「うちの子を診てくれる病院が見つからない」

モルモットやデグー、爬虫類などのエキゾチックアニマルを飼育する飼い主たちの切実な声が聞こえてきます。犬や猫とは異なる専門知識が必要な小動物たちの医療体制は、まだまだ発展途上にあります。

エキゾチックアニマルの飼育者は、動物病院探しでどのような困難に直面しているのでしょうか。小動物メディアのMinimaが、エキゾチックアニマル(犬・猫以外の小動物)を飼育している全国137名を対象に、動物病院の受診に関する実態調査を実施しました。

調査概要

  • 調査手法:インターネットでのアンケート
  • 調査対象者:エキゾチックアニマルを飼育している全国の男女
  • 有効回答:137サンプル
  • 調査内容:動物病院の受診経験、病院探しの課題、複数病院の利用実態など

84.7%が動物病院の受診で困った経験あり

調査の結果、エキゾチックアニマルを飼育していて動物病院の受診で困った経験が「ある」と回答した人は116名(84.7%)にのぼり、「ない」と回答した21名(15.3%)を大きく上回りました。

84.7%が動物病院の受診で困った経験あり

この結果から、エキゾチックアニマルの飼い主の大多数が、何らかの形で動物病院受診に関する課題を抱えていることが明らかになりました。犬や猫と比較して、小動物の診療体制がまだ十分に整備されていない現状が浮き彫りになっています。

回答者の飼育動物はモルモットが最多、爬虫類ほか希少種の飼育者も

現在飼育されている動物について尋ねたところ、最も多かったのはモルモット(46名)で、次いでデグー(25名)、チンチラ(21名)、ハムスター(19名)、ウサギ(17名)という結果になりました。(全件は記事末尾に記載)

注目すべきは、爬虫類や希少種の飼育者も一定数存在することです。ヒョウモントカゲモドキやフトアゴヒゲトカゲなどの爬虫類、さらにはアルマジロ、キンカジュー、パームシベットといった比較して珍しい動物の飼育者も回答に含まれていました。こうした多様な動物種に対応できる獣医師の必要性がうかがえます。

動物病院探しの最大の課題は「夜間・緊急時の診療体制」

動物病院探しで最も困ったことについて尋ねたところ、「夜間・緊急時の診療体制が整っていない」が42名で最多となりました。次いで「診察可能な病院はあるが、診療内容や専門性に不安がある」が41名、「自宅近くに診察可能な動物病院がない」が33名、「セカンドオピニオンを求められる病院が見つからない」が11名という結果でした。

動物病院探しの最大の課題は「夜間・緊急時の診療体制」

飼い主からは以下のような声が寄せられました。

「エキゾチックアニマルの夜間対応の病院があればいいなと思います。小動物は一刻を争うことが多いため」(スナネズミ飼育者)

「夜間救急でエキゾチックアニマルを診てくれる病院が近場にない。往診専門で診てくれる医師がいるが、他の往診があったりするとすぐには来てくれない」(デグー、チンチラ飼育者)

小動物は体が小さい分、体調が急変しやすく、迅速な対応が求められることが多いにもかかわらず、緊急時の受け入れ体制が整っていないという深刻な課題が浮き彫りになりました。

45.3%が複数の動物病院を使い分けている

現在の動物病院の利用状況について尋ねたところ、「1つの病院のみ利用している」が75名(54.7%)で最も多かったものの、「2つの病院を使い分けている」が42名(30.7%)、「3つ以上の病院を使い分けている」が11名(8.0%)と、合計で45.3%の飼い主が複数の病院を利用していることが分かりました。

45.3%が複数の動物病院を使い分けている

複数利用の理由は「症状による使い分け」が最多

複数の病院を利用している53名に、その理由を尋ねたところ、「症状や治療内容によって使い分けている」が28名で最も多く、次いで「緊急時用と通常診療用で分けている」が16名、「立地・アクセスの都合」が13名という結果になりました。

複数利用の理由は「症状による使い分け」が最多

一つの病院だけでは対応しきれない現状を、飼い主が工夫して補っている様子がうかがえます。特に「症状や治療内容による使い分け」が多いことから、各病院の専門性や得意分野を把握し、状況に応じて最適な医療を求めていることが分かります。

エキゾチックアニマル専門病院に人気が集中

主に利用している動物病院について尋ねたところ、「日本エキゾチック動物医療センター みわエキゾチック動物病院」が8名で最多となりました。全体的に見ると、エキゾチックアニマルに特化した病院や、専門性の高い病院に人気が集中しています。(全件は記事末尾に記載)

病院選びの理由として、以下のような声が寄せられました。

「専門知識の充実や詳しい検査、治療が可能だから」(日本エキゾチック動物医療センターみわエキゾチック動物病院利用者)

「フェレット来院が多く症例に対して豊富な経験があり、説明がとても丁寧で話をよく聞いてくださる。先生との相性がよい。フェレットの扱い方が先生、スタッフともに丁寧」(くらた動物病院利用者)

「エキゾチックアニマルに特化していて、エキゾを診ることができる先生が2人もいる。先生はお二人とも動物目線で、今だけでなく今後のことも考えてくださり、安心感があるから」(小泉ネスト動物病院利用者)

「先生がカメレオンを飼育しており、飼育の難しいカメレオンの繁殖までしていらっしゃる先生ならば、エキゾチックアニマルのちゃんとした知識をお持ちであると考えたから」(板倉動物病院利用者)

「院長がエキゾチックペット研究会に所属しており、診察可能な動物にモルモットが含まれていたため。口コミで、衛生管理などもしっかりされていそうなのが分かったのも決め手になりました。」(メイプル動物病院利用者)

「アルマジロが診察可能だから」(横浜エキゾチック動物病院利用者)

専門知識の豊富さ、経験の多さ、動物への接し方の丁寧さなど、飼い主が重視するポイントは多岐にわたっています。特に、獣医師自身がエキゾチックアニマルを飼育している場合、信頼度が高まる傾向が見られました。

地方での受診の困難さ、情報不足も深刻

その他の課題について自由回答で尋ねたところ、地域格差や情報不足に関する切実な声が多数寄せられました。

地域格差に関する声

「都市部に集中しており、地方では受診先を探すのが難しい。病院が少なく選択肢があまりないので、セカンドオピニオン先を見つけるのが大変。人気のところは混み合っていて予約が取りづらい。地方からの受診だと、移動時間が長く動物の負担が大きい」(モルモット飼育者)

「田舎になればなるほどエキゾチックアニマルの病院受診のハードルが高くなる」(デグー飼育者)

「引越しをしたことによりいい病院(先生)に診ていただけることになったのですが、また引越し予定なのでその際、またエキゾチックをしっかり診ていただける病院に出会えるか不安」(モルモット、チンチラ、うさぎ、セキセイインコ、シマリス飼育者)

情報不足・透明性の課題

「エキゾチックアニマル診療科と書いていてもどのくらい知見があるのかがわからない。基本的に病院は飲食店に比べてクチコミも少なく、体験談とかも検索しても見つからない事が多いので病院選びが難しい」(ウサギ飼育者)

「診察可能と表記していても、どの程度まで対応可能かが不明なことが多く、獣医師のレベルや経歴を知る手段がほぼ無い」(サザナミインコ、文鳥飼育者)

「悪化した時に、自分にも知識がなくて、その病院の誤診なのか、仕方ないことなのかがわからない」(モルモット、うさぎ、フクロモモンガ、ヒメハリテンレック飼育者)

特定動物種の受診困難

「シマリスだと診察してもらえる病院が本当に少ないです。ハムスターやうさぎなら診れるけど、シマリスは診ていませんと言われることが多いです」(シマリス飼育者)

「基本触診のみで、信頼性に欠ける気がしてしまう。もっとハムスター専門の詳細な健康診断等受けられる病院があればいいなと思う」(ハムスター飼育者)

「外科治療ができる病院が少ない」(ハムスター飼育者)

その他の課題

「小動物専門だと、予約制でなかなか予約がとれず診てもらいたい時にすぐに診てもらえないことがあり、受診のハードルがとても高い」(モルモット、デグー、ハムスター飼育者)

「対象の動物を診られる先生が休みだと受診した際に伝えられて慌てて他の病院を探したことがある。また、待合室でメインの患者である犬猫の鳴き声などに緊張してさらに具合を悪くしてしまう時もあった」(インコ、カメ、モルモット、ウサギ飼育者)

「定期検診など、わんにゃんのプランはありますがエキゾチックアニマルもあればいいなと思いました」(フェレット、ヘルマンリクガメ飼育者)

まとめ

今回の調査では、エキゾチックアニマルの飼い主の84.7%が動物病院の受診で困った経験があることが明らかになりました。特に夜間・緊急時の診療体制の不足、専門性への不安、地域格差といった課題が深刻であることが浮き彫りになっています。

45.3%の飼い主が複数の病院を使い分けることで対応している現状は、一つの病院だけでは十分な医療を受けられない実態を示しています。また、病院選びにおいて情報不足が大きな障壁となっており、獣医師の専門性や経験を事前に知る手段が限られていることも課題として挙げられました。

エキゾチックアニマルの飼育者が増加する中、専門的な知識と技術を持つ獣医師の育成、地方での診療体制の充実、緊急医療体制の整備、そして情報の透明性向上が急務といえるでしょう。飼い主と動物たちが安心して暮らせる環境づくりのためには、獣医療界全体での取り組みが必要不可欠です。

Minimaではエキゾチックアニマルに特化した動物病院の情報共有プラットフォームの構築や、獣医師の専門性を可視化する仕組みづくりなど、飼い主のニーズに応える新たなサービスの提供を予定しています。続報にご期待ください。

資料

回答者の飼育している動物種(全件)

モルモット(46名)、デグー(25名)、チンチラ(21名)、ハムスター(19名)、ウサギ(17名)、フェレット(9名)、ヒョウモントカゲモドキ(7名)、ファンシーラット(6名)、フクロモモンガ(6名)、シマリス(4名)、ニシアフリカトカゲモドキ(3名)、フトアゴヒゲトカゲ(3名)、ジャービル(3名)、ラット(3名)、スナネズミ(2名)、アフリカヤマネ(2名)、マカロニマウス(2名)、クレステッドゲッコー(2名)、アオジタトカゲ(2名)、ロシアリクガメ(1名)、ヒョウモンガメ(1名)、サンドフィッシュスキンク(1名)、ヒガシウォータードラゴン(1名)、ボールパイソン(1名)、リチャードソンジリス(1名)、クランウェルツノガエル(1名)、セキセイインコ(1名)、ヘルマンリクガメ(1名)、クサガメ(1名)、グリーンイグアナ(1名)、ハリネズミ(1名)、ジャイアントジャービル(1名)、アフリカチビネズミ(1名)、イエアメガエル(1名)、アルマジロ(1名)、サザナミインコ(1名)、文鳥(1名)、キンカジュー(1名)、パームシベット(1名)、プレーリードッグ(1名)、ジャージーウーリー(ウサギ)(1名)、ヒメハリテンレック(1名)、ボタンインコ(1名)、コガネメキシコインコ(1名)、パンダマウス(1名)、ボウシトカゲモドキ(1名)

主に利用している動物病院(全件)

日本エキゾチック動物医療センター みわエキゾチック動物病院(8名)、ジンベイ動物病院(4名)、くらた動物病院(3名)、バーツ動物病院(3名)、ぼたん動物病院(2名)、サニー動物病院(2名)、さいとうラビットクリニック(2名)、ケーズペットクリニック(2名)、バニーグラス(2名)、やすだ動物病院(2名)、かとう動物病院(2名)、木場きたむら動物病院(2名)、ラパスペットクリニック(2名)、とちぎ うさぎ・ことり・ちびっこ動物の病院(2名)、ふくしま動物病院(2名)、かすみヶ丘動物病院(2名)、メイプル動物病院(2名)、上大岡キルシェ動物医療センター(2名)、小泉ネスト動物病院(2名)、コネット動物病院(1名)、いなば動物病院(1名)、牛浜ペットクリニック(1名)、三鷹獣医科グループ(1名)、クウ動物病院(1名)、松田アニマルクリニック(1名)、くさか動物病院(1名)、わだ動物病院(1名)、にほ動物病院(1名)、もりの動物病院(1名)、エルフィン動物病院(1名)、なみき動物病院(1名)、はる動物病院(1名)、上桂動物病院(1名)、リオネル動物病院(1名)、田園調布動物病院(1名)、印西動物医療センター(1名)、アニモ動物クリニック(1名)、宇都宮白沢動物病院(1名)、きたお動物病院(1名)、ピジョン動物愛護病院(1名)、アイリス動物病院(1名)、COMS動物病院(1名)、オズ動物病院(1名)、新座どうぶつ病院(1名)、しんか動物病院(1名)、南草津動物病院(1名)、北須磨動物病院(1名)、くりの木動物病院(1名)、モリヤ動物病院中町センター(1名)、ナイル動物病院(1名)、大相模動物クリニック(1名)、ルナ動物病院(1名)、竹田動物病院(1名)、姫路エルザ動物病院(1名)、世田谷通り動物病院(1名)、かむい動物病院(1名)、野村獣医科Vビル(1名)、動物病院川越(1名)、クッキー動物病院(1名)、岐阜北どうぶつ病院(1名)、春日丘動物病院(1名)、富士森公園動物病院(1名)、ノア動物病院 敷島分院(1名)、ユリイカ動物病院(1名)、真間ペットクリニック(1名)、アーリン動物病院(1名)、動物病院キバタン王国(1名)、アンドレ動物病院(1名)、板倉動物病院(1名)、りっか動物病院(1名)、森下動物病院(1名)、横浜エキゾチック動物病院(1名)、ペンギンペットクリニック(1名)、りき動物病院(1名)、フォーゲル動物病院(1名)、ナカムラペットクリニック(1名)、三島動物病院(1名)、あかしや動物病院(1名)、京都小動物クリニック(1名)、南原ペットクリニック(1名)、長町南動物病院(1名)、ワンペットクリニック(1名)、ひら動物病院(1名)、kasa動物病院(1名)、神領動物病院(1名)、かなや犬猫鳥の病院(1名)、ハーレー動物病院(1名)、藤の花動物病院(1名)、あゆとも動物病院(1名)、アリス動物病院(1名)、動物病院むこのそう(1名)、駒込エキゾチック動物病院(1名)、さくらい動物病院(佐賀県唐津市)(1名)、あしあと動物病院(1名)、オリーブ動物病院(1名)、キキ動物病院(1名)、もも動物病院(1名)、こほく動物病院(1名)、いわもとペットクリニック(1名)、アメリカン動物病院(1名)、アニキュア動物病院(1名)、アロハオハナ動物病院(1名)、ときわ動物病院(1名)、せいた動物病院(1名)、アップフィールド動物病院(1名)、リーフ動物病院(1名)

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