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ウサギの専門病院だからこそできるケアとは? 「うさぎの病院 つくば」古谷院長に聞く
インタビュー

ウサギの専門病院だからこそできるケアとは? 「うさぎの病院 つくば」古谷院長に聞く

茨城県つくば市に、ウサギ・齧歯類専門の動物病院「うさぎの病院 つくば」が2025年1月14日にオープンしました。

犬や猫以外の動物を診てくれる動物病院は数少ないので、地域の飼い主の方々やウサギなどを飼育されている方はとても嬉しいニュースだと思います。

そこでMinima編集部は、1月11日〜12日に行われた内覧会に行ってきました。

院内を見させてもらうとともに、なぜウサギ・齧歯類専門の動物病院を開院したのか、そしてエキゾチックアニマルの診療についてどんな思いなのか、院長の古谷昌大さんにお話を聞いてきました。

うさぎの病院つくばの外観
うさぎの病院つくばの外観
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うさぎの専門病院を開院するまで

ーーオープンおめでとうございます! 改めてご経歴を教えてください。

古谷さん:ありがとうございます。日本大学 獣医学科を卒業して、NOSAI山形という主に牛の診察をするところに就職しました。乳牛だったり肉牛の治療とかをしていましたね。

そこで働く中で、動物病院を自分でやりたいという思いが生まれてきました。犬猫だけじゃなくて他の動物も診られるところを希望して、千葉県にある「ラパン動物病院」に就職をしました。その病院はウサギに強い病院で、実際に診察の風景を見たら、やっぱり他の病院と技術や診察の様子が全然違うものだったんですよね

ーーなぜ“犬猫以外も診るところ”が良かったんですか?

古谷さん:やっぱり、より多くの動物を治せるほうがいいと思ったんです。犬猫だけじゃなくて、ウサギとか、ハムスター、モルモットとか、そういった動物の治療・診察ができたほうが、より多くの飼い主さんが幸せになれるんじゃないか。そう考えて、犬猫だけじゃない動物も診られるようになりたいと思いました。

古谷院長とペットのウサギ
古谷院長とペットのウサギ

ーーそのラパン動物病院ではウサギをよく診療されていたと思うのですが、他にも、齧歯類とか、哺乳類以外の動物も診られていたんですか?

古谷さん:そうですね。だいたいウサギが5割ぐらいで、ワンちゃん猫ちゃんが4割〜5割。その残り数パーセントは爬虫類とか、たまに両生類も来ていました。

「ラパン」はフランス語でウサギという意味なので、知っている方は「ウサギに強い病院かな」と思って来てくださったり、あとは口コミですね。院長が「うさフェスタ」という、横浜で年2回行われるウサギのお祭りで講演していたのも影響していたかなと思います。

ーーではご自身が開業される際にウサギ専門の動物病院をやろうと思ったのは、前職の経験も大きかったからですか?

古谷さん:もちろん経験もありますし、前の職場で働いていたときに、どの病院に行ったらいいか迷われる飼い主さんが多かったんです。「ウサギを診られます」と書いてあっても、しっかりと診てくれる病院さんが少なかったりして。

そこでようやくラパン動物病院を見つけたという方もいらっしゃったので、前面にウサギを押し出すことで、より飼い主さんに届きやすくなるのではないかと思ったんです。

幼い頃に経験した「動物病院で診療を断られる」経験

お薬の調剤をしたりする作業台
お薬の調剤をしたりする作業台

ーー今までに、ご自身ではどういうペットを飼われたことがありますか?

古谷さん:犬、猫、ウサギ、ハムスター、あとセキセイインコですね。

ーー幼い頃から動物好きだったんですね。

古谷さん:3人兄弟なんですけど、自分が一番動物好きでした。最初は兄が友人からもらってきたセキセイインコを飼い始めて、そこからハムスター、犬、猫…と。最近はハムスターやウサギを飼っています。

ーーもちろんですが、古谷さんも動物病院に飼い主として行った経験もありますか?

古谷さん:そうですね。子どものころハムスターを飼っていて、病気で動物病院に連れて行ったら「あまりできることはないと」言われ、幼いながらも「もうちょっとしっかりと診てほしいな…」と思ったんです。

ウサギの糞の大きさを測るサンプル
ウサギの糞の大きさを測るサンプル

ーー犬や猫などを診られるけど、それ以外は対応できない/したことない獣医さんは多い。意外と知らない方も多いですが、やはり大学の獣医学部では愛玩動物、特にウサギなどの小動物について学ぶ機会はほぼないんですよね。

古谷さん:はい、ウサギや小動物について学ぶことはほとんどないですね。犬、猫、鶏、牛、馬、豚くらいですね。あとは魚病学として魚を学ぶ、みたいな感じなので。そのため、自分で勉強していくしかないのが現状です

ーーだから、病院とかで実際に症例を見て覚えていく形になるわけですね。

古谷さん:そうです。最初にラパンに入ったとき、自分はウサギを飼ったことがなかったので、まず1匹お迎えして実際にお世話しながら、日々の診察で「こういった病気がある」「こういった治療をする」というのを身につけていきました。

ウサギの医療は犬猫より遅れている?

内覧会で質疑応答を受ける様子
内覧会で質疑応答を受ける様子

ーーウサギには、首が傾いてしまう「斜頸」など代表的な病気がいくつかあります。実際に診療をしていく中で、見たことないような症例などは出てくるものでしょうか?

古谷さん:ありますね。そもそも犬猫に比べると、ウサギの論文の数はすごく少ないんです。ウサギの病気について書かれている書籍も、犬猫に比べると圧倒的に少ない。だから、実際に現場で診察や治療をしてみないとわからないことも多いんです。「これはなんだろう?」と思って本を調べても載っていないこともあります。

とはいえ今はいろんな先生方が少しずつデータを集めて、ウサギに関する発表や本が出たりしてきて、少しずつウサギの医療も確立されつつあります。でも、まだまだわからないことが多いです。

ーー犬や猫と比べて進歩がゆっくりなんですね。

古谷さん:そうですね、犬猫に比べてかなり遅れているのではないかと思います。やっぱり病院に来る頭数自体が犬猫より少ないので、そこは仕方がない部分もありますが…。でも少しずつデータや症例報告なんかが増えてきて、研究は進んできているかなと思います。

エキゾチックペットの専門病院が近くにない人はどうすればいいの?

院内は清潔で、専門設備が整っています
院内は清潔で、専門設備が整っています

ーーこれはぜひ意見を伺いたいのですが、ウサギなどのエキゾチックペットを飼育されている方で、家の近くに専門病院がないときはどうすればいいのでしょうか?

古谷さん:これは難しいところなのですが、まずはご近所で爪切りとか簡単な健康チェックをやってもらえる病院を見つけておいて、そこに定期的に通うことですね。例えば1〜2ヶ月に1回くらいのペースで大丈夫です。

その上で、何か大きな病気が見つかって「これはうちでは難しい」となったら、時間かけてでもしっかりウサギを診られる病院に行ってもらうのがいいかなと思います。

1番大事なのは、やっぱり定期的に病院へ連れて行って病院に慣れさせることです。どの動物病院さんが本当にウサギを診られるかは、実際行ってみないとわからないこともあるので。お電話で「ウサギを診られますか?」とか、「どこまでウサギの治療をしていますか?」とか聞くのはアリだと思いますし、実際に爪切りだけでも連れて行ってみて、処置の仕方を見せてもらうとか。そういうところで判断するのがいいと思います。

診療時間や休診日について
診療時間や休診日について

ーー「うさぎの病院 つくば」さんのように、本格的にウサギを診られる専門病院と、犬猫がメインだけどウサギもちょっと診られますよという病院の違いって、具体的にはどこにあるんでしょうか?

古谷さん:多くの動物病院さんでは、爪切りとか健康チェック、あとは注射ぐらいまではできても、うちのように入院や手術まで踏み込んで診る病院は少ないと思います。

たとえばうちでは、一般的な避妊去勢や整形外科などの手術はもちろん、飼い主さんの目の前で無麻酔での切歯・臼歯カットも行います。そして治療や入院の際には強制給餌をしたり、飼育指導など手厚いケアを心がけています。そういう、より踏み込んだ治療ができる点が違いになると思います。

入院のための設備も完備しています
入院のための設備も完備しています

ーー獣医さんって、人間みたいに「皮膚科」「整形外科」みたいに分かれていないですよね。先ほどのお話にもありましたが、見たことない症例のときはどう対応されるのですか?

古谷さん:もちろん診療の中で、「これは普通の病気と違うぞ」というものはあります。それについてはワンちゃん猫ちゃんでも同じことで、できる限りの論文や書籍を調べて、いろんなデータを参照しながら治療に当たります。

ただ、やっぱり「ウサギ専門です」と掲げているからには、他の病院ではできないこともやってあげたいし、専門病院だからこそできるケアを提供したいと思っています。来ていただいた飼い主さんの不安を取り除くための丁寧な説明とか、インフォームドコンセント(医療行為を受ける前に医師から十分な説明を受け、その内容を理解した上で同意すること)も心がけたいです。

もちろん、やっていてわからないことが出てくる可能性はあります。だけど、それは犬猫でも、人間の医療でも同じだと思います。そういう新しい症例が出たら、それがデータになって論文や本に載ったりして、少しずつ医療水準が上がっていくんですよね。なので、いろんな文献を参考にしつつ、しっかりと臨床を積み上げていきたいです。

やさしく朗らかな人柄の古谷院長
やさしく朗らかな人柄の古谷院長

飼い主さんへのメッセージ

ーー最後に、「うさぎの病院 つくば」に来院を考えている飼い主の皆さんに、メッセージをお願いします。

古谷さん:まず、お越しいただける方々は、病気の症状が出てから受診されるのではなくて、まずは爪切りだけでもお越しいただいて、病院の雰囲気や診察風景など、そういったものをチェックしていただいた上で良ければ通っていただければと思っています。

遠くに住まわれている方は、近くで健康チェックなどしていただける病院さんを探しつつ、万が一病気になった時にセカンドオピニオンとしてお越しいただければと思います。

私たちはウサギ・齧歯類の専門病院として、日々の予防ケアから飼育指導、的確な診断・治療まで一貫してできる病院です。ご不明点がございましたら些細なことでも構いませんのでいつでも相談してくださいね。

病院情報

「うさぎの病院 つくば」

「うさぎの病院 つくば」
診療時間:9:00〜12:00、15:00〜18:00
休診日:毎週木曜日、日曜午後
※土曜日午後:14:00〜17:00
 祝日は病院HP及びペットPASSアプリにてお知らせ
住所:〒300-2669 茨城県つくば市高山D39街区2画地 FioceA 1号室
公式サイト:https://rabbit-clinic-tsukuba.com
公式X:https://x.com/Blog_Mareeba
公式Instagram:https://www.instagram.com/rabbit_clinic_tsukuba

記事の執筆者

Minima編集部

小動物のかわいさと、ペットとしてお迎えするときに知っておきたい情報を、Minima編集部がお届け。

おうちでの豊かでしあわせな暮らしをサポートします。

なお編集部のペットはクレステッドモルモット。実体験に基づいた、確かな情報をお伝えしていきます。

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