ミーアキャットを飼育するうえで、毎日の餌選びは健康状態を左右する要素の1つです。野生のミーアキャットは昆虫や節足動物を中心に、小型の爬虫類や鳥の卵なども捕食する動物食寄りの雑食性で、季節や環境に応じて植物の根や果実も補助的に利用します。飼育下でもこの食性を踏まえたバランスのよい食事を用意する必要があります。
この記事では、ミーアキャットに適した餌の種類、1日に与える量の目安、食事で気をつけるポイントまでを順を追って解説します。初めてミーアキャットを迎える方にも実践しやすい内容にまとめていますので、日々の食事管理の参考にしてください。
ミーアキャットは動物食寄りの雑食性

ミーアキャットの餌を考えるうえでまず押さえておきたいのは、野生での食性が「動物食寄りの雑食」であるという点です。南アフリカのカラハリ砂漠などに生息するミーアキャットは、地面を掘り返して昆虫の幼虫やサソリ、クモなどの節足動物を捕食するほか、トカゲや小型のヘビといった爬虫類、鳥の卵なども食べます。
飼育下ではカラハリ砂漠と同じ環境を再現することはできませんが、動物性たんぱく質を中心に据えつつ、植物性の栄養素を少量組み合わせることで、野生に近い栄養バランスを目指すことができます。具体的には、主食のドライフードを軸に、昆虫類を日常的な副食として取り入れ、野菜はごく少量の補助、果物はさらに控えめに添える、というバランスが1つの目安です。
ミーアキャットの主食として使われることが多い餌の種類

飼育下のミーアキャットの主食としては、フェレット用のドライフードや高たんぱくのキャットフードが代用されるケースが多く見られます。ミーアキャット専用のフードは国内で流通している種類が限られているため、栄養組成が比較的近いフェレットフードが選ばれる傾向にあります。ただし、フェレットや猫とミーアキャットでは栄養要求が完全に一致するわけではないため、製品選びにはエキゾチックアニマルに対応できる動物病院で相談したうえで、成分表示を確認して選ぶのが安全です。
フードを選ぶ際に注目したいのは、穀物の有無よりも、動物性原料の比率やたんぱく質・脂肪の含有量、タウリンなどの微量栄養素が含まれているかといった総合的な栄養設計です。「グレインフリーであれば適切」とは限らないため、成分表の数値を確認する習慣をつけると判断しやすくなります。なお、ドッグフードはたんぱく質の含有量が低い傾向にあるため、メインの主食としては向いていない場合が多いです。
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ドライフードを与えるときのポイント
ドライフードはそのまま与えることもできますが、ぬるま湯で軽くふやかしてから与える方法も有効です。特に幼体やシニア期の個体は硬いフードをうまく噛み砕けないことがあるため、水分を含ませることで食べやすくなります。ふやかす際は熱湯ではなく30〜40度程度のぬるま湯を使い、フードが軽く膨らむ程度にとどめると風味が損なわれにくくなります。ふやかしたフードは傷みやすいため、作り置きはせず、室温で30分〜1時間程度を目安に食べ残しを片付けてください。夏場はさらに早めに回収すると安心です。
また、開封後のドライフードは酸化が進みやすいため、密閉容器に移し替えて冷暗所で保管し、メーカーが推奨する保存条件を確認したうえで早めに使い切るようにすると鮮度を保ちやすくなります。
副食として取り入れたい動物性たんぱく質

ミーアキャットの食事において、主食のドライフードだけでは補いきれない栄養素や食の楽しみを満たすために、動物性たんぱく質を副食として日常的に取り入れることが効果的です。野生下で昆虫を主な獲物としていることからもわかるように、ミーアキャットにとって昆虫食は食性の根幹にあたります。
昆虫類
飼育下で与えやすい昆虫としては、コオロギ、ミルワーム、デュビア(アルゼンチンモリゴキブリ)が代表的です。コオロギは入手しやすく、ミーアキャットも好んで食べる傾向がありますが、昆虫全般にカルシウムが不足しやすくCa:P比(カルシウムとリンの比率)が低めになりがちです。そのため、カルシウムパウダーをまぶしてから与える「ダスティング」を行うことでカルシウム不足を予防しやすくなります。ミルワームは脂肪分がやや高いため、与えすぎると肥満の原因になることがあり、おやつ程度の量にとどめるのが無難です。デュビアはコオロギと比べて臭いが少なく管理しやすいという飼い主側のメリットもあります。
ミーアキャットは骨格が細く、カルシウムの不足は骨の発育不良や代謝性骨疾患につながるリスクがあるため、日常的にカルシウムを補う工夫が求められます。一方で、カルシウムやビタミンD3の過剰補給も結石や中毒症状を引き起こす可能性があるため、補給の頻度や量については獣医師に相談しながら調整するのが安全です。
鶏肉・卵・マウスなど
昆虫以外の動物性たんぱく質としては、茹でた鶏ささみや鶏むね肉、ゆで卵を少量与えることができます。鶏肉は脂肪分の少ない部位を選び、味付けをせずに加熱してから与えます。生肉は細菌感染のリスクがあるため、火を通してから与える方が安全です。加熱後の鶏肉やゆで卵も室温で長時間放置すると傷みやすいため、与えてから1〜2時間を目安に食べ残しを回収してください。ゆで卵は週に1〜2回、4分の1個程度を目安にすると過剰摂取を防げます。
また、冷凍のピンクマウス(生まれたばかりの小型マウス)を解凍して与える方法もあります。ピンクマウスは骨ごと食べられるためカルシウム補給にも役立ちますが、脂肪分が高く、サイズや成長段階によって栄養組成も変わります。与える場合は体格や体重の推移を見ながら少量から始め、頻度については獣医師と相談して決めるのが安心です。見た目に抵抗がある方もいるかもしれませんが、ミーアキャットの食性を考えると栄養面での価値は高い食材です。
少量の補助として与える植物性の食材

動物性の餌を中心としつつ、野菜や果物をごく少量の補助として取り入れることで、ビタミンやミネラル、食物繊維を補うことができます。野生のミーアキャットも植物の根や果実を補助的に食べているため、飼育下でも少量の植物性食材を食事に組み込むことは理にかなっています。ただし、植物性食材の比率が高くなりすぎると糖質過多になりやすいため、あくまで「添え物」程度の量に抑えることを意識してください。
与えられる野菜
ミーアキャットに与えやすい野菜としては、にんじん、かぼちゃ、さつまいも、小松菜、チンゲン菜などが挙げられます。にんじんやかぼちゃ、さつまいもは軽く茹でるか蒸してからひと口大に切って与えると消化しやすくなります。小松菜やチンゲン菜はカルシウムを含む葉野菜として有用で、生のまま細かく刻んで与えることもできます。
一方で、ほうれん草はシュウ酸を多く含み、カルシウムの吸収を阻害する可能性があるため、頻繁に与えるのは避けた方がよいとされています。ネギ類(玉ねぎ、長ねぎ、にんにくなど)は中毒を引き起こす成分を含むため、絶対に与えないでください。
与えられる果物
果物では、りんご、バナナ、ブルーベリー、いちごなどを少量与えることができます。果物にはビタミンCや抗酸化成分が含まれており、食事に変化をつける役割も果たします。ただし、果物は糖分が多いため、与える量はごく少量にとどめてください。体格や体重によって適量は異なりますが、1回にティースプーン1杯以下を目安に、毎日ではなく週に2〜3回程度のペースで取り入れると糖分の摂りすぎを防ぎやすくなります。個体によって消化の具合も異なるため、便の状態を観察しながら量を調整してください。
ぶどうやレーズンは一部の動物で腎障害を引き起こすことが報告されており、ミーアキャットに対する安全性も確立されていないため、与えない方が安全です。アボカドも毒性成分「ペルシン」を含むため避けてください。
ミーアキャットに餌を与える量と頻度

ミーアキャットの1日の食事量は、個体の年齢・体格・活動量によって異なるため、一律の数値で断定することは難しいのが実情です。成体の体重は約700g〜1kg程度が目安とされていますが、使用するフードの種類(ドライフード中心か、昆虫や生餌を多く含むか)によって適切な重量は変わります。フードのパッケージに記載された給餌量の目安を参考にしつつ、体重の増減や体型の変化を観察しながら調整していくのが現実的な方法です。不安がある場合は、エキゾチックアニマルに対応できる動物病院で個体に合った食事量を相談すると安心です。
食事の回数とタイミング
成体のミーアキャットには、1日2〜3回に分けて食事を与えるケースが多く見られます。朝と夕方の2回を基本とし、間におやつとして昆虫や果物を少量与えるパターンが管理しやすいです。野生のミーアキャットは日中に活動して餌を探す昼行性の動物なので、朝の活動開始時と夕方の活動が落ち着く前に食事を与えるリズムが体内時計にも合っています。
幼体の場合は消化器官が未発達なため、1回の量を少なくして1日3〜4回に分けて与える方が消化の負担を軽減できます。成長期はたんぱく質の要求量も高くなるため、昆虫やゆで卵の頻度をやや多めに設定するとよいです。
食べ残しへの対応
ミーアキャットは個体によっては食べ物を隠す行動が見られ、ケージの隅や床材の中に餌を埋めてしまうことがあります。生鮮食材の食べ残しは数時間以内に回収し、腐敗や虫の発生を防いでください。特に夏場は傷みが早いため、与えてから2〜3時間を目安に片付けるのが衛生的です。ドライフードは比較的傷みにくいですが、湿気を吸うと品質が落ちるため、食べ残しは1日の終わりに交換するのが望ましいです。
ミーアキャットの餌で注意すべきポイント

日々の食事管理では、栄養バランスだけでなく、与えてはいけない食材や健康上のリスクにも注意を払う必要があります。知らずに有害な食材を与えてしまうと、消化不良や中毒症状を引き起こす可能性があるため、事前に確認しておくと安心です。
与えてはいけない食材もある
先に触れたネギ類、ぶどう、アボカド以外にも、チョコレート、カフェインを含む飲料、アルコール、人間用の加工食品はミーアキャットに与えてはいけません。チョコレートに含まれるテオブロミンは多くの動物にとって有毒であり、少量でも中毒症状を引き起こす危険があります。人間用の加工食品は塩分や糖分、添加物が多く含まれているため、たとえ少量でも与えないでください。
また、乳製品についてはミーアキャットが乳糖を十分に分解できるかどうか明確なデータが少なく、下痢を起こす可能性があるため、積極的に与える必要はありません。
肥満と栄養不足の見極める
ミーアキャットは飼育下で運動量が不足しやすく、高カロリーの餌を与えすぎると肥満になりやすい傾向があります。肥満は心臓や肝臓への負担を増やし、寿命を縮める原因にもなります。体を横から見たときにお腹が明らかに垂れ下がっていたり、肋骨に触れても骨の感触がわかりにくかったりする場合は、体重が増えすぎている可能性があります。
逆に、背骨や肋骨が目立つほど痩せている場合は栄養不足や体調不良のサインです。骨の異常、食欲不振、下痢、体重の急激な減少、歩き方の異常などが見られた場合は、早めにエキゾチックアニマルに対応できる動物病院を受診してください。
水分補給も欠かさずに
ミーアキャットは乾燥地帯に生息する動物ですが、飼育下では新鮮な水をいつでも飲めるようにしておくことが基本です。給水ボトルよりも浅い皿に水を入れて設置する方が、ミーアキャットにとって飲みやすい場合があります。ただし、皿は水がこぼれやすく、床材が入って汚れやすいというデメリットもあるため、転倒しにくい重めの器を選び、床材が入りにくい高さに設置する工夫が必要です。給水ボトルと皿を併用して、個体がどちらを好むか観察する方法もあります。
水は1日1回以上交換し、皿を使う場合は汚れが目立ったらその都度洗浄して清潔な状態を保ってください。野菜や果物からも水分を摂取できますが、それだけでは不足することがあるため、飲み水は常に用意しておく必要があります。
サプリメントの活用

バランスのよい食事を心がけていても、飼育下ではカルシウムやビタミンD3が不足しやすい傾向があります。野生のミーアキャットは日光浴によって体内でビタミンD3を合成し、カルシウムの吸収を促進しています。室内飼育では窓ガラスがUVB(紫外線B波)を遮るため、窓越しの日光だけではビタミンD3の合成に必要な紫外線量を確保しにくい場合があります。対策として、爬虫類用のUVBライトを設置する方法やサプリメントで栄養を補う方法が取られることがあります。
ただし、UVBライトの必要性は飼育環境や食事内容によって異なり、ミーアキャットにおける効果は爬虫類ほど研究が確立されていない面もあります。UVBライトを使用する場合は、製品の仕様に従って照射距離と照射時間を設定し、ミーアキャットが光から退避できるスペースを確保してください。至近距離での長時間照射は火傷や目への影響を起こす可能性があるため注意が必要です。
サプリメントの使用量はパッケージに記載された目安量を守り、使用の要否や量についてはエキゾチックアニマルに対応できる動物病院で相談してください。
まとめ
ミーアキャットの餌は、動物食寄りの雑食性という本来の食性を理解したうえで、動物性たんぱく質を中心に、植物性食材を少量の補助として組み合わせることが基本です。主食にはフェレットフードや高たんぱくのキャットフードを獣医師と相談して選び、副食としてコオロギやデュビアなどの昆虫類、茹でた鶏肉やゆで卵を日常的に取り入れます。
にんじんやかぼちゃなどの野菜はごく少量の補助として、りんごやバナナなどの果物はさらに控えめに添える程度にとどめると、糖質過多を防ぎながら必要な栄養素を幅広くカバーしやすくなります。