犬でも猫でもない、「小さな家族」と暮らす日々。近年、ハリネズミやフクロモモンガ、爬虫類などのエキゾチックアニマルを飼育する人が増えています。しかし、彼らを診療できる動物病院は限られており、いざという時に頼れる場所を見つけられないという課題があります。
小動物メディアMinimaは、この課題に向き合うため、エキゾチックアニマルに特化した動物病院の情報共有サービス「ミニケア」を立ち上げます。
サービス開始に先立ち、特別連載「エキゾのはなし。」をスタート。飼い主、事業者、そして獣医師の方々に登場いただき、エキゾチックアニマルとの暮らしや、ケアの現状と課題について様々な視点から語っていただきます。
第7回のゲストは、カインズ町田多摩境店内でフィールドガーデンを運営する茂木店長。デグーに特化したペットショップとして25年、自宅では約70匹のデグーと暮らしながら、小動物業界の発展に尽力してきました。ペットショップ経営者の視点から、小動物との暮らし、業界の課題、そして「楽しいから続けられる」という信念についてお話を伺いました。
茂木さんの1日は自宅のデグーたちの世話から始まる
——茂木さんは、自宅で約70匹のデグーを飼育されているそうですね。
そうですね。デグーが70匹くらい、チンチラが9匹、あとはオカメインコや文鳥など鳥が10羽くらいです。朝8時から昼12時頃まで。1匹1匹のケージを掃除して、健康チェックをして、ご飯を入れて。午前中すべてを使ってお世話をしています。
——毎日ケージを掃除されているんですね。
そうです。建物自体は古いんですけど、ケージは毎日綺麗にしているので、臭いはないんですよ。来た人がみんなびっくりしてくれます(笑)。

——飼育されている子たちは、どういった経緯で迎えられたんですか?
飼い主さんの事情で飼えなくなった子を引き取ったり、障害やケガで販売が難しかった子を引き取ったり。アレルギーなど、やむを得ない事情で泣く泣く手放される方もいらっしゃるので、そういった子たちの面倒を見るようにしてます。
デグー好きの聖地「フィールドガーデン」茂木店長のデグー愛が凄い。育て方のこだわりを語る
——70匹もデグーがいると、動物病院に行くことも多いのではないでしょうか?
オペラ動物病院さんにお世話になってます。小動物をメインに診てくれる病院で、院長先生1人と看護師さんでやってます。
——どんな先生ですか?
本当に動物が好きなんだなって思える先生です。床にドンと座って、チンチラやデグーを抱っこして、「どこが痛いんだお前は」「どうしたんだ」って話しかけてくれるんですよ(笑)。
うちから車で15〜20分くらい。待合室には小動物の患者さんも多くて、デグー、チンチラ、ウサギとか。本当にいい病院ですね。
なぜフィールドガーデンでは小動物だけを扱うのか?

——店頭では肉食性の動物を扱わない方針とお聞きしました。
そうですね。猫、フェレット、ミーアキャットといった動物は扱わないようにしてます。万が一の事故を考えて。
以前、フェレットとデグーを一緒に飼われていた方から聞いた話なんですが。仕事で留守中にフェレットがケージから逃げ出してしまって、デグーたちがすべて襲われてしまったそうなんです。
フェレットは全く悪くないんです。悪気があるわけじゃなくて、あくまで野生の本能で動いているだけですから。ただ、その時1匹だけ生き残ったデグーは、恐怖体験からものすごい噛み癖がついてしまったそうで。どちらの動物も被害者になってしまう。だから、そういう事故が起きないよう、安全面を第一に考えて、最初から一緒に扱わないという判断をしています。
——そもそもフィールドガーデンが小動物に特化されているのはどうしてでしょうか?
自分で責任を持てる生き物だけを扱いたいんです。何らかの事情で飼い主さんが飼えなくなった子や、障害がある子を引き取っていますけど、自分で最後まで面倒を見られる範囲で扱いたいなと。
犬猫だと、そういう子たちを何十匹も引き取るのは、現実的に難しいですから。だから、自分で責任を持てる生き物だけを扱おうと決めてます。

——素敵な心がけですね。25年続けてこられた、その原動力は何でしょうか?
自分が楽しいからですかね。正直、いい時期もあれば厳しい時期もありますけど、楽しいから続けられる。仕事を続ける方法って2種類しかないと思うんです。楽しくなくても儲かるか、儲からなくても楽しいか。僕は完全に後者ですね。
動物に囲まれて、それで食べさせてもらえてる。お金持ちにはなれないし、365日休みなしですけど、それでも楽しいから続けられた。動物に支えられた人生だったなって思います。動物には本当に感謝しています。
保険で助かる命を増やしたい
——茂木さんは保険の推奨にも力を入れられていますよね。
そうですね。自分も飼育していて、医療費の負担を経験したので保険の重要性は強く感じています。手術だと20万、30万ってすぐかかってしまうんですよね。経済的に余裕がある方はいいんですけど、そうでない方もいらっしゃる。
以前、動物病院の先生から聞いた話なんですが、「この子をこういう風に治療すると10何万くらいかかります」って説明したら、「じゃあ治療しなくていいです。お金がないんで」って言われたことがあったそうなんです。治療もできずにお返しするしかなかったって。先生も「保険に入っててくれればな」って思ったそうで。

——悲しいことですが、そういうケースは少なくないんでしょうね。
そうなんですよ。20万、30万を全額負担するのは難しくても、保険に入っていれば3割とか5割の負担で済む。そうすると治療を受けられる子が増えるんじゃないかなと思うんです。
もちろん、大前提として治療費を払える余裕を持つことが一番いいんですけど、いざという時に金銭面で不安がある方こそ、保険があると安心なんじゃないかなと。だから保険をお勧めするようにしています。
——そもそも、動物の購入価格よりも治療費が高くなってしまうことが多いですよね。
難しい問題ですよね。小動物の場合、購入価格よりも治療費の方が高くなってしまうこともあって。もちろん、価格に関係なく大切に飼われている方もたくさんいらっしゃいます。本当にそういう方は多いです。
ただ、現実として、犬猫は購入価格が高いこともあって、病気になったら病院に連れて行くのが当たり前という意識が広がっている。一方で、小動物の中には、残念ながら病院に連れて行ってもらえないケースもあるのかなと。動物の命に、価格で差があるわけじゃない。どの子も同じように大切な命なんです。

——保険の普及が、小動物業界にどんな影響を与えると思いますか。
保険の普及は本当に大事だなって思ってます。保険に入る方が増えれば、動物病院に連れて行く方も増える。そうすると、小動物を診てくれる獣医さんも増えていくんじゃないかなと。
ミニケアへの期待
——最後に、ミニケアへの期待をお聞かせください。
小動物を飼う方が増えて、保険に入る方が増え て、動物病院に行く方が増える。そういう良い流れができれば、小動物を診てくれる獣医さんも増えてくると思うんです。
ミニケアで、小動物を診てくれる病院の情報がまとまって見られるようになるのは、飼い主さんにとって本当に心強いですよね。業界全体が盛り上がっていけば、デグーをはじめとした小動物が、もっと多くの方に知ってもらえるかもしれない。応援しています。
Minimaでは「ミニケア」の本格始動に向けてクラウドファンディングを11月より実施します。
小さな命を守るために、エキゾチックアニマルの診療環境を一緒に変えていきませんか。あなたの応援が、誰かの大切な家族を救うことにつながります。
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