みなさんは「珍獣ドクター」と呼ばれる獣医師さんがいることを知っていますか?
今回紹介する書籍『珍獣ドクターのドタバタ診察日記』の著者・田向健一さんは、犬や猫など一般的に飼われている動物はもちろん、イグアナやリクガメ、さらにはワニの治療まで行った経験があるそうです。
本書では、田園調布動物病院の院長も務める田向さんの仕事内容が紹介されつつ、獣医療と人間の医療の違いや、たくさんの動物を診る田向さんの獣医療への思いがたっぷりと綴られています。
獣医の仕事について知っておきたいこと
獣医と言えば「動物のお医者さん」であることには間違いありません。ですが、獣医になりたいと思って大学の獣医学部に行くと、実際にはペットとしての犬や猫、そのほか小動物などの治療について勉強することはとても少ないそうです。
それは、獣医学はもともと家畜のような人間が利用するための動物について研究する学問であるため。入学して、そのギャップに驚いた経験も書かれています。
なので私たちが普段接するような獣医師さんたちは、大学を卒業後、動物病院に所属して治療の実務経験を積んでいくようです。そして人間を診る医療は皮膚科や外科など専門に分かれていますが、町の獣医師は、基本的に一人のお医者さんが全てを診なければいけないことも特徴的です。
エキゾチックアニマルを診療する獣医師
田向さんは動物が大好きでいろんな動物を飼育してきた経験から、「いろんな動物をみられる獣医さんになろう」と思ったそうです。ですが、当時の動物病院と言えば犬と猫を診るためだけの病院でした。
そして現在でも、エキゾチックアニマルと呼ばれる珍しい動物を診られる病院はほんとうに限られています。それは、初めて見る動物や、危険な動物を受け入れなければならず、獣医さんや病院としてのコストがとても高いから。
体長2cmのアマガエルから、巨大なリクガメの手術を工夫して行う様子も書かれています。そしてリクガメの手術で得た施術ノウハウを学会で発表したところ、今ではその方法が世界的なスタンダードとなっているとのこと。どのようにして獣医学が発展しているかも知ることができます。
エキゾチックアニマルをペットとして迎えている立場としては、田向さんのような獣医師さんがいらっしゃることに感謝です。一方で、近年飼育数が高まってきているエキゾチックアニマルの診療にまつわる社会課題も、窺い知ることができます。
まとめ
本書の締めくくりとして、「命を飼う、ということ」という章が用意されています。困っている野生動物をどうすればいいのか、愛するペットの死をどのように迎えればいいのか、手術を受けさせるべきなのかどうか…。
そこには、優しい表現ではありながらも、田向さんの経験から導き出された考えが記されています。
本書は、動物好きなお子さんはもちろんのこと、あらゆる動物の飼い主さんをはじめ、獣医師を目指す人や現役で働かれている方まで、きっと興味深く読める良書です。
書籍情報
ポプラ社ノンフィクション(28)
『珍獣ドクターのドタバタ診察日記 動物の命に「まった」なし!』
著者:田向健一
発売年月:2017年8月
ISBN:978-4-591-15519-6
判型:四六判
サイズ:195mm x 135mm
ページ数:174ページ
主な対象年齢・学年:小5 小6
本の種類:児童向け単行本
ジャンル:ノンフィクション
教科:キャリア教育
定価:1,980円(本体1,800円)
(公式サイトより)