の匂いが付いてしまいます。母ハムスターは匂いで自分の子どもを識別しているため、異質な匂いがすると自分の子どもではないと判断してしまうことがあります。どうしても触る必要がある場合は、巣材の匂いをつけた手袋を使用するなどの工夫が必要です。
また、ケージの掃除も最小限にとどめるべきです。出産前後の環境変化は母ハムスターにとって大きなストレスとなり、育児放棄や共食いの引き金となることがあります。汚れた部分だけを静かに取り除く程度にして、本格的な掃除は離乳後まで待つのが賢明です。
共食いを防ぐための具体的な対策

適切な飼育環境の整備
ハムスターの共食いを防ぐためには、まず基本的な飼育環境を整えることが大切です。ケージの大きさは、ゴールデンハムスターなら幅60cm以上、ジャンガリアンハムスターでも幅45cm以上は確保したいところです。
巣箱は必ず設置し、ハムスターが安心して隠れられる場所を作ってあげましょう。市販の木製巣箱や陶器製のものがおすすめです。巣材も十分に用意し、ハムスターが自分で巣作りできるようにすることで、ストレスを軽減できます。
回し車も必須アイテムです。運動不足はストレスの大きな原因となるため、体に合ったサイズの回し車を設置しましょう。ゴールデンハムスターなら直径20cm以上、ドワーフハムスターでも17cm以上のものを選ぶと、背中が曲がらずに走ることができます。

単独飼育の徹底
ハムスターの共食いを確実に防ぐ最も効果的な方法は、一匹ずつ別々のケージで飼育することです。ペットショップでは複数匹が同じケージにいることがありますが、これは幼いうちだけの特別な状況です。
生後2ヶ月を過ぎると、兄弟同士でも激しいケンカが始まることがあります。一度ケンカが始まると、どちらかが大けがをするまで続くことも珍しくありません。たとえ仲良く見えても、飼い主の見ていないところで争いが起きている可能性があります。
ロボロフスキーハムスターは比較的おとなしく、複数飼育が可能といわれることもありますが、個体差が大きく、必ずしも安全とはいえません。どうしても複数飼育したい場合は、いつでも分けられる準備をしておくことが必要です。

栄養バランスの改善
質の良いペレットを主食とし、副食で栄養を補うことが理想的な食事です。ペレットは総合栄養食として作られていますが、それだけでは単調になりがちです。
週に数回は、ひまわりの種やかぼちゃの種などの種子類、にんじんやブロッコリーなどの野菜、りんごなどの果物を少量ずつ与えましょう。バリエーション豊かな食事はストレス軽減にもつながります。
特に妊娠中や授乳中の母ハムスターには、煮干しやチーズなどの動物性タンパク質を積極的に与えることが大切です。ただし、塩分の多いものは避け、無塩のものを選ぶようにしましょう。

まとめ
ハムスターの共食いは、飼い主にとってショッキングな出来事ですが、適切な知識と対策があれば防ぐことができます。最も大切なのは、ハムスターの習性を理解し、それに合った飼育環境を提供することです。
単独飼育を基本とし、十分な広さのケージで、栄養バランスの取れた食事を与える。そして何より、ハムスターがストレスを感じない静かで安定した環境を維持することが、共食いを防ぐ最良の方法といえるでしょう。
繁殖を考える場合は特に慎重になる必要があります。母ハムスターへの過度な干渉を避け、自然な育児ができる環境を整えることが、悲しい事故を防ぐことにつながります。ハムスターも命ある生き物です。その習性と本能を尊重しながら、愛情を持って接することで、お互いに幸せな関係を築いていけるはずです。
記事の執筆者
- Minima編集部
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