毎日使っている、あのお気に入りの飼育用品。
手に取るたびに「便利だな」「可愛いな」と感じているけれど、どんな想いで作られたのか、意外と知らないことも多いのではないでしょうか。
小動物メディアMinimaの新連載「教えて!あの商品のコダワリ」では、定番商品の開発ストーリーをメーカーの方に直接伺います。
開発の裏側にある試行錯誤、込められた想い、そして知られざる工夫まで。商品の「向こう側」にいる作り手の声を、じっくりとお届けしていきます。
記念すべき第1回は、ハムスター飼育の新定番となったGEX「グラスハーモニー」シリーズ。商品開発部の西野さんが語る、開発秘話とは。

ハムスター飼育の定番商品! グラスハーモニー誕生の背景
グラスハーモニーの初代モデルが発売されたのは2018年。コロナ禍の少し前のことでした。それから急速に支持を集め、今ではハムスター飼育の定番商品となっています。
「元々ハムスターケージといえば、ワイヤー製が主流でした。でも、ワイヤーのケージだと、人間がペットを飼育しているという距離感が強く感じられて。可愛いペットの様子や仕草を、人間がペットの目線に合わせて一緒に触れ合いたい、という想いから生まれた企画なんです」
ワイヤーケージには、ハムスターがケガをしてしまうリスクもありました。お客様からの声を通じて、「本当にハムスターにとって良い環境なのか?」という疑問が開発チームには常にあったといいます。
社員ハムのポテト観賞魚メーカーの技術を活かして
素材にガラスを選んだ背景には、GEXならではの強みがありました。
「GEXは観賞魚メーカーとして、自社で水槽を製造している強みがあります。その技術を活かした物作りができないかと考えました」
水槽をそのままハムスター飼育に使う飼い主さんもいますが、最大の課題は「上から手を入れる」構造。ハムスターは警戒心が強い生き物のため、上から手を突っ込むとびっくりしてしまうからです。

「せっかく一緒に暮らしているのに、警戒されるのは切ないですよね」
そこでグラスハーモニーは、前面から手を入れられる設計を採用。ハムスターと目線を合わせて触れ合うことを可能にしました。
こだわり抜いたのは「目線の高さ」
開発で最もこだわったポイントについて、西野さんは興味深いエピソードを教えてくれました。
「扉を開けたとき、ハムスターがやってきてトレイに手をかけて立つじゃないですか。あの時の高さ、手をかけてちょうどいい高さにすごくこだわったんです」

ジャンガリアンハムスターなら、まっすぐ立ってちょうどいい高さ。ゴールデンハムスターなら、少し腰をくねらせて、バーのカウンター越しのように手をつく高さ——。種類によって最適な高さを設定したといいます。
「ゴールデンハムスターが腰をくねらせる仕草が、すごく可愛らしくて。それが私の中での萌えポイントだったんです」

小動物は「お家のアイドル」というコンセプト
グラスハーモニーシリーズのテーマが決まったのは、ユーザー訪問調査でのひと言がきっかけでした。
「年に1回、ユーザーさんのお宅を訪問する調査があるんです。その時、『ハムスターは我が家のアイドルです』とおっしゃった方がいて。その瞬間、このシリーズのテーマが決まりました」
アイドルなら、スポットライトを浴びてほしい。かっこいいところも可愛いところも見たい——。そんな想いからハーモニーシリーズでは「ランウェイ」をはじめとする様々なアクセサリーが生まれたといいます。
ハーモニーランウェイ450「ハムスターって奥に行ってしまうことが多いんです。もっと前に来てほしい、前でパフォーマンスをしてもらいたい。だったらモデルさんの花道のように、ハムスターの花道を作ろうと思い『ハーモニーランウェイ』を開発しました」
専用の床材『柔ごこち』も、その想いを体現した商品です。白い床材が女優ライトのようにケージ内を明るくし、ハムスターを美しく撮影できるよう設計されています。天然広葉樹パルプ100%で低アレルギー、消臭と抗菌効果があるのも、嬉しいポイントです。
ユーザーの声を聞いて進化を続ける製品
初代モデルから、ユーザーの声を聞きながら改良を重ねてきた『グラスハーモニー』。特にホイールの改良には力を入れてきたといいます。
「最初のホイールは音がうるさいという意見が多く、ベアリング入りの静音タイプに変更しました。でも今度はホイールホルダーがガタガタ音がするという問題が。改善を重ねて、音の問題に対応してきました」
最近発売された『ハーモニーホイールDS』は、安全性(Safety)と静音性(Silent)をさらに一段階上げた商品です。ブレーキパッドで回転の勢いを調整でき、シリコンカバーで振動も軽減。SNSなどで見かける「勢いよく走って飛ばされてしまう」事故のリスクも抑えられます。

また、現在の組み立て式モデルは掃除のしやすさも向上しています。底部のトレイと上部を簡単に分離できるので、トレイだけを持って水洗いが可能。扉も取り外せて、隅々まで清潔に保てます。
全体がガラス? グラスハーモニーの秘密とは?
グラスハーモニーの外観は全体がガラスでできているように見えますが、実は前面と背面のみがガラスで、他の部分は樹脂製です。それでも一体感があるのには、観賞魚水槽の技術が活かされています。
「ガラスは少し青みがかった色をしています。それと同じ色に樹脂を染めることで、全体がガラスでできているように見せているんです。これは観賞魚水槽から得たアイデアです」
当初、上部と底部のトレイは色付きで提案されていましたが、社内から「透明でしょう」という意見が出たことで、全体をガラスに見えるようにする挑戦が始まったといいます。色の管理や透明樹脂の成形は難しい作業でしたが、妥協せずに取り組んだ結果、今の美しい外観が実現したとのことです。

開発者が大切にする"小さな家族"への想い
インタビューの最後、西野さんは『グラスハーモニー』シリーズに込めた想いを語ってくれました。
「この10年ほどで、ペットと暮らす環境が大きく変わってきています。以前はケージに入れて世話や管理をするという感覚が一般的でしたが、今は一緒に暮らす家族、相棒、アイドル……そんな感覚がどんどん強くなっている気がします。だからこそ飼育用品というより、ペットとの暮らしをサポートできる物作りを心がけています」
観賞魚メーカーとして培った技術を小動物飼育に応用し、ハムスターとの理想的な暮らしを追求した『グラスハーモニー』。「お家のアイドル」というコンセプトのもと、見た目の美しさと機能性を両立させながら、何より動物の幸せを第一に考えた商品づくりが行われています。
発売から約7年。ユーザーの声に耳を傾け、改良を重ね続けてきた姿勢からは、ペットとの暮らしを本気でサポートしたいというメーカーの想いが伝わってきました。
企業サイトはこちら:https://www.gex-fp.co.jp/animal/